KITAKAMI NEWS

【20代の肖像】vol.22 今度は支えるヒトに。 “うきうき””わくわく”するまちへ。

2022年2月9日

きたかみリズム×きたかみ仕事人図鑑

 

今度は支えるヒトに。
“うきうき””わくわく”するまちへ。

 

 

vol.22  早坂 凌(はやさか りょう) 26歳

 

大震災。誰も知らないまち。その不安を支えてくれたもの。

 

 

一関市出身の早坂 凌さんと北上市の出会いは、およそ11年前。その記憶は「寒くて怖い」と「不安」な気持ちにリンクします。

 

 

「東日本大震災が起こったのは私が中学を卒業するときで、卒業式もできないまま高校に進むことになったんです。私はサッカーがやりたくて地元の高校ではなく専北(専修大学北上高等学校)を選んだのですが、ずっと一関で暮らしていたので北上市のことは全然わからなくて……。

 

 

知り合いもいませんでしたし、ひとりで電車に乗って知らないまちの学校に通うのも初めての体験で、当時は余震もまだ続いていて、地震のたびに電車も止まったりして……。

 

 

専北に行くと決まったときは好きなサッカーができるので楽しみだったのですが、大震災を経験してからは地震のときの寒くて怖い気持ちと、全く知らない土地に行くことへの不安も重なってとても心細かったですね」

 

 

そんな早坂さんを支えてくれたのが、大好きなサッカー。

 

 

 

 

「当時の顧問が怖かったというのもあるんですが(笑)、本当にサッカーばかりやっていました。専北のサッカー部は自由というか、変な上下関係もなくて先輩後輩に関係なく練習のときはバチバチやり合うのが当然だったので、純粋に上手くなりたいという気持ちでサッカーに打ち込むことができました」

 

 

専北サッカー部といえば、今年度も全国高校サッカー選手権大会に出場するなど岩手県の強豪として知られていますが、早坂さんが在籍していた当時はまだ全国大会に出場した経験はなかったそう。

 

 

しかし、仲間と一緒にサッカーに打ち込むなかで、自分たちの成長と呼応するようにチームもレベルアップし、早坂さんが高校2年のときに全国高校サッカー選手権大会県予選で初の決勝に進出。残念ながら全国は逃しますが、早坂さんが3年になった翌年は初めて県代表として高校総体の東北大会に駒を進めるなど、岩手県の強豪校へとステップアップしていきます。

 

 

そして、そうした毎日を支え、日々の励みになったのが……。

 

 

▲高校時代の早坂さんは岩手県のスポーツ誌でも取り上げられるなど活躍。人気マンガ『キャプテン翼』に登場する天才GK・若林源三に憧れ、小学2年からサッカーをはじめ5年生でGKに。以来GK一筋。

 

 

▲早坂さんが出場した高校総体の東北大会の様子。赤いユニフォームが早坂さん。試合は、あの青森山田高校に1対0で惜敗。

 

 

地域のヒトの「がんばってね」に元気をもらって。

 

 

「専北の制服を着て自転車に乗っていると、『今日もがんばってね』という感じで地域の方が気さくに声をかけてくださるんですよ。知っているヒトが誰もいないまちで最初は不安でしたが、そういう声を聞くとやっぱりうれしくて、きつい練習もがんばれました」

 

 

▲高校時代の早坂さん。こちらもスポーツ誌より。

 

 

そんな声に励まされながら早坂さんは専北で充実した3年間を過ごすと、さらに大好きなサッカーに打ち込みたいと東京の大学へ。そこで入部したサッカー部は毎年Jリーガーを輩出する名門で、部員は全国から集まり240人もいたそう。しかもそれだけ大所帯になるとカテゴリーも40人ごとに6つに分かれ、レギュラーになるためには……。

 

 

「4年間がんばりましたが、レギュラーどころかトップのカテゴリーにも入れなくて……。世の中の厳しさを学びました」

 

 

 

 

そう言って微笑む早坂さんにはもうひとつ、岩手県に戻り「保健体育の先生になる」という夢もありました。しかし……。

 

 

