KITAKAMI NEWS

【市民ライター投稿記事】夏油高原スノーシュートレッキング

2022年3月28日

市民ライター 三宅 優子

 

 

こんにちは、市民ライターの三宅優子です。
3月に入ってだいぶ日も長くなり、ようやく春が近づいているのを感じています。まだまだ油断はできませんが、北上市で迎える3回目の冬をなんとか越すことができたかな、と思っています。

 

 

雪とはほぼ無縁の土地で生まれ育った私。移住当初はせっかく雪の降るところへ来たし、しかも自宅からスキー場まで高速道路に乗らなくてもいいなんて最高の立地なんだから、雪がいやになる前にウィンタースポーツにも挑戦したいなあ、なんてのんきに思っていました。ですが、昨シーズンから2年続けて際限なく降り続く雪は容赦なく私のポジティブな気持ちをすっかり掻き消してしまいました。「雪に接するのは雪かきだけでもう十分、おなかいっぱい!」なんですよね。

 

 

しかし、春が近づいて気持ちにゆとりが生まれ、やっぱり少しくらいは雪かき以外の冬らしいことも楽しみたいかも、と気持ちが前向きになったところで、夏油高原でスノーシュートレッキングをやりませんか、と声をかけていただき、二つ返事で参加させていただきました。

 

 

 

 

2月27日、夏油高原スキー場駐車場からの眺め。雲ひとつない好天とか、遠くの山並みまですっごく綺麗に見える!みたいなのは今日はなさそうだな……ということは明白な空の色です。しかし山のお天気はうつろいやすいことで有名ですので、突然の晴れ間に期待して集合場所に向かいます。

 

 

集合時間は9時30分。スキー場のセンタードーム2階のフードコート奥にて受付を済ませ、夏油高原インタープリターの会のみなさんにスノーシューのフィッティングと着脱のレクチャーをしていただきました。

 

 

 

 

貸し出していただいたスノーシューとストック。今日の相棒です。
参加者が揃い、コースについての説明をしていただいたあとは、いよいよゴンドラに乗り込み300メートルの標高差を一気に登ります。他の参加者さんと話しながら、無事に帰ろうという決意と、雪に負けずに頑張って歩くぞという覚悟を再度固めます。

 

 

ガイドしていただくコースは、第1ゴンドラを降りた地点からまず横岳へ向かいます。そこから折り返し北東へ向かい兎森山へ。兎森山登頂後は第2ゴンドラで帰還、というものです。

 

 

出典:国土地理院地図

 

 

さあ、いよいよ出発です!

 

わかっていたもののなかなかの風雪。つい吹き付ける向かい風を避けるように足元ばかり見て進んでいたときに、前方から「他の人が歩いた後を歩くのは楽だけど、せっかくスノーシューをつけているのだから好きなところを歩いた方がたのしいよ」というアドバイスが聞こえてきました。たしかに、普段なかなかお目にかかれないような踏み放題の新雪、歩かないのはもったいない!少し気持ちに余裕が生まれて、列からちょっとだけ外れて歩いてみました。

 

 

▲風雪の様子

 

 

▲前方を歩く参加者さん

 

 

最初の目的地、横岳(標高1099メートル)。お天気がいい日はかなりきれいに焼石連峰が見えるそう。
今日は残念ながら白色が多めの景色ですが、雪山ならではのものをガイドさんに教えていただけました。それがこちらの……

 

 

 

 

えびのしっぽ!

 

 

名前がとってもかわいい。これは樹氷の一種で、同一方向から吹き付ける風にとばされてきた雪や水滴が、岩や木に付着したもの。それがどんどんと積み重なってまるでえびのしっぽのように伸びていくとか。風上に向かって伸びていくんだよ、と教えていただきました。

 

 

これを見られただけでも正直いってしまうと大満足ですが、まだトレッキングは始まったばかり。道のりの半分も来ていませんので、横岳から方向転換し兎森山に向かって歩き始めます。

 

 

みなさん吹雪をものともせず尾根を進んでいきます。標高1000メートルの尾根に遮るものなく吹き付ける強風はやはり想像通りなかなかの厳しさで、ちょっとだけ出ている頬や前髪を凍らせていきます。数十分前に固めたばかりの決意はどこへやら、私は既にこの時点で泣き言を吐いています。

 

 

しかし、スノーシューのおかげで雪を踏み抜いて沈むこともなくふわふわさくさくと雪をふみながら歩きたいところを進めるので、歩くこと自体はとっても楽しいです。

 

 

 

 

