KITAKAMI NEWS

【20代の肖像】vol.65 鬼剣舞の楽しさを多くの人へ。 そして未来へ。

2025年7月28日

きたかみリズム×きたかみ仕事人図鑑

 

鬼剣舞の楽しさを多くの人へ。

そして未来へ。

 

 

vol.65 老林 慶悟 (おいばやし けいご) 24歳

 

 

 

鬼剣舞の文化継承を応援。キオクシア岩手の取り組み。

 

「20代の肖像」vol.17(2021年7月26日掲載)に登場し、鬼剣舞の魅力を語ってくれた老林慶悟さん。当時は大学生でしたが、その後「キオクシア岩手株式会社」に入社して、慶悟さんの鬼剣舞の可能性はさらにひろがりました。

 

 

 

 

「もともと私の母が北上市の半導体メーカに勤めていて、キオクシア岩手は地域に根ざした企業活動をしている良い会社だという話を聞いていたので、そういう地域密着型の会社で働いてみたいと思ったのが入社のきっかけです。

 

実際に入社してみて、キオクシア岩手では地域社会に貢献しようとさまざまな取り組みを行っていて、この会社で働くことができて良かったと改めて思いましたし、私自身も小さい頃から踊っている鬼剣舞を通してそうした活動に関われることにやりがいを感じています」

 

慶悟さんが関わる“活動”とは、社員の発案でキオクシア岩手に昨年誕生し、活動をスタートした鬼剣舞です。キオクシア岩手は、前身である「東芝メモリ岩手株式会社」から2019年に社名変更。「『記憶』で世界をおもしろくする」をミッションに掲げ、半導体フラッシュメモリの生産シェアで世界の約30%を誇るキオクシアグループの第2の製造拠点として国内最大級の半導体製造棟を構え、最先端の技術で高品質な半導体フラッシュメモリを世界へ供給しています。

 

 

▲キオクシア岩手で生産される半導体フラッシュメモリは、さまざまな情報を「記憶」するための重要なデバイスとして、スマートフォンやパソコンなどの電子機器から家電機器や自動車などまで幅広く使用され、私たちの快適な暮らしを支えています。

 

 

そんな同社では、地域とより良い関係を築きながら持続可能な社会の実現を目指し、「次世代育成」「地域貢献」をテーマとしたさまざまな活動を展開。そのひとつとして、北上市民に長く親しまれ、2022年には「風流踊(ふりゅうおどり)」として他の民俗芸能とともにユネスコ無形文化遺産に登録された「鬼剣舞」の魅力を多くの人にひろめるお手伝いをしながら、鬼剣舞の文化継承を応援しようと2024年に鬼剣舞のチームを立ち上げたそう。

 

その活動を支えるのは、もちろんキオクシア岩手で働く社員たち。慶悟さんもそのひとりです。

 

 

▲キオクシア岩手の鬼剣舞のチーム。

 

 

▲県内の大学でソフトウェア情報学を専攻した慶悟さんはその学びを活かし、キオクシア岩手では「IT推進部」に所属。IT技術で業務の効率化と生産性の向上を図り、北上市から半導体フラッシュメモリで世界No.1を目指す同社の最先端のものづくりを支えています。

 

 

「昔やっていた」人も鬼剣舞の楽しさを思い出すきっかけに。

 

キオクシア岩手の鬼剣舞のチームは、相去鬼剣舞、岩崎鬼剣舞、北藤根鬼剣舞、御免町鬼剣舞など地域の団体にも所属して活動していたり、地元・岩手県立北上翔南高等学校の鬼剣舞部出身の人がいたりするなど経験豊富な踊り手・囃子方がメンバーです(御免町鬼剣舞の女性が笛の応援として1名参加)。

 

そのため、同社ではそれぞれの団体が行う活動とはかぶらないように配慮し、社内イベントや県外のお客さまをお迎えする際に踊りを披露するなど、会社の取り組みの一環として鬼剣舞の魅力をひろげる活動を展開しています。

 

 

▲昨年12月に重要なお客さまを会社に迎えた際に鬼剣舞を披露。お客さまも大絶賛だったそう。その踊りの様子は同社HPで公開中

 

 

この活動に参加して、慶悟さんは改めて北上市に長く受け継がれている鬼剣舞の可能性に気づいたそう。

 

「メンバーは現在8人ですが、この活動をしていくなかでキオクシア岩手の社員には『昔やっていたけど……』という人が結構いることに気づきました。そういう人に『またやってみない?』と声をかけて、実際に踊ってもらったり笛を吹いてもらったりすると、それが楽しかったのか、また地域の団体の活動に参加するようになった人もいて(笑)

 

そういう意味でも地域に受け継がれている鬼剣舞の良さに改めて気づかされましたし、今は日勤の人たちだけで活動していますが、キオクシア岩手には交替勤務の人もたくさんいるので、この活動をきっかけに鬼剣舞の楽しさを思い出して『またやってみよう!』という人が増えてくれたらうれしいですね」

