KITAKAMI NEWS

【20代の肖像】vol.12 地域に寄り添う音楽家へ。クラリネットで叶える夢。

2021年3月10日

きたかみリズム×きたかみ仕事人図鑑

 

地域に寄り添う音楽家へ。

クラリネットで叶える夢。

 

~vol.12 木戸口夏海(きどぐち なつみ) 25歳~

 

 

 

吹奏楽部に憧れて。小学3年からクラリネット一筋。

 

 

「私もクラリネットを吹いているんですけど、あんなにやわらかな音が出せるのは本当にすごいと思います」

 

 

そう語るのは、専修大学北上高等学校(以下「専北」) 吹奏楽部でコンサートミストレスを務める照井未来さん。

 

 

「音域もすごく広いんですよ。高い音も力強くて、サックスの方が音は大きいはずなのに負けちゃうぐらいです」

 

 

 

 

同じく吹奏楽部で生徒指揮を務める毛利優花さんも、自身が吹くサックスを例にそう言葉を続けます。

 

 

さらに2人の口から「やさしい」「かっこいい」などという言葉がポンポン飛び出し……。2人が語ってくれたのは、同吹奏楽部のOGであり現在はコーチも務める木戸口夏海さんのこと。

 

 

 

 

夏海さんは2歳上の幼馴染がクラリネットを吹く姿に憧れて、小学3年のときに地元の黒沢尻北小学校の吹奏楽部に入部。以来、上野中学校、専北と地元の学校の吹奏楽部でクラリネット一筋に情熱を注ぎ、大学もプロの音楽家をめざして東京へ。そして、2019年12月に北上市に戻り、現在はプロのクラリネット奏者として地元を拠点に活動しています。

 

 

▲個人レッスンを終えて。写真左が照井未来さん。中央が木戸口夏海さん。右が毛利優花さん。

 

 

夏海さんと同じように吹奏楽部に憧れ、小学生のときから地元の学校で大好きな音楽をやり続けている未来さんと優花さんにとって、クラリネット一筋で道を切り拓いている夏海さんは、やさしくアドバイスしてくれる一番身近なプロの音楽家であり、憧れのかっこいい先輩なのでした。

 

 

▲夏海さんがコーチを務める専北の吹奏楽部のレッスン風景。

 

 

▲北上市内にある同校は、スポーツとともに文化活動も盛ん。なかでも吹奏楽とマーチングバンドは全国レベルで、夏海さんも在学中はマーチングバンドで全国へ。

 

 

東日本大震災で改めて気づいた音楽の素晴らしさ。

 

 

そんな夏海さんが音楽の素晴らしさに改めて気づかされたのは、10年前の東日本大震災を経験して。ちょうど中学から高校に進学する時期で、中学の卒業式も延期になるなど大きな不安を抱えているときでした。

 

 

「専北に入学してすぐ、吹奏楽部で当時避難所となっていた大槌高校を訪問させていただきました。

 

 

私たち1年生は炊き出しなどのお手伝いで、先輩たちが大槌高校の吹奏楽部のみなさんと演奏したのですが、避難所で暮らすみなさんがとても大変な思いをされているはずなのに『ありがとう。チカラになったよ』と言ってくださって……。

 

 

音楽はヒトのチカラになれる素晴らしいものだと改めて実感しましたし、私も早くヒト前に立って誰かのチカラになれるような演奏をしたいと思ったんです」

 

 

▲夏海さん愛用のクラリネット。

 

 

そうしてプロの音楽家を志すようになった夏海さんは、大学でもクラリネット漬けの日々。さらに4年生のときには坂本龍一氏が代表・監督を務める「東北ユースオーケストラ」(東日本大震災の被災三県<岩手県・宮城県・福島県>の子どもたちが中心の楽団)などにも参加。

 

 

