KITAKAMI NEWS
【市民ライター投稿記事】大公開!! 学校図書館のひみつ
★はじめに★
北上市内全域で今年度4月から本格的に始動した「コミュニティ ・ スクール 」(外部リンク)
昨年、先行地域(黒北地区)における取り組みの様子や、地域の方と学校の橋渡し役である「地域コーディネーター」の活動について書きました。昨年の記事はこちらから(サイト内リンク)
あれから約1年が経過し、現在学校の様子はどうなっているか、本題に入る前に少し見てみましょう!
☆今回の記事は、その場の雰囲気をより分かりやすくお伝えする為、写真の一部を編集し掲載しています。本文と併せてご覧下さい☆
黒沢尻北小学校 (※以下「黒北小」) 家庭科室へ向かいます…
教室内を見渡すと早速、気になる物を発見!
辺り一帯、田んぼだらけの環境で育ったわたしにとってこの光景はとても新鮮です。例えば1つのバケツに3本ほど苗を植えた場合、収穫できるお米はおよそ800粒!(※苗の発育状況にもよります。)これを精米・炊飯すると仮定して、一般的なご飯茶碗1杯は約2400粒といわれていますから、“バケツ3つでごはん1杯分”!(出典:JAグループホームページ(外部リンク))
現代っ子はこのような食育教材を使って水稲の育て方を学んでいたんですね。バケツで育ったお米、どんなお味なのかも気になります…。
また教室内では、6年生が(家庭科・ミシン)授業中。この日はコーディネーターのお声がけにより、地域の方々がクラスサポートのため学校へ足を運んで下さっていました。
今の裁縫セット、私の時代に比べるとだいぶコンパクトになった印象を受けます。
授業終了後、スクールサポートに参加した地域の方に感想を伺ってみると、「今のミシンは簡単で楽ね〜」「若い子たちから元気をもらって楽しかったわ〜」と話して下さいました。
最近では、活動に参加して下さった地元の方が、周囲の方にも積極的に声をかけて下さり、そこから新たな繋がり、広がりもできているそうです。学校は地域の方にとっても憩いの場になりつつあるようです。
潜入!学校図書館の舞台裏
さて、北上市には学校と協働して子どもたちのサポートを行っている方々が他にも大勢いらっしゃいます。ここからは今回のテーマ「学校図書館」へ場所を移し、現状や様子について様々な角度からお話ししてみたいと思います。
では、図書室(2階)へ…。
階段を登ってくるだけで既に息切れ状態のわたしですが、図書室の入口で優しく出迎えてくれるのはこの2人…。
パッチリおめめがキュート!
これは黒北小オリジナルの図書館キャラクター。まずこのネーミング!!みなさん、もうお分かりですね!そう!Book(ブック)と しおり…切っても切り離せない関係の2人。
いざ、室内に入ってみます!
室内には約1万冊の蔵書があり、毎日多くの児童が本を探しに訪れます。多種多様な本の中で、子どもたちに特に人気があるのがこの「学研ひみつシリーズ」!
折角なのでここで1冊、皆さんに本のご紹介!
既にご存知の方もいらっしゃると思いますが、これは昨年、北上市が「Kitakami Triple Anniversary (キタカミトリプルアニバーサリー)2021」事業の一環として、子どもたちが大好きな「学研ひみつシリーズ」とコラボし作成した学習漫画。北上市内の小・中学校図書室や市立図書館に配置された他、各家庭にも児童・生徒1人につき1冊配布されました。
わたしも何度か読みましたが、北上、まだまだ知らないことだらけで面白い!ストーリー仕立てになっていて読みやすく、「活字の書籍はちょっとハードル高いな…」という方にもお勧めです!※学研ウェブサイト(外部リンク)で読むことができます。是非ご覧ください。
さて、室内探索に戻りましょう!本棚から図書室の周りへ目を移すと、気になる装飾を発見!
これは、黒北小に代々伝わり、運動会や学校行事で度々披露されるオリジナル演目「三あ」を再現した手書きイラスト。優しいタッチで温かみがあり、子どもたちの元気な声まで聞こえてきそうです!
