KITAKAMI NEWS
【市民ライター投稿記事】北上名作劇場~ふしぎなボール~
唐突ですがみなさん、おはなし(物語)と聞いて、どんなものが頭に浮かびますか?
伝記、童話、様々あると思いますが、その中でも特に印象深いのはやはり「小さい頃に聞いたおはなし」ではないでしょうか。
「物語」というものは、昔から人々を惹きつける不思議な力があるように思います。
わたしの幼少期を例に挙げると、「むかーし、むかし……」のナレーションで始まる『まんが日本昔ばなし』。毎週、放送を楽しみにしていました。今でも「ぼうや〜よいこだ、ねんねしな〜♪」と、あの曲が流れると映像が鮮明に蘇ります。今は亡き「市原悦子」さんの語りもとても味わい深く、テレビに釘付けになって観ていました。
「これから一体どうなってしまうのー?」
と、いつも ハラハラ、ワクワク、ドキドキ、無条件でおはなしの世界に引き込まれました。今思い返すと、短時間のうちに泣いたり笑ったり怒ったり当時は本当に忙しかった…(笑)
歳を重ねると、常識や固定観念が邪魔して子どもの時ほど純粋に感動できなくなるんですよね〜
そういう意味では大人になるって少し寂しい気もします。
市民ライターとして北上の魅力を伝える記事を書いて2年目。以前から、いつか書いてみたいと思っていた事があります。それは、“北上の子どもたちは、自分たちの住んでいるまちにどんなイメージを持っているのか?どう感じているのか?”です。
ただし、これをテーマに記事を書くには課題がありました。
頭に浮かんでいることをしっかり言語化できる年齢の子はいいけれど、幼い子どもたちが相手となるとこれがなかなか難しい…その辺りをどうしたら解決できるか?何か良い方法はないだろうか?と暗中模索の状態でした。
ある時、子どもと一緒に絵本を読んでいてふと思ったんです!
“そうだ!子どもの自由な発想で「北上」を題材とした絵や、それに関連したストーリーを考えてもらったら面白いかも! ”と。
早速、友人に相談、提案してみたところ、「それ、すごく楽しそう!子どもにそれとなく話してみる〜」と、嬉しいことにとんとん拍子で事が進み、今回 遂にその “おはなし” が完成!!
北上の子どもによる、北上の子どもならではの、そしてなにより児童期の今しか描くことの出来ない世界でたった一つのストーリーが形になりました。
このおはなしの作者紹介は後半たっぷりするとして、まずはその作品を大公開!一体どんな内容なのか早速見てみましょう!
※ひらがなの文に慣れていない方でも読みやすいよう、漢字変換した文も下部に掲載しています。見やすい方でご覧下さい。
みなさん、いかがですか?
わたしの“イチ推し”ポイントはなんと言ってもこの絵です!
この、ハツラツとしたご家族の表情!楽しい雰囲気がよく描かれていて、見ているこちらも心が温かくなります。
おはなしの舞台は市民の憩いの場「詩歌の森公園」。
“ボールが(鳥のように)飛ぶ”というこの発想!
頭カチカチの大人にはなかなか思いつかない内容ですが、実はここ「詩歌の森」は大人気スマホゲーム「ポケモンGO」のポケストップにもなっており、それを目的に市外から訪れる方も多い場所。わが子達も一時期ハマっていましたし、そこからの連想もあるのかもしれませんね。
図書館で本を借りて外に出たら、お父さんの持っていたボールが突然、鳥に変身しどこかへ行ってしまったことにびっくり仰天!この絵からも心の動揺が大きいことが読み取れます。さらにわたしが注目したのは、ボールを投げているお父さんの表情!ご覧のように満面の笑み…
子どもがいかにも喜びそうなこの一連の流れを初めから予測し、計画の上での行動だったのでしょうか…。
お父さん、なかなかの“仕掛け人”です…(笑)
そこから行方不明になったボール(鳥)を家族みんなで捜索する事になるのですが、これはこども目線でいうと一種の「お宝探し」みたいな感覚でしょうか!描かれているご家族の表情がワクワク感に溢れています。
公園内をあちこち懸命に探しても見つからず、ガッカリ…
と、そこへの救いの手が…!!
