KITAKAMI NEWS

【20代の肖像】vol.24 思いやりを忘れずに。いろいろな仕事にチャレンジしたい。

2022年3月7日

きたかみリズム×きたかみ仕事人図鑑

 

思いやりを忘れずに。
いろいろな仕事にチャレンジしたい。

 

 

vol.24  渡邊 翔太(わたなべ しょうた) 20歳

 

障がい福祉サービス事業所「とばせ園」で挑戦の日々。

 

 

「いろいろな仕事にチャレンジしたいと思ったので、『とばせ園』で働こうと思いました」

 

 

そう語るのは同園で2度目の冬を過ごし、今年晴れて成人式を迎えた渡邊翔太さんです。

 

 

 

 

翔太さんが働く「とばせ園」は障がいを持った方に働く場を提供するとともに、作業を通じて就労のために必要な知識や能力を向上させるための訓練などの支援も行う障がい福祉サービス事業所として、2000(平成12)年に誕生。以来、北上市で20年以上にわたって障がいを持った方の自立支援に取り組んでいます。

 

 

そんな「とばせ園」で翔太さんが担当しているのが「農事園芸作業」。「とばせ園」では地域の方が無償で提供してくださった約3,400㎡の畑を耕作して作物を栽培するだけでなく、自分たちがつくった作物を使ってお菓子やジュースから味噌まで手づくりして販売もしています。

 

 

高校生のときに通っていた特別支援学校では、一般企業や障がい福祉サービス事業所などでさまざまな職種の現場実習を経験してきた翔太さんが一番好きだったのが、お菓子やお弁当をつくって販売する実習の時間だったそう。

 

 

そんな翔太さんにとって、野菜から自分たちで育て、お菓子や味噌なども手づくりして販売まで携われる「とばせ園」での仕事は、自分の“好き”にも通じる魅力ある仕事でした。

 

 

▲この日は雪の下から収穫した人参の出荷作業を行っていた翔太さん。表面に付いた土をキレイに洗い流して袋に詰めた人参は地域の産直などへ。

 

 

しかも手掛ける野菜は安全・安心の地場産にこだわり、人参、落花生、ほうれん草、小松菜、チンゲンサイ、玉ねぎ、長ねぎ、枝豆、かぼちゃ、とうもろこし、じゃがいも、大豆など多種多様。さらに季節に合わせたお菓子をはじめ、添加物を使用しない栄養満点の味噌など手づくりにこだわった商品も豊富で、そうした野菜や商品は地域の産直などで販売され、大好評とのこと。

 

 

「自分たちがつくった野菜は市内の学校給食にも食材として使われていて、子どもたちにも『おいしい!』と言って食べてもらえるので、すごくやりがいがあります」

 

 

笑顔でそう語ってくれた翔太さんですが、現在は味噌づくりに夢中。

 

 

「大豆も自分たちがつくったもので、麹も手づくりしていて、米と麹菌を混ぜてつくります。味噌なんてつくったこともありませんでしたが、いろいろな工程を経験するうち、味噌づくりが面白くなりました」

 

 

その言葉からもわかる通り、翔太さんの「とばせ園」での日々は充実していますが、残念なことも……。

 

 

▲翔太さん自慢の味噌は大豆の生産から味噌の製造まで「とばせ園」で一貫管理されており、手づくりの麹をたっぷり混ぜた味噌は添加物も不使用で味もまろやかと大好評。お味噌汁はもちろん、煮物やおでんなどにもおすすめです。

 

 

▲「とばせ園」でつくられているお菓子やジュースは自分たちが育てた作物が原料。翔太さんが洗っていた人参はジュースにも活用。甘味料は使わず、素材本来の上品な甘みとすっきりとした味わいが人気です。

 

 

▲「とばせ園」の商品は地域の産直の他、北上市内にある「ハートフルショップ まごころ」(江釣子ショッピングセンター PAL内)でも販売。同店には北上市と西和賀町にある障がい福祉サービス事業所でつくった商品がズラリ。

 

 

コロナ禍で楽しみなイベントも中止に。でも……。

 

 