ところで、足元に点々と生えていた膝丈くらいの植物たち。低木が生えているわけではなく、本来ならば私たちの背丈を軽々と越して茂る木々があまりの積雪量に梢だけ雪の上に出している様子です。つまり我々は雪に埋まった木々の上を歩いているんです。

 

 

今になって写真を見ていてこの樹木はなんなのだろう?と考えていますが、トレッキング中はそれどころではなく、せっかくインタープリターのみなさんがいらっしゃるのに聞きそびれてしまいました。いつか夏にも訪れてどんな植生なのかをこの目で確かめてみたいと思います。

 

 

やがてコースは登り坂に。いよいよ最終目的地の兎森山の頂上に向かって尾根を進みます。

 

 

 

 

兎森山からスキー場駐車場方面を望む。ここももちろん、お天気が良ければ絶景ポイント。絶対に景色素晴らしいだろうなあというのがわかるので、次回再チャレンジへのモチベーションになります。ここで参加者全員でならんで集合写真を撮ったりして一休みしました。

 

 

 

 

振り返ると、進んできた尾根の向こうに最初の目的地だった横岳が見えます。こんなに歩いてきたんだあ、という達成感。そして、ここをまた降りて帰るんだあ……という現実。ここまでスノーシューで歩いてきて私が感じたことはまず、「平地をスノーシューで歩くのは私にもできるし、すっごく楽しい」こと、そして「どうにも私は斜面を進むのが苦手らしい」ということ。しかし自分の足で雪を踏み締めて進まねばなりません。登りの時には気にならなかった西からの強風にめちゃくちゃにビビりながら、そしてインタープリターの方に「大丈夫、こわくないよ!」と励ましてもらいながらなんとか下り切ることができました。当然ながら登りより下りの方が怖いのは夏山でも冬山でも一緒なんだなと実感しました。

 

 

集合から解散までがおよそ3時間、運動はあまり得意ではないし普段運動不足の自覚がある私にはちょうど心地よい疲れを感じるような体験となりました。快晴のスノーシュートレッキングも体験してみたいので、余裕をもって景色を楽しめるように、もう少し体力(根性?)をつけて来年以降ぜひまたチャレンジしたいです。

 

 

おまけ

 

 

よく、北上市内に雪が多く降るのは日本海側からの雪雲のせい、と聞きますよね。今回体験中にも「山の切れ目になっているから雪がたくさん降るんだよ」と教えていただきました。

 

 

これまでも、なんとなくわかったようなつもりで聞いていたのですが、せっかくきっかけを与えていただいたので、北上市の気候について少し勉強してみたいなと思って、図書館へ行ってきました。

 

 

“大陸から吹き出す冷たく乾燥した季節風が、対馬海流(暖流)の流れる暖かい日本海を渡るとき、海面から熱と水蒸気の供給を受け、雪雲が発生し、次第に発達する。このとき、空気が冷たく、日本海の海水温が高いほど、雪雲は発達する。そして、日本海側の海岸平野部に達した雪雲は、降雪をもたらしながら内陸を進むが、強い季節風により奥羽山脈で強制上昇することで、雪雲としてさらに発達し、山沿いに大量の雪を降らせる。”
“国道107号線周辺の奥羽山脈は、和賀川が奥羽山脈を割るように流れるなど、標高が低くなっている。そこは「仙人窓」といわれ、山脈に穴があいたような状態になっており、日本海側からの雪雲が流入しやすい地形となっている。”
(引用元:『新編北上市史 特別編 自然』第3部第1章)

 

 

なるほど国土地理院の3D地図で確認してみると、日本海側から見た時に横手盆地から北上盆地まで、超巨大な切り通しのように奥羽山脈に切れ目があるのがよくわかります。1000メートル級の山々がならんでいるところにこんな切れ目があったら、雪雲も通りたくなりますよね。

 

 

北上はぐるりと山に囲まれ、よく晴れた日にはどちらを見ても美しい稜線を眺めることができますが、その中でも西側の奥羽山脈方面は私のお気に入りの景色です。毎朝出勤途中に確認してきれいに見えた日はそれだけで今日のスタートは100点!の気分になれるのですが、今回改めてスノーシュー体験をさせていただいたことで、さらに思い入れのある景色になりました。

 

みなさんもたまにはいつもなんとなく見ているあの山の上に登ってみてはいかがでしょうか?きっと、楽しい発見がありますよ。
そして、悪天候の中でも安心して体験ができるようサポートしてくださったインタープリターのみなさん、本当にありがとうございました。