KITAKAMI NEWS

【20代の肖像】vol.73 高校生の「やりたい」を応援! わらすばキッズの挑戦。

2026年4月6日

きたかみリズム×きたかみ仕事人図鑑

 

 

高校生の「やりたい」を応援!

わらすばキッズの挑戦。

 

 

vol.73  市原 郁也(いちはら ふみや) 28歳

 

 

 

地域とつながる高校生のカフェがオープン!

 

 

昨年(2025年)12月3日(水)、北上市内の住宅街に高校生が手掛ける小さなカフェがオープン。生徒たちがこだわって手づくりするお菓子や挽きたてのコーヒーが「おいしい」と評判を呼び、近隣のご高齢の方を中心に人気を集めています。

 

 

▲お店で友達と待ち合わせをするお客さまと会話をする「わらすばキッズ」の高校生。

 

 

取材の日も「この間食べたシフォンケーキがおいしかったから」と友達を誘って訪れたグループが、シフォンケーキとカフェラテを楽しみながら、接客を担当する高校生も交えて会話に花を咲かせていました。

 

 

 

 

そんな同店は、地域の子どもの居場所づくりに取り組むNPO法人「わらすば」が運営する通信制高校のサポート校に通う生徒たちが主体となって活動するNPO法人「わらすばキッズ」の取り組みのひとつで、高校生が地域社会とつながりながら社会経験を積む場として誕生しました。

 

 

この「わらすばキッズ」の代表として、高校生の取り組みを陰で支えているのが市原郁也さんです。郁也さんは岩手県内の金融機関で7年間勤務したのち、昨年4月に「わらすば」に転職。前職の経験をいかして経理や総務の仕事を任されています。

 

 

 

 

「わらすばキッズ」がNPO法人として動き出したのが、郁也さんが入職しておよそ3ヵ月後。高校生が社会経験を積むためにカフェを運営するというアイディアは以前からあり、最初のステップとして野菜をつくって販売するといった取り組みを過去には行っていました。しかし、いろいろなことが重なり、ストップしていました。

 

 

そんなとき若い郁也さんが入職したのを機に、あくまでも高校生が主体となって活動する取り組みではありますが、高校生は3年で卒業していくため、郁也さんが代表に就任することで長期的に「わらすばキッズ」の活動を陰ながらサポートする体制を整え、高校生が手掛けるカフェのオープンが実現したそう。

 

 

さて、金融機関から転職して1年。「わらすばキッズ」の代表になっておよそ9ヵ月。カフェがオープンして3か月と郁也さんにとっては新しいチャレンジが重なりましたが、その1年を振り返ってみると……。

 

 

▲同店で人気の手づくりお菓子。リーズナブルで「おいしい」と評判に。

 

 

▲友達が集まってお店もにぎやかに。この日はシフォンケーキを食べにグループで来店されたそう。

 

 

生徒ひとりひとりの成長が喜びに。

 

 

「わらすばキッズ」が手掛けるカフェは現在、毎週水曜日の午後2時30分から午後4時30分まで営業中。メニューは挽きたてのコーヒー(100円)を中心にカフェラテ(150円)、ホットミルク(100円)の他、生徒がこだわって手づくりするシフォンケーキ(150円)、マフィン(100円)、オートミールクッキー(100円)などのお菓子が週替わりで1品登場します。

 

 

 

 

「わらすばキッズ」のカフェがある大堤地区はご高齢の方が多く暮らしていますが、地域住民が気軽に集まれるカフェのような空間が今までなかったそう。そうしたなかで、料金もリーズナブルで挽きたてのコーヒーやお菓子も「おいしい」カフェの噂が口コミでひろがり、現在はご高齢の方を中心に近隣のヒトたちの憩いの場に。一方で、接客を通して地域の方と触れ合える時間が高校生にとっても貴重な経験の場になっていると郁也さんは実感しています。

 

 

「高校に入学した頃は、ヒトとしゃべれない生徒もいました。でも、『わらすばキッズ』の活動を通して他のヒトともしゃべれるようになって、カフェの仕事では接客もできるようになった生徒もいて、そういう生徒ひとりひとりの成長が間近で見られるのはうれしいですね」

 

 

笑顔でそう語ってくれた郁也さん。

 

 

 

 

「金融機関で働いていた頃は、目標を決めてそれを達成することにやりがいを感じていました。でも『わらすばキッズ』では、生徒たちがどのように成長していくのか、それをどのように支えていくのかが大事になります。

 

 

自分たちの行動ひとつひとつが生徒の未来にもかかわってくると思うので、生徒の大事な時期を預かっているという責任を日々感じますが、生徒も楽しそうに取り組んでくれているので、そうした環境づくりをこれからも大切にしていきたいですね」

