KITAKAMI NEWS
【市民ライター投稿記事】2つのクリスマスマーケット ~「まちなか」に賑わいの「きっかけ」と「関係人口」の増加を~
昨年の12月3日の日曜日、市内で二つのクリスマーケットが開催されました。一つは北上駅東口のさくらPORT・スクエアで、もう一つは専修大学北上高等学校の新校舎での開催でした。この二つについて、一つは近隣住民としての立場から、もう一つは職場(専修大学北上高等学校)で働く立場から、今後の「まちなか」について書いてみようと思います。
さくらPORT・スクエアは、駅東口の駐車場を再開発し、立体駐車場、賃貸マンション、オフィスビル、ホテルを建設する事業の中で、イベントの開催できる広場として整備されたものです。それまでの駅東口駐車場は(これを書くと怒られそうですが)広大なスペースがあるものの、満車になるのはさくらまつり、みちのく芸能まつりの時くらいで冬は屋根のない駐車場だったため、以前大堤に住んでいた私は年末の帰省の度に雪に埋まった車を掘り出していたのが懐かしいです・・・それを考えると、昨今の温暖化でそれも無くなってきましたね・・・。
話を戻してもう一つ、駐車場横の広場と言えば、修学旅行の集合場所とたまにスケボーの練習場所としてしか活用されていなかったというのが、川岸に移ってきた自分の印象でした。桜の頃にはもちろん展勝地へ向かうにぎわいがあるのですが・・・それ以外の時期の駅前にはにぎわいはあまり・・・という感じでした。
それがこの再開発でどう変わるのか、地域住民としては関心を持って見ていました。とはいえ、駐車場ができても特に盛り上がりもなく、賃貸マンションやオフィスビルが出来ても大きな変化が無く・・・。最後のホテルが完成してどうなるかと思っていましたが、11月1日のホテルのオープンに合わせて、10月28日と29日にはオープニングイベントが開催されました。28日には川岸のかっぱ太鼓や専修大学北上高等学校吹奏楽部、大槌の虎舞などが披露され、翌29日にはパンマルシェが催されました。
その流れを受け、12月3日にはXmasマーケットが開催されました。詳細について、このイベントを運営した遠藤哲也さん、遠藤修子さんにさくらPORT・HOTELのレストランでお話を伺いました。
今回のマーケットは、北上市都市再生推進課が担当する「北上市エリアマネジメント推進補助金」を初めて使用した事業だそうです(ちなみに、この補助金は3月まで交付が可能なようなので、もし興味を持った方は都市再生推進課までお問い合わせ下さいとのことです)。また、さくらPORT・スクエアには、キッチンカーなどのイベントで使用出来る外部の電源も備わっていること、車がスムーズに出入りできるよう道路にもスロープを設けているのだそうです。普段、何気なく歩いている地元の私は残念ながらさっぱり気がつきませんでした・・・。
駅東口のそばに住む私も含め、いかに多くの方に「東口」を知ってもらうかがイベント開催の目的の一つだそうです。そういえば、今コーヒーを飲んでいるこのレストラン、ランチ営業もしているだけでなく、ランチ後もコーヒーが飲めるのを今日知りましたし、他にも市内のお店がオフィスビルの1階でお弁当を売っているなんて、先週ようやく知りました・・・。
また、今回の運営には「転妻会」、いわゆる転勤で北上に来た奥様たちの集まりが協力をしているのだそうです。ある奥様は、イベント直前に出来たチラシを、子どもの学校に持って行って配布したとか、行動力のある方が多いのだそうです。この「転妻会」だけでも記事が一本書けそうな気がしますが、それは別の機会に・・・。そこで出た話は、「子どもが街中で遊べるスペースが欲しい」ということでした(子どもの遊び場に関しては以前市民ライターの齊藤比佐代さんが岩手県立農業ふれあい公園・農業科学博物館なども紹介しているのでぜひそちら(内部リンク)もご覧下さい)。今回のイベントには子どもも参加出来る体験型ワークショップが設けられましたが、理由はそこにあるのだそうです。
