KITAKAMI NEWS

【20代の肖像】vol.20 “モノ”を運ぶ仕事で、地域社会を支えるヒトに。

2021年10月29日

きたかみリズム×きたかみ仕事人図鑑

 

“モノ”を運ぶ仕事で、
地域社会を支えるヒトに。

 

 

~vol.20 髙橋 直人(たかはし なおと) 27歳~

 

大震災の体験。次は自分が役立つヒトに……。

 

 

「この間、北上総合運動公園で防災訓練があって、私も支援物資の輸送訓練に参加させていただきました。私自身も高校生のときに東日本大震災を体験していますが、当時まだ学生だった私は何もできなくて……。

 

 

もちろん災害なんて起こってほしくはないですよ。でも万が一、次に起きたときには私も少しでも役立ちたいと思っていますし、防災訓練に参加して “モノ”を運ぶという今の仕事は、そういうときにも重要な役割を担うとても大切な仕事だと改めて実感しました」

 

 

 

 

 

 

そう語るのは、今年創業60周年の「北上運輸株式会社」で中型トラックのドライバーを務める髙橋直人さんです。

 

 

直人さんが参加したのは、9月4日に開催された「令和3年度 岩手県総合防災訓練」。大雨により北上市と西和賀町で土砂災害が発生したという想定で行われた訓練には、消防や警察、北上市と西和賀町、県、陸上自衛隊など30機関・約440人が参加。コロナの影響で規模を縮小したとはいえ、37に及ぶ訓練を行うなかで直人さんもトラックドライバーとして支援物資を避難所に届ける作業に従事したのでした。

 

 

 

▲「令和3年度 岩手県総合防災訓練」で、支援物資を運ぶ訓練の様子。写真左、トラックの荷台で作業する青いシャツの男性が直人さん。

 

 

東日本大震災では物流がストップし、スーパーやコンビニなどに当たり前のように並んでいた“モノ”が全部なくなる事態に。北上市で高校生として過ごしていた直人さんは、その不安の日々を身を持って経験しているからこそ、防災訓練を通じて改めて“モノ”を運ぶという物流の仕事の存在意義と社会的な責任の重さを痛感したのでした。

 

 

そして、それと同時に必要な“場所”や“ヒト”に“モノ”を届け、日々の暮らしを支える今の仕事に大きなやりがいを感じているのでした。

 

 

そんな直人さんが、「トラック」に興味を持ったきっかけは……。

 

 

 

▲直人さんが勤める「北上運輸」は1961(昭和36)年に北上市で創業。「地域に根ざした企業」をモットーに事業を拡大。現在では名古屋にも営業所を構え、輸送エリアは東北全域からひろく全国へ。

 

 

父がつくる大きなトラックに憧れて。

 

 

「父がトラックのエンジンなどをつくる工場で働いているんですよ。ですからトラックは子どもの頃から興味があって、大きなクルマでたくさんの“モノ”を動かす仕事は面白そうだと思っていました」

 

 

 

 

そう語る直人さんのご両親は東京と神奈川の出身で、大手自動車部品メーカーに勤めるお父さんの転勤がきっかけで北上市に移住。直人さんも幼い頃に北上市にやってきたため、自身が生まれたという横浜の記憶もありません。

 

 

そうしたこともあって高校を卒業した直人さんは首都圏にある会社に就職。

 

 

「両親が東京と神奈川で育ったので、そっちでの暮らしに興味がありました。私が携わったのは自動販売機を設置する仕事で、3トンのトラックに乗って千葉や東京を走り回っていました。ふだんは2人一組で行動していて私は助手席でしたが、好きなトラックに乗っていろいろなところに行ける仕事は楽しかったです」

 

 

当時を懐かしそうに振り返る直人さんですが、もちろん仕事は楽しいだけではありません。

 

 

「売上管理や補充作業をオンラインで効率化する機器を自販機に設置する、当時としては新しい取り組みを任せられたんです。

 

 

ただ、そのメーカーさんは都内だけでも自販機が1万台以上もあるんです。さらに、機器を設置するためには自販機ごとに鍵を借りる必要があって、鍵を閉め忘れたり失くしたりしたらお客さまに迷惑をかけますし、会社としても大変な責任問題になります。

