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【20代の肖像】vol.62 温かみのある記事を。人間味のある記者へ。
温かみのある記事を。
人間味のある記者へ。
vol.62 森保 尚也(もりやす なおや) 24歳
「思っていたのと違う!」日々が学びに。
「いろんな世代の方とおしゃべりするのが好きなんです。例えば居酒屋に行って、カウンターに座っているおじいさんと仲良くなって、自分の知らないお話を聞いているときが楽しくて……。そういうことができそうな仕事って何だろう? と考えていて、気づいたら新聞記者になっていました(笑)」
そう語るのは、「岩手日報社 北上支局」の新聞記者として北上市・西和賀町をフィールドに地域のニュースを発信している森保尚也さんです。
森保さんは新聞記者となって2年目。「自分に向いている」と思って選んだ仕事ですが、最初の1年を振り返ると……。
「忘れもしません。新入社員研修が終わって5月20日、最初に配属されたのが県警記者クラブでした。日々、事件・事故を追いかけて取材をしていたのですが、気づいたら警察官の方と接することが多く、『いろんな世代の方の話を聞きたい』と思って新聞記者となった私としては、『思っていたのと違う!』と最初は思いました(笑)」
しかし、県警記者クラブで過ごした日々は、森保さんにとってかけがえのない時間となりました。
「事件や事故の現場に駆けつけたとき、自分が最初の情報発信者になるわけですが、そこで集めた情報が世の中に伝わっていくことを考えると、とても重要な役割を担っていると日々感じていました。
事件や事故の情報をキャッチしたらすぐ現場に行く。人に話を聞き必要な情報を確保する。正確な記事を世の中に届ける……。そういう記者の基本を叩き込んでもらえた4ヵ月間でした」
そう語ってくれた森保さんには、忘れられない出来事があります。
▲毎日2~3件取材をこなすため、取材の合間に記事の執筆も。
地域の中で積み重ねてきたものを受け継いで。
「豪雨災害の現場取材に応援で入ったことがあったのですが、私が現場に駆けつけたのは夜に大雨が降って一夜明けてすぐのときでした。そういうタイミングだったので、被害の状況も何もわからないまま現場を歩いていると、住民の方たちが土砂やがれきの撤去作業をされていて、大変な状況にもかかわらず、みなさんが私の質問にも丁寧に答えてくださいました。
その中には床上浸水の被害に遭われた方もいて、家の中が泥まみれになっていてそれどころではないと思うのですが、それでも私の質問に快く応じてくださって、『写真撮っていいよ。靴のまま中にあがっていいよ』とまでおっしゃってくださいました。
これは後でわかったことですが、その方のご親族が岩手日報と以前関わりが深かったそうで、『そのときお世話になったから、いいんだよ』と言っていただいたんです。このとき改めて人の有難さとか、人とのつながりの大切さとか、地域に寄り添ってニュースを届けてきた岩手日報が積み重ねてきたものとか、岩手日報が地域にとってどういう存在なのかというようなことを自分の肌で感じることができたんです。
これから新聞記者としてやっていくうえで、自分にとってすごく貴重な経験になりました」
そう語ってくれた森保さんですが、入社から半年。県警記者クラブに配属になって4ヵ月が経ち、「さあ、これから」と思った矢先、北上支局への異動が決定。2024年10月から北上市で暮らすことに……。
「『嘘だろう!?』と思いました(笑) 県警記者クラブの仕事にもあたふたすることなく取り組めるように、ようやくなってきたときだったので(笑) 異動は自分だけでなく、みんなも同じなので仕方がないことなのですが、もう少し経験を積みたいと思っていたときだったので心残りが正直ありました」
しかし一方で、「いろんな世代の人の話を聞くのが好き」で新聞記者になった森保さん。北上支局への異動は、地域のさまざまな人に会い、取材し、記事にまとめて発信する仕事で、それは森保さんが求めていた現場でもあります。きっとうれしいはずと思いきや……。
「不安しかなかったです(笑)」
▲新聞記者になってから写真を撮る楽しさにも目覚め、今年の2月にマイ・カメラを購入。このカメラで北上市民や西和賀町民のイキイキとした表情をパシャリ!
取材で出会うさまざまな出会いに刺激を受けて。
「いろんな世代の人の話を聞くのが好きだったので、そういうことができる現場に配属されたことは、もちろんうれしかったです。ただ、その反面、岩手日報に入社して最初に配属されたのが、事件や事故を追う県警記者クラブの仕事でした。しかも、自分はまだ入社1年目の新人だったので小さな記事が中心で、正確な情報を端的に短い文章でまとめる仕事を一生懸命やっていたんです。
でも支局への配属になると、地域のイベントの紹介や人に密着した記事などさまざまな切り口で取材し、記事をまとめていかないといけません。しかも、北上市は工業が盛んな街で新聞を見ていても話題が豊富なイメージがありました。『そんなところで、新聞記者としての経験も浅い自分がやっていけるのか?』と考えると、最初は不安しかなかったです(笑)」
そう語ってくれた森保さんですが、北上市で暮らし、新聞記者として忙しい日々を過ごして半年が経った現在の心境は……。
「それこそ最初の頃は上司にいろんなアドバイスをもらい、なんとかカタチにしてという日々を繰り返していたら、あっという間に半年が経っていました(笑)
最初は不安でしたが、取材させていただいた方の記事が掲載されると、反響がすごくて……。次の日にすぐ電話がかかってきて『ありがとうございました』という感謝の言葉をいろいろな方からいただくと、やっぱりうれしいですし、今ではもっともっといい記事を書きたいという想いが強くなりました」
森保さんを前向きな気持ちにさせてくれるのは、取材先で出会うさまざまな人たちだそう。
「北上市に来て思ったのは、町おこしイベントでも鬼剣舞でもスポーツでもそうなんですが、さまざまな分野で熱意を持って何かに取り組んでいる方が多いということです。しかも、そういう人たちがまだまだ地域にたくさんいらっしゃるんだろうなと感じていて、そういう人たちに寄り添った記事を書いて世の中に発信していくことが私の仕事だと思うと、やりがいも大きいです」
そんな森保さんに、将来どんな新聞記者になりたいかと尋ねると……。
「新聞を読んでいると、人間味のある記事ってあるんですよね。『この記事は絶対この人が書いたな』とわかるような記事もそうですし、この一文を入れたことによって『取材相手の人間性がより深く伝わってくるなあ』と感じる記事もそうですし……。
岩手日報の先輩方にはそういう文章を書かれる方が多くいらっしゃって、私もそういう人間味のある記事が書ける新聞記者になりたいと思っています」
北上市に来て半年、新聞記者となって2年目を迎えた森保さんは大きな目標に向かって、愛用のカメラを片手に今日も取材現場に向かいます。
▲料理づくりが趣味の森保さん。休みの日は手作り料理をつまみにお酒を飲みながらのんびり過ごす時間が楽しいそう。今後は北上市の食材を使った料理にも挑戦!
▲高校・大学時代は弓道に夢中。写真は高校時代の森保さん。今年(2025年)の4月に柔剣道場と弓道場を備えた北上市民武道館がオープンし、森保さんもわくわく!
森保尚也さんの職場:
株式会社 岩手日報社 北上支局のホームページはこちら
岩手県北上市大通り2-3-3
Tel/0197-63-4265