「中高の保健体育の先生の免許は取れて、専北で1ヵ月間教育実習もさせていただきました。ただ、岩手県で保健体育の先生になるのは100人に1人という狭き門で、試験を受けたのですがダメでした」

 

 

保健体育の先生をやるなら「岩手県よりも倍率の低い首都圏で」というアドバイスももらったそうですが、将来を考えたとき、「生活するなら生まれ育ったところで仕事をして家族を持ちたい」と思っていた早坂さんは、岩手県に本社のある金融機関に就職する道を選びます。

 

 

「私は奥州市で働くことになって、そこで3年間お世話になりました。就職活動をするときは漠然とヒトとの出会いを大切にする仕事をしたいと思っていたのですが、そこでは本当にヒトに恵まれました。同期の仲間はもちろん先輩や上司、お客さまと、たくさんの出会いに恵まれて楽しく働くことができました。本当に感謝しかないですね」

 

 

しかしそう語る早坂さんは、その金融機関を退職し、2021年4月から北上市役所で働くことに。そのきっかけは何だったのでしょう。

 

 

▲イベントで子どもたちと触れ合う早坂さん。

 

 

あの頃のように、”うきうき””わくわく”するまちを未来へ。

 

 

「私がお世話になった金融機関は基本的に3年単位で転勤があって、場所によっては県外で働く可能性もありました。やっぱり私は地元で働きたいという想いもありましたし、転勤となるとせっかく築きあげたヒトとの関係性もゼロになってしまいます。それを考えると……」

 

 

そこでめざしたのが、“北上市”の職員採用試験。

 

 

「私のなかでは大きな不安のなかでスタートした北上市での高校3年間が一番記憶に残っていて、ヒトとしても成長できたし、今の自分の基盤をつくってくれたのは北上市でした。ですから、せっかく地域に根を張って生活していくなら北上市がいいと思ったんです」

 

 

 

 

そう語ってくれた早坂さんは、念願叶って2021年4月から北上市の職員に。現在は商工部 産業雇用支援課 工業係に在籍し、企業誘致で発展を遂げる北上市の工業振興に努めています。具体的には企業ニーズに対応するため北上市内の企業をめぐったり、未来を見据え地域の子どもたちにものづくりの楽しさを知ってもらう体験イベントを開催したりするなど仕事内容もさまざま。

 

 

 

▲この日は北上市が2004(平成16)年から取り組んでいる「いきいきゲーム」(社会の仕組みや仕事の面白さを楽しく学べる授業)のお手伝いのため、市内の鬼柳小学校へ。

 

 

そのなかでも印象に残っているのは……。

 

 

「企業訪問に関しては年間100社を超える企業を訪問するのですが、今年はコロナの影響で例年通りにはいかない状況です。ただ、子ども向けの体験イベントは岩手大学での科学実験教室や3D体験、いきいきゲームなどを実施することができました。市役所ということで、最初は窓口業務のような仕事を担当すると思っていたのですが、さまざまな企業をめぐったり子どもたちと触れ合ったり、1年目からいろいろな経験ができて、とても充実しています」

 

 

そう語る早坂さんに、11年前の「不安」な気持ちはもうありません。

 

 

「市役所職員採用試験の面接でも話したのですが、北上市の『”うきうき””わくわく”するまち』というキャッチフレーズがすごく好きなんですよ。私が中学を卒業して北上市に来たとき、最初こそ不安もありましたが、たくさんの仲間や地域の方に支えられながら、私自身がすごく”うきうき””わくわく”過ごすことができました。ですから、ずっとそういうまちであってほしいし、そのためのお手伝いができたらと思っています」

 

 

”うきうき””わくわく”するまち北上市で、誰よりも”うきうき””わくわく”している早坂さんでした。

 

 

▲保健体育の先生になりたかったという早坂さん。休憩時間に「先生も一緒にやろうぜ!」と子どもたちに言われて「うれしかった」そう。

 

 

▲職場のみなさんと。

 

 

◇早坂 凌さんが働く職場:北上市役所 商工部 産業雇用支援課 工業係

岩手県北上市芳町 1-1
Tel/0197-72-8242