KITAKAMI NEWS
【20代の肖像】vol.77 “やさしさ”がひろげる 留学生と介護の未来。

“やさしさ”がひろげる
留学生と介護の未来。
vol. 77
ラオティ・アンビカ・デビ 23歳
ビーケー・ビニタ 22歳
人の役に立ちたい。ネパールから日本へ。
2026年4月、北上市内にある専修大学北上福祉教育専門学校(KTS) 福祉介護科に44名の生徒が入学しました。そのうち27名がネパール人留学生で、日本人15名を大きく上回っており、残りの2名もインドネシア人留学生となるなど、たくさんの外国人留学生が介護の勉強に励んでいます。
ラオティ・アンビカ・デビさんとビーケー・ビニタさんも、日本で介護福祉士になるためにネパールから2024年5月に来日。宮城県仙台市にある日本語学校でおよそ2年間日本語を学び、この春からKTSに入学しました。
そんな2人に、介護福祉士になろうと思った理由を尋ねると……。
「私は小さい頃から困った人を助けられるような仕事をしたいと思っていました。介護を選んだのも、やさしい気持ちが大切だと思ったからで、人の役に立てる良い仕事だと思います」(デビさん)

▲ラオティ・アンビカ・デビさん
「子どもの頃の夢は、人の役に立つ人になることでした。家族や周りの人たちを助けられるような仕事をしたいと思って介護福祉士をめざしました」(ビニタさん)

▲ビーケー・ビニタさん
ネパールでは高齢者を敬う文化が根づいており、デビさんやビニタさんも一緒に暮らしていた祖父母のことが大好きだったそう。そのため、高齢者の方とかかわる介護福祉士という仕事に大きなやりがいを感じています。とはいえ、「介護福祉士」は国家資格でもあり、日本語が母国語ではない外国人の方がその資格を取得するのは、日本語学校で日本語を2年間学んでいるとはいえ大変そうですが……。
「授業では先生以外に、私たち(留学生)が困ったときに助けてくれるサポーターの先生が3人いて、わからないことは親切に教えてくれるので安心して勉強できています」(デビさん)
「日本語は難しいですが、日本人の友達もできたので、わからないことは日本人の友達も親切に教えてくれます。日本人はやさしいので、一緒に勉強できて楽しいです」(ビニタさん)
2年前に来日し、日本語学校に入学した際は日本語が何もわからず、「すごく大変でした」と声を揃える2人ですが、読みやすいように丁寧に書かれたレポートや、いつも笑顔で楽しそうに語る2人からは、充実した毎日を過ごしている様子が伝わってきます。そんな2人の学びや、日々の暮らしを支えるのは……。

▲2人が使用している教科書。漢字にはルビがふられていますが、専門用語や難しい漢字も多く……。そのため留学生には介護・看護にかかわる漢字やその言葉の意味・使い方などを学ぶための教科書も。

▲読みやすいように丁寧にまとめられているレポート。上段がデビさん、下段がビニタさんのもの。

▲KTS介護福祉科1年のみなさんで。

▲2人の学びを支えているのは、学校以外にも……。
泣きながら北上市へ。不安のその先に。
デビさんとビニタさんを受け入れ、北上市での暮らしを見守っているのは、住み慣れた自宅で最期まで暮らせるように応援する訪問介護事業所「いろどりパレット」です。同事業所の本社は盛岡市にあり、24時間365日体制で定期訪問に加え急な要望にも柔軟に対応する「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」や、動物(羊)とのふれあいを暮らしのなかに取り入れた老人ホーム「りんごのおうち」の運営などで注目を集め、第14回アジア太平洋高齢者ケア・イノベーションアワード 2026 アクティブエイジング部門のファイナリストに選出されるなど、その取り組みは国内外で高い評価を得ています。

▲羊ともふれあえる老人ホーム「りんごのおうち」で本社スタッフとも交流。2人は写真右上、羊を抱えた代表の隣に。
「いろどりパレット」は、そんな本社が手掛ける「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」を北上市でも実現してほしいという声に応えて、昨年12月にオープン。現在は自宅での生活を応援する「訪問介護」「居宅介護」「重度訪問介護」「人生を豊かにするための自費(保険外)サービス」を行っていますが、いずれは「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」の提供をめざして取り組んでいます。