この頃(令和4年10月取材当時)は、ちょうど運動会の開催時期。コロナ禍でここ数年は短縮開催ですが、校内の装飾からも頑張っている子どもたちを応援!“学校行事を盛り上げよう!”という想いが伝わってきます。その他にも図書室内は通年、季節ごとに毎月変わる壁面装飾など、見ているだけでほっこりするような可愛いものがいっぱいです。
こうやってたくさん並べると可愛さ倍増!みなさんこれ、何だと思いますか?
実は……、折り紙で作った「しおり」なんです。クリスマスツリーとサンタ帽子がモチーフになっていてとってもカラフル。冬の読書がますます楽しくなりそうですよね〜。本が好きなわたしも個人的に欲しくなります…。
これらを作成しているのは、学校図書ボランティア(ブックンサークル) のメンバーさん。昨年の記事にも書きましたが、わたし自身もこのサークルに在籍し、活動に参加しています。
先程、入口で出迎えてくれた学校オリジナルマスコットキャラクターも、在籍していたメンバーさんのお手製。各自がアイディアを持ち寄り、その都度相談しながら製作しています。
わたしたちが活動する上で意識しているのは「子どもたちが利用しやすい環境作り」。様々な技巧を凝らすことで、まずは多くの児童・生徒に足を運んでもらい、「気づいたら図書室に来ていた」「いつの間にか本が好きになっていた」、そう感じてもらえるような空間の提供を心がけています。
◆黒北小・ブックンサークル (毎週月曜 10:00-12:00) 随時参加募集中!
現在、北上市内の小・中学校で「学校図書ボランティア」として在籍している方は211名。(※R3度 北上市学校教育課・学校図書館運用状況調査より)
学校の規模にもよりますが、市としては1校当たり1学級に平均1人の配置が目標とされています。
各学校によって活動内容に特色はあるものの、共通するのは各自の個性や得意分野を活かし、主体的に参画している点。それぞれが出来ることを無理のない範囲で行っています。在校児童の保護者はもちろん、地域の方や卒業生の保護者の方も在籍しています。
では、わたしたちが具体的にどんな活動をしているのか、その一部をご紹介します。
様々な活動の中で、最も頻繁に行っているのが本の修理作業。子どもたちに人気があり、繰り返し読まれている本は、ページが破れたり剥がれたりして壊れやすくなっています。放置しておくとどんどん破損が進行してしまうため、早目の対処が必要です。
まず、ページを1枚ずつめくりながら破損箇所を確認。最善の修理方法を検討した上で作業に入ります。ページ破れなど、破損程度が軽いものは専用テープで補修し、必要があれば和紙等をのり付けして補強することもあります。その場合、ページ同士がくっつかないようワックスペーパー等を間に挟んで包帯等で固定、のり付け部分が乾くまで数日おきます。後日、包帯を外して修理箇所を確認し、問題なければ本棚に戻して作業完了です。
ただ中には本の構造上、簡易補強では弱く、修理を十分に行うことができないケースもあります。「さて困った…。この本、どうやって直したらいいの…?」なんてこともしばしば…。
でも大丈夫!北上市には、そんなボランティアさんたちの「困った」に耳を傾け、全面的にサポートして下さるとても心強い味方が居るんです!それがこの方。
菊地さんが丁寧に時間をかけて行っているこの作業は「糸綴じ」。(※一般的に“かがり綴じ”とも言われ、折丁を一折りずつ糸で綴じ合わせ、接着剤で接合させる方法。)
分かりやすく例えるなら「本の外科手術」!菊地さんは執刀医、「ドクターX」いや、「ドクターK」!? といったところでしょうか(笑)
本は、種類や紙質によっても製本の仕方がそれぞれ異なるので、壊れ方も千差万別。わたしたちのような素人では修理が困難なものや、除籍や廃棄などの判断が難しい場合には相談し指示を仰ぎます。
「ちょっと菊地さんお借りしてもいいですか~?」「すぐにお返しします~!」
図書室にはそんな声が飛び交います。先程写真で紹介した“蔵書点検”や“本の整理”の際にもアドバイスをして頂いたり、広範囲で大活躍。市内の小・中学校を訪問し、その内容を記した「学校図書館だより」も毎月発行されています。
そんな学校図書のプロ!菊地明日香さんにお話を伺いました!