 

 

その仕事は私が勤めた5年半のなかでも一番責任のあるものでしたが、無事やり遂げたことはもちろん、お客さまから信頼されていると実感できたことは大きな自信になりました」

 

 

そんな充実した日々を過ごしていた直人さんが北上市にUターンしたのが4年前。23歳のときでした。

 

 

「父が関東に転勤になって、弟も北海道の大学に行くことになって、母がひとりになってしまうので……。それに向こうでの生活も楽しいですが、ずっと暮らすとなると北上には友達がいますし、やっぱり居心地がいいですよね」

 

 

そう言って笑顔を浮かべる直人さんが北上に戻って選んだ仕事が、お父さんの仕事を通して小さい頃から憧れていたトラックドライバーです。

 

 

しかし、……。

 

 

▲写真左は直人さんを面接し、「働きながら免許を取る」よう背中を押した荒川部長。右は21歳、「北上運輸」で一番若手の井上裕貴(いのうえ ひろき)さん。

 

 

 

 

 

次は10トントラック。たくさんの“モノ”を必要な“場所”や“ヒト”へ。

 

 

以前は普通免許があれば、18歳から中型(いわゆる「4トントラック」など)を運転することができました。しかし、現在4トントラックを運転するためには中型免許の取得が必要となります。しかも、20歳以上・免許経歴2年以上という取得要件も……。

 

 

北上に戻ったら「トラックに乗ろう」と思っていた直人さん。まずは中型の免許を取ってから仕事を探そうとしていたとき、運命の出会いが。

 

 

「私がいつも行く床屋さんで北上運輸の方と出会ってお話をしたら、会社の採用担当の方を紹介してくださったんですよ。しかも、『働きながら免許を取っていいよ』と言っていただいたので入社を決めました」

 

 

そう語る直人さんですが、トラックドライバーと言えば仕事もハードなイメージです。そこに不安は?

 

 

「床屋さんで出会った方が『うちは運行管理がしっかりしているから働きやすいよ』と言ってくださったんです。その方は転職してきたそうで、他の会社を知っている方がそう言うなら安心だと思いました」

 

 

 

 

直人さんは「北上運輸」に入社するとさっそく働きながら教習所に通い、順調に中型免許を取得。その後、2週間ほど先輩についてもらい、すぐ独り立ち。1年目は東北6県を中心に、2年目以降は関東・北陸、遠くは名古屋・大阪へと飛び回る日々だそう。しかし、それだけ聞くと仕事もハードそうですが……。

 

 

「この仕事をしていて辛いと思ったことはありません。モノの積み込み・積み下ろしは基本的にフォークリフトですし……。

 

 

毎回違うところに行けて、長距離だと5日運行(4泊5日)になったりもしますが、今は高速のパーキングエリアも充実していて、温泉に入ったり、ご当地のおいしいものを食べたりしながらリフレッシュができます」

 

 

そう言って笑顔を浮かべる直人さんの次の目標は、大型免許を取得して10トントラックを運転すること。

 

 

「会社も応援してくれますし、トラック協会さんの助成金も活用できるので、大型免許をぜひ取りたいですね」

 

 

高校生のときに経験した大震災での記憶を糧に。必要な“場所”や“ヒト”へ、大きなトラックでたくさんの“モノ”を運ぶこと。そのやりがいを胸に、直人さんは今日も大好きなトラックに乗ってお客さまのもとへ向かいます。

 

 

▲空調管理倉庫として稼働する「北上運輸」の流通センター倉庫。増築工事により2021年1月14日に新棟も完成。

 

▲直人さんが運転する4トントラックが流通センター倉庫に登場。

 

▲積み込み作業の様子。

 

▲倉庫スタッフのみなさんと

 

▲荷物を積んで出発した直人さん。この日は栃木県へ。写真右は無事故無違反を続ける直人さんの運転をいつも見守る相棒。

 

 

 

◇髙橋 直人さんが働く職場:北上運輸株式会社

 

岩手県北上市町分2-120-1
Tel/0197-63-3167(代表)