▲本社スタッフの平均年齢は28歳と若く、2人もすぐ仲良しに。
「いろどりパレット」という名前には、“色んな人”“色んな価値観”を尊重し、それぞれの人生や想いが重なり合い、やさしくあたたかな彩りがひろがる地域社会の実現に貢献したいという願いが込められています。スタッフは4~5名と小規模ながら留学生を受け入れようと思ったのも、そんな多様性を大切にする事業所の取り組みとリンクするからだそう。
ビニタさんは仙台市にある日本語学校を卒業して北上市に来るとき、ずっと泣いていました。その気持ちに寄り添ってくれたのも……。
「私が通っていた日本語学校から北上市に来たのは私1人だけでした。ですから、すごく寂しかったですし、不安もありました。でも、暮らしてみたら、みなさんすごくやさしくて……。例えば、学校に提出する書類に感想を書くことがあるのですが、私は日本語もまだまだ勉強中なので『チェックしてもらえますか?』とお願いすると、すぐチェックしてくれて、いろいろなアドバイスもしてくれます。そんな風に困ったことや相談することがあってもやさしく教えてもらえるので、今はすごく安心できて楽しく暮らせています」(ビニタさん)

▲介護の大先輩(いろどりパレットのスタッフ)に勉強や日本語を教えてもらえるのも、この暮らしの魅力だそう。この日は「いろどりパレット」管理者・岩瀬 都さんと漢字の勉強。
そんなエピソードにデビさんもうなずきながら、さらに言葉を続けます。
「いろいろなイベントにも誘ってくれて、私たちにも家族のように接してくれます。今まではネパールにいる家族が恋しくなることがよくありました。でも、もうホームシックもなくなりました。今は家族に電話したとき『こんなことがあった』『あんなことがあった』と教えてあげるのですが、家族もここで私が暮らしていることを喜んでくれています」
そんな2人を見守る「いろどりパレット」のスタッフたちは……。

▲「いろどりパレット」に初めて来たときの2人。ビニタさんは最初泣いていたそうですが……。

▲バーベキューに花火、地元の祭りなどさまざまなイベントに誘ってもらえてうれしいと語る2人。イベントには本社のスタッフも参加し、さらににぎやかに。
“やさしさ”がひろげる介護と留学生の未来。
「2人ともすごく真面目で、介護や日本語の勉強にも一生懸命ですし、周囲への目配り・気配りも自然にできてやさしいですね。例えば私たちが仕事をしていると、何もお願いしていなくても『どうぞ』と言ってお茶を出してくれます。その一杯に込められたやさしさが、現場の空気を軽くしてくれます。
それにいつも笑顔で、話すことも大好きな2人なので、私たちも明るい気持ちになって自然と応援したくなる。『いろどりパレット』はオープンしてまだ半年ほどでスタッフも4~5名と少ないですが、そういう2人がいることで私たちも介護の仕事をがんばろうと思えますし、チームの一体感にもつながっていると思います」

2人の暮らしをサポートしている「いろどりパレット」の管理者・岩瀬さんは、2人の日常の様子をそう語ってくれました。介護と日本語の勉強に一生懸命な2人は、早く介護の仕事や日本人と一緒に働くことにも慣れようと、アルバイトにも前向きです。
「私は介護施設とレストランでアルバイトをしています。介護施設では掃除の仕事をしていますが、早く終わると利用者の方とお話ができるので、すごく楽しいです。認知症の方もいて、最初はどう接すればいいかわからなかったのですが、職員さんがいろいろ教えてくれるので、今ではたくさん話しかけられるようになりました(笑)」(デビさん)
「私はコンビニでアルバイトをしています。日本人の方と一緒に働くのは初めての経験だったのですが、日本人の方はわからないことも簡単な日本語でやさしく教えてくれるので日本語の勉強にもなって、すごく楽しく働けています(笑)」(ビニタさん)
そんな2人に、将来どんな介護福祉士になりたいかと尋ねると……。
「利用者の方が安心して過ごせるように、やさしい介護福祉士になって日本でずっと働いていきたいです」(ビニタさん)
「私も同じです。利用者の方やその家族の方、みんなの気持ちがわかって、やさしく介護できる介護福祉士になりたいです」(デビさん)
「いろどりパレット」という介護事業所で介護の大先輩たちに見守られながら介護福祉士をめざす2人。その夢の実現を、たくさんの“やさしさ”が応援しています。

▲料理も自分たちで。スーパーやコンビニも近く、「周りも静かで暮らしやすい」と語る2人。

▲スパイスが効いた鶏むね肉と野菜の炒め物はネパールの家庭の味。

▲「いろどりパレット」のスタッフと。
2人が暮らす介護事業所:
いろどりパレット

岩手県北上市諏訪町1-3-44
Tel/070-3208-0890
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