KITAKAMI NEWS

【20代の肖像】vol.70 「楽しさ」のその先に。 プロとして舞う北藤根鬼剣舞。

2025年12月26日

きたかみリズム×きたかみ仕事人図鑑

 

 

「楽しさ」のその先に。

プロとして舞う北藤根鬼剣舞。

 

 

vol.70

 

小原 健豊(おばら けんと)

27歳

青木 一生(おあき いっせい)

27歳

菅野 萌々(かんの もも)

25歳

髙橋 諒香(たかはし りょうか)

25歳

髙橋 依吹(たかはし いぶき)

21歳

菅野 天舞(かんの あむ)

 2歳

 

 

 

「世代の近さ」が魅力。ひろがる鬼剣舞の「楽しさ」。

 

 

11月23日(日)、北藤根公民館では消防訓練も兼ねた「収穫感謝祭・山の神講」が開催され、地域のヒトたちでにぎわっていました。その中に交じって楽しそうに祝杯をあげているのが、地域のみなさんの前で鬼剣舞を披露した北藤根鬼剣舞の20代の若手たちです。

 

 

そんなメンバーに、北藤根鬼剣舞の魅力を尋ねると……。

 

 

 

 

「北藤根鬼剣舞はみんなの年齢が近いので親しみやすいんですよ。こういう飲み会も多いですし、夏にはみんなでバーベキューなどをして楽しく活動ができています。そういうこともあって、団体の絆も強いと思います」(小原健豊さん)

 

 

「僕もみんなの年齢が近いというのが魅力だと思います。北藤根鬼剣舞は100年以上の歴史がありますが、メンバーが激減した22年前に再スタートしているので、上の世代がいないというハンデはあります。でもその分、メンバーの年齢が近いので日頃からみんな仲良く和気あいあいと活動ができています。それに僕は藤根出身ではないのですが、そんな僕でも受け入れてもらえて楽しく鬼剣舞が続けられるのも、北藤根のいいところだと思います」(青木一生さん)

 

 

▲北藤根公民館で行われた公演のスタートは「一番庭」。20代の若手たちも活躍。

 

 

「みんな仲がいいので楽しいっす!」(髙橋依吹さん)

 

 

「居心地がいいところです(笑)」(髙橋諒香さん)

 

 

「若いヒトが多いし、庭元や師匠も面白いので、すごく話しやすくて居心地がいいんですよね。話しやすすぎて、たまに怒られるんですけど。『ため口使うな』って(笑)」(菅野萌々さん)

 

 

「当たり前だろ(笑)」(一生さん)

 

 

仕事と鬼剣舞の活動を両立させるのは大変かと思いきや、20代のメンバーからは楽しく鬼剣舞に取り組めている様子がよく伝わってきます。その表情も、もれなく笑顔。

 

 

▲写真左上より時計回りで青木一生さん、髙橋諒香さん、髙橋依吹さん、小原健豊さん。

 

 

▲菅野萌々さんは、2歳の娘・天舞(あむ)ちゃんやご主人と参加。萌々さんは高校2年生のときにケガの影響で踊りから太鼓に移り、北藤根鬼剣舞に入ってからは笛を担当。鬼剣舞は特定の踊りを除けばひと通りできるそうで、天舞ちゃんも将来は……。

 

 

しかし、一生さんのコメントにもあった通り、20代の若手もイキイキと活動している現在の北藤根鬼剣舞も、22年前はメンバーが若い躍り手3人のみだったそう。通常、鬼剣舞を踊るためには躍り手8人、太鼓1人、手平鉦(てびらがね)1人、笛が2人と最低でも12人のメンバーが必要です。従って、踊り手3人しかいなかった北藤根鬼剣舞は、団体消滅の危機に直面していました。そこで立ち上がったのが……。

 

 

▲公演では両手に持ったお膳を落とさずに舞う「膳舞」、2人が宙返りなど曲芸的な技で魅せる「カニムクリ」も披露。

 

 

▲「収穫感謝祭・山の神講」が行われた北藤根公民館。鬼剣舞の公演を堪能した後は、みんなでお酒を飲みながら、地元の食材を使った芋の子汁に舌鼓。

 