近くに居合わせた親切なおばさんからの情報提供により、事態は急展開を迎えることになります。前回の記事の中でも取り上げたように、現在北上市では地域社会全体で子どもたちを育てる「北上市の目指す『コミュニティ・スクール』」を推進しています。だからこそ、このように心優しい大人のイメージが浮かんでくるのかもしれませんね。
急いで広場へ向かうと、おばさんの言っていた通り、噴水の中に突っ込んでしまい目を回していた鳥さん。最後の最後、持ち主さんに見つけてもらえて安堵の表情に…。大きな掌が優しく包み込んでいる場面でハッピーエンド。とてもホッコリ〜。
以上、わたしの個人的な感想と勝手な解釈・解説をお届けしました(笑)
短い物語の中に「人の温かさ」が透けて見える素敵な作品ですよね。
おはなしを考えたのは一体どんなお子さんなのでしょうか?
ではここから、この物語の作者 “小さな作家さん” をご紹介します。
北上市内在住、小学2年生の元気な男の子です。幸泰(こうだい)くんは元々、絵を描く事が大得意!絵本も大好きで、それを真似て自分で描いた絵に吹き出しを付けて言葉を添えたり、普段から創作活動をよくしているそうです。
幸泰くん、本人に聞いてみました!
Q1 おはなしづくりをするようになったのはどうしてですか?
動く絵、アニメ、絵本をみて自分の絵にも動きや、言葉があったら、面白いと思いました。
Q2 好きな絵本作家さんはいますか?どんなところが好きですか?
ガタロー☆マンです。絵と、話が面白いのと、手紙を書くと返事をくれて優しいからです。
Q3 将来の夢を教えてください
キャラクターを考える人になりたいです。
大好きな絵本作家さんにお手紙を出して、返事が来たら大人でも嬉しいですよね〜。
自分の書いた絵の中の人物が、会話しているところを想像しながら楽しんで描いている雰囲気がよく伝わります。
そんな、幸泰くんをご家庭で支えているのは、おはなしの中にも登場する温かい家族の存在。
お母さんの薫(かおる)さんにも伺いました。
Q1 お子さんの発想力を育てるためにしていることや、心がけていることはありますか?
小さい頃から絵を描くのが好きな子で、幼稚園の先生に絵をプレゼントしていました。先生もお返事をくれるから嬉しくてまた描いていました。
描いた絵はたくさん褒めて、家の壁一面を“子どもの絵を飾るコーナー”にしています。また、素敵にラッピングをして祖父や祖母にプレゼントする事もあります。みんな、とても喜んでくれるので、喜んでくれる家族の顔が見たくて描いてくれたりもします。
絵本もたくさん読みました。その絵を真似て上手に描けたことが嬉しくて、そのことを伝えたくて、絵本作家さんにお手紙を出しています。
わたしも(こどもに付き合うのが) 正直、“面倒だなぁ…”“時間もないしなぁ…”と思う時もあります。でも、なるべく子どもが「●●を描きたい」と言ったときに、それについて一緒に調べたり、自分でも描いたりして楽しむようにしています。
Q2 幸泰くんが絵を描いたりおはなしを考えている時、どんな声がけをしていますか?
「こういう風にしたら?」「こんな文はどう?」と、ついつい言ってしまうのですが、言っても却下されることがほとんど…(笑)。
“大人の期待するものと、子どもが作りたいもの、描きたいものって違うよな〜”と思い、今は言うのをグッと堪えて、子どもに“手伝って!!”と言われたときだけ手を貸して、あとは見守っています。
幸泰くん、薫さん、そしてご家族様、ご協力本当にありがとうございました。
ずっとわたしの頭の中にしかなかった草案ですが、こういった形で読者のみなさんにお届けすることが出来てとても嬉しく思います。
“子どもの健やかな成長にはそれを支える大人がどう関わっていくかが重要”
でも、大人の言うことや、考え方、行動が必ずしも正しいとは限らないし、逆に子どもから教わる事のほうが断然多い…。わたしは日々子育てをしていてそんな風に感じています。子どもは「ひらめき」の天才!大人が案じてあれこれ先回りしなくても、ちゃんと自分の感性で物事を考えたり、新しい物を創り出す力をもっているんですよね。
わたしたち大人が子どもたちひとりひとりを認め、みんながここに生まれて、ここに住んで幸せだと思えたら最高ですし、これから先の北上の未来もきっと明るい!そう思いました☆☆☆
最後に
幸泰くんのおはなしの舞台となった、詩歌の森公園・中央図書館、また、夏のひまわり畑を描いてくれた展勝地については、これまで4名の市民ライターさんが記事で紹介しています。3か所の魅力を味わえる記事になっていますので是非ご覧ください
【記事一覧(記事タイトル/ライター名(敬称略)(公開日))】
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