子どもがイベントに参加することによって、成長して大人になったらその子どもと一緒にイベントに参加してくれる。さらに年を取ったらその孫も・・・という形で、長い期間に幅広い世代が参加出来るイベントをまちなかで創っていきたい、という思いがイベントにこもっているという話も聞きました。それは、遠藤さんが北上ではイベントが10年しか続かないということを話していたこととも関連があります。どうしても10年経つと運営サイドが疲れてしまうのだそうです。そうならないイベントを、さくらPORT・スクエアで開催したい、とも話していました。
さくらPORT・スクエアは、桜の時期や花火の時には展勝地に向かう人びとで混雑すると思います。それ以外の時期にも賑わいを定期的に作り出していきたいということは、さくらPORTタウンの運営会社やホテルの方々とも認識は一致しているのだそうです。
一方、私の職場でもある専修大学北上高等学校は、昨年8月に新校舎が完成しました。
廊下側がフルオープンになる教室をはじめ、様々な新しさを提供する校舎の1階には新たに「グリーンホール」が設置されました。実はこれまでも同名の施設が別棟であったのですが、老朽化が激しく地域に開放できる状況ではありませんでした。それを新校舎の1階に新設し、校舎内にありながらも単独で使用出来るよう整備しました(注:現在は他の校舎整備の関係で一般への貸出は行わず、この4月から開放開始の予定です)。
このグリーンホールの活用と併せ、新校舎の教室にクラフトショップや飲食などの販売を組み合わせたイベントを、総合探究部という6つのグループ(探究、ダンス、デザイン、eラボ、軽音楽、国際理解)からなる部の先生と生徒が中心となって企画・運営をしたのがクリスマスマーケットです。
まず、教室を使用したショップは、本校の卒業生を中心に30を超えました。カレーやサンドイッチなどの軽食をはじめ、個人製作のアクセサリーやバッグ、農家の新米や市内の福祉施設で製造したパンやキムチなども販売されました。本校総合探究部の国際理解グループはフェアトレードのショップを開設しました。
また、グリーンホールを使用したステージ発表は、軽音楽グループ、本校吹奏楽部をはじめ、卒業生が顧問を務める北上市立飯豊中学校吹奏楽部や、本校ALTとその友人たちによるバンド演奏など、多岐にわたる団体が出演しました
初めての試みで果たしてどのくらいの集客があるか心配でしたが、最終的には800名を超えるお客様が来場し、イベント途中に販売終了となるショップも複数見られました。新しい校舎を見てみたい!ということもあってか、雪交じりの寒い中にもかかわらず、多くの方にお越しいただけました。
コロナによる活動制限から解放された2023年、北上市内でも「マルシェ」もしくはそれに類似した名称の多くの販売イベントが開催されました。本校のグローカルビジネス科でも「専北マルシェ」を11月に開催しましたが、多くの来場者があったそうですし、他のイベントも同様に盛況であったと聞いています。
これらのイベントは同時にコロナが生み出したものでもあると言えます。固定した店舗では集客できないことが飲食店のテイクアウトやキッチンカーを増やしたのも事実です。アフターコロナの時代がこの先これらのイベントをどう変えていくのかはまだ誰にもわかりません。ただ、新しく生まれた2つの場所が、この先どのように、誰と「まちなか」を創造するのかが問われているのだ、と私は勝手に思っています。
遠藤さんのインタビューのなかで「関係人口」という言葉が登場しました。「関係人口」とは、総務省のホームページによると、
移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域や地域の人々と多様に関わる人々のことを指します。地方圏は、人口減少・高齢化により、地域づくりの担い手不足という課題に直面していますが、地域によっては若者を中心に、変化を生み出す人材が地域に入り始めており、「関係人口」と呼ばれる地域外の人材が地域づくりの担い手となることが期待されています。
とあります。
さくらPORT・TOWNも専修大学北上高等学校も、日常的に利用をする人はある程度限られています。その中で、休日の新たな「にぎわい」を作り出すのはもちろん、平日にも何か「にぎわい」を作れるか、そして、北上に「関係人口」を増やしていくことができるのか、川岸の住民として、職場の1人として、私も考えていきたいと思います。
さくらPORT・TOWN
専修大学北上高等学校