 

「鬼剣舞」を一から学び、「踊り」と真摯に向き合う。

 

 

22年前、北藤根鬼剣舞の再興をめざして立ち上がったのが、残された若い躍り手の3人。再スタートのためにまず取り組んだのが、宗家である岩崎鬼剣舞のもとで作法や由来など文字通り一から踊りを学ぶことだったそう。北上市に古くから伝わる郷土芸能「鬼剣舞」と真摯に向き合い、北藤根鬼剣舞の歴史を再びつむいでいこうという強い決意が感じられるエピソードです。そして、その3人のうちの1人が、20代の若手メンバーから「庭元が面白い」と親しみを込めて言われている、現在の庭元・伊藤大輝さんです。

 

 

▲写真手前が北藤根鬼剣舞の庭元・伊藤大輝さん。現在は踊りを後進に託し、太鼓を担当。写真奥は阿部喜一郎会長。お子さんに付き添っているうちに、いつしか囃子方に。

 

 

「北藤根鬼剣舞で大切にしているのは、楽しい雰囲気づくりです。仕事をしながら鬼剣舞の技術も磨いて団体として観るヒトを感動させる踊りを披露し続けていくことは厳しいし大変ではあるけど、その先に“楽しさ”があれば続けられると思うんです。

 

 

そのために飲み会もよくやりますし、こうやって地域の行事にも積極的に参加して自分たちの踊りを地域のヒトたちにも観ていただいて応援してもらえるような機会をつくることも大事だと思っています。何より観るヒトに喜んでもらえることは、鬼剣舞を披露する自分たちもうれしいですし、やりがいになりますから」

 

 

伊藤庭元がそう語る通り、22年前に3人の若い踊り手たちで再スタートした北藤根鬼剣舞は、こうした地道な取り組みにより、現在では子どもを合わせて会員の数が約50人の大所帯に。そのなかで、20代の若手たちものびのびと鬼剣舞を続けています。

 

 

健豊さん、一生さん、萌々さん、諒香さんの4人は、県高等学校総合文化祭(高総文祭)の最優秀賞の常連校であり、過去には全国高総文祭の最優秀賞に輝いた歴史と伝統のある岩手県立北上翔南高等学校の鬼剣舞部出身でもあります。高校時代はさまざまな地域で公演をする機会があったそうですが、北藤根鬼剣舞で踊りを続けるうちに鬼剣舞の魅力に改めて気づいたそう。

 

 

▲地域のみなさんの前で公演を終えて記念撮影。

 

 

「北藤根鬼剣舞は、地域の方に観ていただく公演の開催もいち早く取り組んでいて、地域とのつながりを大事にしています。自分たちが鬼剣舞で地域を盛り上げたいという想いもありますが、地域のみなさんも鬼剣舞を大事に思ってくれているんだなと実感できるのは、鬼剣舞を踊り続けるやりがいにもなっています。

 

 

それに鬼剣舞が好きなヒトたちが集まっているので、そういう仲間とみんなで踊れるのが楽しいですし、その踊りを観てくれているみなさんに喜んでもらえていると思うと、さらにうれしくなります」(一生さん)

 

 

その言葉に、みなさん納得。一方、依吹さんは高校こそ違いますが……。

 

 

「自分はお母さんが北藤根鬼剣舞に入っていたので、小さい頃から鬼剣舞を見ていて、自分でもやってみたいと思ったのがきっかけです。鬼剣舞は見ているより、やっている方が楽しいんですよ(笑) 北藤根は親子で鬼剣舞をやっているヒトも多くて、親子で一緒に楽しみながら続けられるのも北藤根鬼剣舞の魅力だと思います」

 

 

北藤根鬼剣舞では、親がやっている姿を見て鬼剣舞をはじめる子どもがいるだけでなく、子どもの練習に付き添っているうちに笛や手平鉦をやりはじめ、いつしか公演に出演するほど夢中になる親も珍しくなく、それが会員が増えている理由のひとつにもなっているそう。