大学卒業後もプロへの登竜門といわれる「BCJクラリネット・アカデミー」や、岩手から世界へはばたく演奏家を育成する「ざ・CLASSIC 2019」の公開新人オーディションにも合格し演奏会に参加。また、「復興支援事業コンサートキャラバン2020 in宮古」にも参加するなどさまざまな経験を積み重ねながら、現在は北上市を拠点に音楽活動をしています。

 

そんな夏海さんが目標とするプロの音楽家とは……。

 

 

「プロの音楽家というと、ステージの上にいる特別なヒトというイメージがありますよね。私はそういう遠く離れた存在ではなく、もっと近い距離で地域のヒトと触れ合いながら一緒に音楽を楽しめる音楽家になりたいんです」

 

その目標が明確になったのは、ホールを飛び出して開催する、とある音楽会がきっかけでした。

 

 

▲坂本龍一氏を囲んで、「東北ユースオーケストラ」のメンバーと。

 

 

▲写真左は、北上市内にある湯宿「瀬美温泉」で開催されたクリスマスコンサートにて。右の2枚は夏海さんが代表を務め、北上市を拠点に活動するクラリネットアンサンブル「クラリネット ファルベ」のメンバーと。

 

 

▲2019年9月に開催され、夏海さんも参加した「郡山ジュニアフィルハーモニーオーケストラ」のコンサートの様子。

 

 

地域の中へ。「アウトリーチ」で学んだ音楽活動の可能性。

 

北上市文化交流センター「さくらホール」と奥州市にある「前沢ふれあいセンター」では、共同で「アウトリーチ事業」を展開しています。

 

 

 

 

同事業はホールを飛び出して小中学校や地域の交流施設などで音楽会を開催。さまざまな理由でホールまで足を運べない方たちにも本物のクラシック音楽を身近で聴いて一緒に楽しんでもらおうという取り組みです。
ひとりでも多くの方にクラシック音楽の魅力を届け、楽しんでもらうために、音楽会の構成もホールスタッフとアーティストが一緒に考え、アーティストの個性に合わせて音楽会をつくりあげていく点が特徴。

 

 

▲夏海さんが参加した「アウトリーチ」の様子。奥州市立衣里小学校を会場に、2月18日・19日の2日間にわたって全4回開催されました。

 

 

この事業に参加して、夏海さんの音楽観は……。

 

 

「去年開催した音楽会で子どもたちからお手紙をいただいたんですよ。クラシック音楽はもちろんですが、子どもたちはクラリネットの音を間近で聴くのも初めての体験で、そのお手紙を読むとクラリネットの音と初めて出会って驚いたり、音量の幅広さにびっくりしたり……。興味もなかった楽器ですが、その音を間近で聴いて『すごかった!』と感動してくれていることがわかって私もうれしかったんです」

 

 

そう言って微笑む夏海さんは東日本大震災を体験して改めて音楽の素晴らしさに触れ、さらに「アウトリーチ」で子どもたちの笑顔と出会って、地域に寄り添い、地域のヒトの一番近くで音楽を届けられる音楽家になることが夢となりました。

 

 

そんな夏海さんに改めてクラリネットの魅力を尋ねると……。

 

 

「やわらかな、やさしい音色がクラリネットの魅力です。お腹いっぱいごはんを食べたあとに聴くと、気持ちよくて思わずウトウトしちゃうような(笑) そういうゆったりとした心地よい音色が大好きなんです」

 

 

その音色は大学時代にレッスンを受けたプロの演奏家の方にも褒められたほどで、夏海さんがクラリネットで奏でる音楽の魅力にもなっています。
「私が大好きなクラリネットの音色を、北上市内の方全員に聴いてもらえるようにがんばります!」
最後に力強く語ってくれた夏海さん。大震災から10年目の春、北上市で新しい夢が育っています。

 

 

▲この日の音楽会では高音もカバーするクラリネットの音量の幅広さを伝えるため、夏海さんは先生の怒った声をクラリネットの音で表現。さらにマーチングバンドの動きも取り入れ、子どもたちも参加し一緒に音楽を楽しむなど笑顔あふれる音楽会となりました。

 

 

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