翔太さんが「とばせ園」で働きはじめたのは、2020(令和2)年の春から。それはちょうど、新型コロナウイルスの猛威が全国に拡大していった頃でした。

 

 

翔太さんが担当する「農事園芸作業」では、多種多様な野菜づくりとともにお菓子や味噌づくりなどの作業がありますが、それ以外にも地域のさまざまなイベントに出店し、店頭で一般のお客さまに自分たちが育てた野菜や手づくりした商品などを販売する機会があります。

 

 

特別支援学校では「お菓子やお弁当をつくって販売する実習の時間が一番好き」だったと語っていた翔太さんにとって、そうしたイベントへの出店も楽しみのひとつでした。が、しかし多くのイベントがコロナの影響で中止に。

 

 

 

 

「私はまだそういうイベントで販売したことはありません。でも、一度だけ『とばせ園』の前で職員のみなさんに野菜を販売する機会をつくってもらえました。そのときは接客の仕事もできて、教えてもらいながらですけど、レジ打ちにも初めてチャレンジできてよかったです」

 

 

新型コロナウイルスの影響は他にも……。

 

 

▲コロナ禍でイベントの開催や旅行なども制限されるなか、「とばせ園」ではお仕事以外にも工夫を凝らして地域の方との交流や市内のレストランでの食事会など、さまざまな取り組みを実施。

 

 

▲20万本の花の苗を種から育て、北上市の「花いっぱい推進運動」の取り組みをお手伝いするのも翔太さんたちの仕事。写真は北上市の髙橋市長にその花を寄贈したときの様子。「とばせ園」の利用者さんたちでつくる自治会の副会長も務める翔太さんは、みんなを代表してメディアに登場することもしばしば。「こんなに新聞に出ると思わなくてビックリです」と照れ笑い。これもチャレンジ!

 

 

思いやりを忘れずに……。20歳の誓い。

 

 

「とばせ園」では季節の行事や地域のみなさんと交流を深めるイベント、さらに利用者さんたちみんなで楽しむ旅行など、さまざまな取り組みを行っています。

 

 

その一環として、翔太さんが「とばせ園」で働きはじめた2020(令和2)年には、同園の開園20周年の年でもあったため、東京ディズニーランドまたはUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)へ記念旅行に行く企画があったそう。翔太さんも楽しみにしていましたが、それも新型コロナウイルスの影響で中止に。

 

 

「とても残念でしたが、職員のみなさんがいろいろ考えてくれて、県内の旅行ならできそうだとなったときに宮古に旅行する予定を立ててくれました。

 

 

でも、結局それもコロナがまた流行って中止になったのですが、もし旅行をしていたらお昼を食べる予定だった宮古のお店に、職員さんが朝からクルマで行って海鮮丼のお弁当を買ってきてくれたんですよ。

 

 

旅行には行けなかったけど、そのとき『とばせ園』でみんなといっしょに食べた海鮮丼のことは今でもよく覚えています」

 

 

そう語ってくれた翔太さんは、「朝早くにわざわざ2時間もかけてクルマで行ってくれたんですよね」とお弁当を取りに宮古まで行ってくれた職員さんの苦労をねぎらいます。

 

 

いろいろな仕事にチャレンジしたい……。

 

 

そう思って「とばせ園」で働きだしてから2年。さまざまなチャレンジを重ね、20歳となった翔太さんに、最後に「どんな大人になりたいですか?」と尋ねると……。

 

 

「思いやりを忘れずに、責任のある行動が取れるステキな大人になりたいです」とのこと。

 

 

もう、なっているような……。と思いつつ、ステキな大人をめざす翔太さんのチャレンジはこれからも続きます。

 

 

▲畑に隣接するビニールハウスでも野菜がすくすく成長中。左下はみんなで種を蒔いたチンゲンサイ。

 

 

▲「とばせ園」に隣接する広大な畑が翔太さんの仕事場。手前左が人参畑で、土が見える部分は人参を掘り出した場所。収穫はまだまだ続くそう。

 

 

▲翔太さんと仲間たち

 

 

渡邊翔太さんが働く職場:障がい福祉サービス事業所 とばせ園 

 

 

岩手県北上市二子町秋子沢214-5
Tel/0197-66-5050