 

笑顔でそう語ってくれた慶悟さん。社員数1,899名(2025年4月現在)の同社には鬼剣舞を「昔やっていた」という人も多いそうで、メンバーがさらに増える予感も……。ちなみに、取材の日には「さんさ踊り」で太鼓を叩く女性社員も見学に訪れ、得意の太鼓を披露されていました。キオクシア岩手の鬼剣舞は、そうしたひろがりも生んでいます。

 

 

▲仕事終わりに練習に励むメンバーたち。

 

 

▲見学に訪れた女性社員も「さんさ踊り」の太鼓を披露。

 

 

四日市から京都へ。京都鬼剣舞との出会いにも感謝。

 

キオクシア岩手に入社して「京都鬼剣舞」と出会えたことも、慶悟さんには幸運でした。

 

「私がキオクシア岩手に入社して1年目のとき、三重県にある四日市工場に実習に行ったのですが、休みの日には出稽古というカタチで京都鬼剣舞の練習に参加させていただきました。

 

私は相去鬼剣舞に所属していて、ふだんはそこで練習しているのですが、北上を離れると鬼剣舞を練習する機会がなくなります。でも鬼剣舞の練習はしたかったので、京都鬼剣舞の練習がある日は三重から京都まで高速バスや新幹線を利用して通っていました。三重と京都って意外と近いんですよ(笑)」

 

 

▲京都鬼剣舞のメンバーと、公演先の大阪・関西万博の会場にて。前列中央の青いお面が慶悟さん。

 

 

慶悟さんと京都鬼剣舞をつないだのも、会社の先輩であり、キオクシア岩手の鬼剣舞を立ち上げた方だそう。

 

「その方は10年ほど四日市工場で働いていて、そのときも京都鬼剣舞で練習をさせていただいていたそうなんです。そういう話も聞いていたので、その先輩を通じて京都鬼剣舞の庭元を紹介していただきました」

 

京都鬼剣舞で過ごした時間は、慶悟さんにとっても鬼剣舞の楽しさを深める忘れられない時間となりました。

 

「京都鬼剣舞のみなさんには本当に良くしていただいて、実習を終えて北上に戻るときには、練習風景やみんなで京都のお寺を訪れたときの写真を集めたアルバムや手書きの色紙までいただいて、すごくうれしかったです」

 

京都鬼剣舞とのご縁は現在も続き、京都鬼剣舞の公演があると聞けば慶悟さんも躍り手として参加したり、北上市に訪れた際には一緒に練習したりしているそう。「このご縁はずっと大切にしていきたい」と慶悟さんは笑顔で語ってくれました。

 

 

▲大阪・関西万博で行った公演の様子。慶悟さんも踊り手のひとりとして参加。

 

 

▲京都鬼剣舞のみなさんが慶悟さんに贈ったアルバムと手書きの色紙。

 

 

キオクシア岩手に入社して鬼剣舞の楽しさをさらにひろげている慶悟さんに、今後の目標を尋ねると……。

 

「最近思うのですが、鬼剣舞を継承していくために必要なことは踊りやお囃子を覚えることだけじゃないなって……。例えば、鬼剣舞を踊るときに履くゴム草鞋が生産終了になるというニュースが以前あって、相去鬼剣舞で『じゃあ自分たちで編もう』と自分たちで草鞋を編んだんですよ。

 

そのとき思ったのは、昔の人は踊りやお囃子を覚えるだけじゃなくて、衣装も自分たちでつくったり、お面も自分たちで彫ったり……。私のおじさんもお面を彫ったりしていますが、そうやって先人たちも自分たちの手で衣装や道具をつくって鬼剣舞を受け継いできたから今があるということです。

 

1年を通して参加する行事もそうですし、踊りも、お囃子も、お面も、衣装も、草履も、全部ひっくるめて伝統なんだと最近思うようになって……。私自身、鬼剣舞を踊っていて楽しいですし鬼剣舞が大好きなので、先人の想いも含めて踊りやお囃子だけじゃなく鬼剣舞全体を継承していきたいと思いますし、そういう鬼剣舞の魅力を多くの人に知ってもらえるようにがんばりたいと思います」

 

北上市で長く受け継がれてきた鬼剣舞の楽しさを多くの人へ。そして、未来へ。さまざまな出会いを通して、その想いを深めている慶悟さんでした。

 

 

▲相去鬼剣舞の練習風景。前途有望な中学生のメンバーにアドバイスも。

 

 

▲相去鬼剣舞で手作りした草鞋。慶悟さんのおじさんが彫ったお面と、それをつけて踊る慶悟さん。「これで踊ると映える」そう。さらにお父さんとお母さんの指導のもと笛も練習中で、周りに刺激を受けながら鬼剣舞全体を継承しようと奮闘中です。

 

 

▲相去鬼剣舞のメンバーと。

 

 

老林慶悟さんが勤務する会社:

キオクシア岩手株式会社のホームページはこちら

 

 

 

 

岩手県北上市北工業団地5-29