 

 

▲公演の最後は、北藤根鬼剣舞と子どもが主役の北藤根鬼っ子剣舞が合同で踊りを披露。

 

 

※北藤根鬼剣舞の庭元・伊藤大輝さんは、きたかみリズム「まちのインタビュー」にも登場!
記事はこちら

 

 

プロとして……。受け継がれる想い。

 

 

ずっと笑顔でインタビューに答えてくれていたみなさんも、「鬼剣舞を踊るうえで大切にしていることは?」と尋ねると、少し真面目に……。

 

 

「師匠がいつも言うんですよ。『俺らはプロだから』って……。それは、いつも意識しています。全国的にみれば、鬼剣舞をやっているヒトって本当に少ないんですけど、だからこそ、それを受け継いでいる自分たちが日頃から技術を磨いて、プライドを持って観るヒトに喜んでもらえる踊りを披露することが大事なんだと思います」(依吹さん)

 

 

「公演のたびにお金をいただいているので、それに恥じない踊りを、と思って取り組んでいます」(諒香さん)

 

 

「プロ」という言葉は、みなさんが口にしていました。「楽しさ」のその先で、伝統と一緒に大切な想いとプライドも受け継がれています。

 

 

▲鬼剣舞の魅力は「お面をつけて踊るので顔が見えないこと(笑)」と朗らかに語ってくれた諒香さんですが、お面の下も含めて、プロとして準備万端で舞台へ。

 

 

最後に今後の目標を尋ねると……。

 

 

「世代を代表するような踊り手になりたいですね。今の中心の世代というか、師匠たちが引退しても、ずっとずっと北藤根鬼剣舞の踊りを守っていくことが次の世代の、僕たちの役目だと思うので、師匠たちがやっている踊りを継承していくという、そういう踊りができたらと思います」(一生さん)

 

 

 

 

北上市内外で年間およそ30回の公演を行っている北藤根鬼剣舞。その活動の1年の幕明けを飾るのは、例年1月中旬に地元で開催される「藤根地区郷土芸能踊り初め会」(入場無料)です。2026年は1月18日(日)に開催されますが、鬼剣舞だけでなく神楽や田植踊、さんさ踊など地元・藤根地区に受け継がれる郷土芸能が一堂に会するだけでなく、県外からも民俗芸能団体を招き、盛大に行われます。

 

 

「今日の感謝祭もそうですけど、こうやって地域の行事に呼んでいただけるのも、地域のみなさんに愛されているからなのかなって思うんですよ。そういう意味でも1月の踊り初め会は、1年の最初にみなさんの前で踊りを披露する大切な場なので、みなさんに喜んでもらえるような踊りをしたいですし、鬼剣舞を通して地域を盛り上げるお手伝いができたら、自分たちもうれしいですね」(健豊さん)

 

 

仕事をしながら、プロとして技術を磨きあげ、地域で100年以上続く鬼剣舞を継承し続ける北藤根鬼剣舞。歴史と伝統を受け継ぐ厳しさと大変さのその先には「楽しさ」があり、地域のヒトをはじめ、観るヒトに喜んでもらおうと真摯に踊りに向き合う20代の姿が、そこにありました。そうした20代が笑顔で活躍する北藤根鬼剣舞は、2026年も観るヒトを感動させる踊りをたくさん観せてくれることでしょう。

 

 

▲2025年1月に開催された「藤根地区郷土芸能踊り初め会」の様子。

 

 

6人が所属する民俗芸能団体:

北藤根鬼剣舞保存会のインスタグラムはこちら

 

 

 

 

藤根地区郷土芸能踊り初め会(入場無料)

 

 

開催日時:2026年1月18日(日)10:00~14:30
会場:JAいわて花巻和賀町支店 2階大ホール(北上市和賀町藤根18-39-3)
参加団体:北藤根鬼剣舞、北藤根鬼っ子剣舞、下藤根さんさ踊、道地ひな子剣舞、長清水山伏神楽、中野田植踊
【特別出演】杜乃七頭舞(宮城県大和町)、飛勢太鼓(北上市二子)