Q1 北上市内の学校を訪問し、各学校図書ボランティアさんたちと協働する中で感じている事をお聞かせください。
どの学校のボランティアさんも、熱意を持って子どもたちの読書活動を支えて下さっています。本の整理・修理、読み聞かせ、年に1度の蔵書点検など、各学校の図書館運営において大いにご協力を頂いています。
基本的には、学校からの依頼に応じた活動をして頂いています。その中でも学級文庫の選書や学校行事・季節に関連する展示の作成、地域の方による“方言での読み語り”といった特色ある活動をしている学校もあります。ボランティアさんのいない学校では、学校図書館を担当する先生方が日々の授業の合間に図書館業務を担っている状態です。学校図書館運営は、地域の方々の協力が不可欠であると感じています。
Q2 近年は子どもの「本離れ」が大きな課題になっています。本を好きになるきっかけ作りとして、家庭内ではどんな取り組みをしたら良いでしょうか?
子どもが読書をするきっかけを大人が用意します。家族に読書習慣があり頻繁に公共図書館に行く家庭の子どもはよく読書をしますし、自然に読書習慣が身に付く傾向にあります。
地域の公共図書館は利用していますか?家庭内に本はありますか?身近に本があり、子どもが自由に手に取って読書を始められる環境を大人が用意してあげて下さい。
また、子どもと一緒に本を読んでみてはいかがでしょうか?絵本であれば、まだ物語を理解できない小さな子どもでも“本の世界”を楽しめます。大人が絵本を読むと、子どもの頃に読んだ時とは違う気づきがあったりします。「本」というと「文学・小説」を思い浮かべる方が多いでしょう。例えば、観光・行楽地に関するガイドブックも「本」です。同じく絵本、図鑑、写真集、辞典だって「本」です。子どもがどんな本を選んでも否定せず、まずは読ませてあげて欲しいと思います。
Q3 菊地さんは子どもの頃どんな本が好きでしたか?また、菊地さんの考える「本の魅力」とは何でしょう?
『ティモシーとサラ』、『ばばばあちゃん』、『バムとケロ』、『もりはおもしろランド』シリーズをよく読んでいました。共通するのは、美味しそうな食べ物が登場することでしょうか。今でも食べ物を題材にした読み物やレシピ本を読むのは大好きです。実際に作るかどうかはさておき……(笑)
本はページをめくるだけで様々な興味と知識を与えてくれます。子どもたちが沢山の本と出会い、興味を持って探求し、知識として蓄え、成長していくことを願っています。
★おわりに★
令和4年10月20日 “日本現代詩歌文学館”にて「子育ちwith読書」 子育て支援ネットワーク研修会 兼 読書ボランティア等研修会が開催されました。
中部教育事務所管内において、図書ボランティアとして在籍されている方々をはじめ、子育て支援関係者、学校関係者の方々など、総勢60名ほどが参加しました。講師の先生方による講演・講話が大変興味深く、私にとっても今後の活動の幅が広がりそうな貴重な機会となりました。
「本」は、大人が子どもに対して一方的に価値観を押し付けるものではなく、“共に学び成長できるツールの1つである”とわたしも思います。
先日も、わたしたちボランティアが図書室で活動している折、「お父さんと、この本で “なぞなぞ”勝負して俺が勝った!」「この本、1年生の時に読み聞かせされたよ!」“読んでもらった”という意味なのでしょう。普段、お話を“聞く側”である児童ならではの表現が面白いですよね(笑)
このように、本を選びながら楽しそうに話す子どもたちの声が聞こえてきました。本の内容はもちろんですがそれよりも、いつ、誰と、どんな状況で、その本を読んだのかも子どもには重要で、強く印象に残るということを再認識した出来事でした。
これからも子どもたちの記憶に残るような活動を考え、実践していきたいです。
本と同様に、「市」や「まち」も、そこに様々な人が関わる事で、より一層魅力が増すもの。今回の記事を執筆するにあたり、本当に沢山の方々にご支援、ご協力を賜りました。取材に際し、快く応じて下さった関係者の皆さまに心より御礼申し上げます。
《取材協力》
◆北上市立黒沢尻北小学校 ◆北上市立上野中学校 ◆黒北小図書ボランティア(ブックンサークル)の皆さま ◆地域学校協働活動推進員・地域コーディネーター ◆黒北地区・地域ボランティア、スクールサポーターの皆さま ◆北上市学校教育課 ◆北上市生涯学習文化課 ◆日本現代詩歌文学館
《写真協力・提供》
◆岩手県教育委員会事務局 中部教育事務所 ◆北上市教育委員会 教育部