 

 

「わらすばキッズ」では周りの大人がアレコレ指図するようなことはなく、生徒たちが「やりたいこと」を決めて活動するため、ひとりひとりが率先して動くそう。カフェで人気のシフォンケーキづくりも生徒たちが工夫を重ね、米粉を使ったもっちり触感のおいしさを追求。カフェをオープンする前には、そうして完成させたお菓子を市内の病院で開催されたイベントで販売したところ、用意した約100個のお菓子が午前中で完売するほど人気に。

 

 

▲市内の病院で開催されたイベントに参加したときの様子。

 

 

そのイベントで生徒たちと一緒に店頭に立った郁也さんは、生徒たちが喜ぶ様子も間近で見ており、郁也さんも自分のことのようにうれしかったそう。

 

 

経理や総務の仕事をしながら高校生の活動を陰で支える「わらすばキッズ」の取り組みに郁也さんも大きなやりがいを感じています。

 

 

 

 

ひとりひとりの「やりたいこと」を叶える場所に。

 

 

取材の日にカフェに訪れたグループのひとりから、「この間食べたマフィンもおいしかったので、また食べたいんだけど、そういうお願いはできるのかしら?」と相談が。

 

 

 

 

現在、「わらすばキッズ」のカフェでは、生徒の負担にならないようお店で出すお菓子はシフォンケーキやマフィンなどから週替わりで1品提供するスタイルになっています。そのため日によって食べられないお菓子がありますが、今回のお問い合わせにも「事前にご予約いただければつくっておきますよ」とのこと。こうしたお客さまのうれしい反応をダイレクトに聞けるのも、地域とつながり社会経験を積む生徒たちの学びややりがいにつながっています。

 

 

▲バレンタインデーに生徒からもらったお菓子。いつかメニューに加わる日も……。

 

 

そんな「わらすばキッズ」の今後について尋ねると……。

 

 

「バレンタインデーのときに生徒たちが手づくりのお菓子をプレゼントしてくれたのですが、お店に出せるくらいのクオリティで、すごくおいしかったんですよ。ですから『これ、お店で出してみたら』と言ったのですが、『でも単価が高くなるから』と遠慮していて(笑) 生徒なりにお店のことを考えてくれているのはうれしかったのですが、 『少しくらい値段を高くしてもいいと思うよ。つくりたいならやってみればいいんじゃない』という話をしたんですよ。

 

 

このカフェは地域とつながり社会経験を積みながら、生徒たちのやりたいことを叶える場なので、今後もそういうチャレンジは続けていきたいですし、やりたいことがあるなら応援してあげたいですね。つくりたいものがあったらメニューを増やせばいいし、夏になったらかき氷をつくってもいい。軽食も出せるように飲食店の許可証も取得していますし(笑) お菓子や料理をつくりたいヒトは調理、接客をやってみたいヒトは接客、経理を勉強したいヒトは会計処理や決算書づくり……。

 

 

今でも『自分はあれやる』『これやる』という感じで、ひとりひとりが『やりたいこと』を率先してやってくれているので、その可能性に蓋をせず、どんどん生徒たちの背中を押してあげたいですね」

 

 

▲「わらすばキッズ」には約20名の高校生が在籍しており、それぞれがお菓子づくり、接客、経理など自分の「やりたいこと」を担当。この日は千葉綾菜(あやな)さんと佐々木音和(とわ)さんが接客を担当。

 

 

そう語ってくれた郁也さんにも「やりたいこと」が……。

 

「『わらすば』の理事長の大内が高校時代の恩師で、前職のとき私が北上市の支店に転勤になって10年ぶりに再会したんですよ。私の高校時代の夢が『先生になること』だったのですが、そのとき理事長から『今からでも目指してみるか』と声をかけていただいて……。

 

今は『わらすば』で働きながら、通信制の大学に編入して先生になるための勉強もしています。転職して1年ですが、私も『やりたいこと』ができているので楽しいですね」

 

「わらすばキッズ」の代表として生徒の「やりたいこと」を応援しながら、「先生になりたい」という自分の夢にも挑戦している郁也さん。ひとりひとりの「やりたいこと」を叶える「わらすばキッズ」には、たくさんの可能性が詰まっていました。

 

 

 

市原郁也さんが代表を務める団体:

NPO法人「わらすばキッズ」

 

 

 

 

岩手県北上市大堤南1-1-8

Tel/0197-62-8900

カフェ(2号棟):毎週水曜日14:30~16:30

 

「わらすばキッズ」のホームページはこちら