KITAKAMI NEWS

【20代の肖像】vol.8 何でもできる職人に。「溶接」と出会ってひろがる夢。

2020年11月30日

きたかみリズム×きたかみ仕事人図鑑

 

何でもできる職人に。
「溶接」と出会ってひろがる夢。

 

~木村 世菜(きむら せな) 24歳~

 

 

早く就職したい。とりあえず選んだ職場で運命の出会い。

 

 

「『女子だから、ここまででいいよ』というような扱いは好きじゃない。女子とか男子とかに関係なく、任された仕事は自分できっちりとやりたいんです」

 

 

 

 

力強くそう語るのは、1971(昭和46)年の創業以来、すぐれた溶接技術で工業都市として発展を遂げる北上市のものづくりを支える「富士善工業株式会社」の溶接工・木村世菜さんです。

 

 

 

 

 

 

現在24歳の世菜さんが同社に入社したのは2年前。地元の高校を卒業した世菜さんは専門学校でパソコンの技術を身につけ、一度はOLとして別の会社に勤めますが、理由あって1年半ほどで退社。

 

 

その後、次の職場を探しているとき、「富士善工業」で働いているおじさんから「うちでも求人しているよ」という情報を得て、面接を受けたところ合格。

 

 

「ものづくりには全然興味がなかったんですよ。でも、早く就職したくて面接を受けたんですけど、働くとしても品質検査のような仕事だろうと思っていました」

 

 

しかし、そんな予想は、いい意味で裏切られます。「まずは経験」ということで、会社は新入社員の世菜さんに溶接の仕事を体験させてみることに。すると、そこで運命の出会いが……。

 

 

 

▲世菜さんが働く「富士善工業株式会社」は、すぐれた溶接技術をベースにお客さまの要望をカタチにする「現代の鍛冶屋」として北上市で50年の歴史を刻んでいます。

 

 

 

 

日々、成長を実感。気づけば「溶接」のトリコに。

 

 

「もちろん溶接なんて、そのときが初めての体験だったんですが、やってみたら『溶接がキレイだね。才能がある!』と言われて……」

 

 

 

 

楽しそうに当時を振り返る世菜さん。気がつけば、どんどん溶接の仕事にのめり込むように。最初は怖かった飛び散る火花も、現在は溶接の仕事用に丈夫につくられた作業着に穴があくのもお構いなく、火花と向き合う日々。

 

 

 

 

そんな世菜さんが現在担当している仕事が、これからのシーズンに大活躍する「除雪機」の組み立て。

 

 

▲世菜さんが担当している「除雪機」。トラクターなどの前に取り付けて使用します。

 

 

溶接作業をする世菜さんの背後には、組み立て前の「除雪機」の部品がズラリと並んでいます。「溶接」というと、金属などの部材と部材を接合して製品に仕上げる仕事というイメージですが、「富士善工業」では板状の部材を図面通りに「曲げる」「折る」「穴をあける」といった作業も溶接工の仕事。もちろん、世菜さんもそれらすべてを一人でこなしています。

 

 

 

▲溶接作業をする世菜さん。背後には組み立て前の「除雪機」の部品がズラリ。

 

 

「『溶接がキレイ』というのはもちろんですが、『段取りがいい』とか『穴あけが早い』『仕事が早い』と褒められるとすごくうれしいですし、もっとがんばろうという気になります」

 

 

そう言って照れ笑いを浮かべる世菜さん。やればやるほど自分の成長を実感できる「溶接」という仕事の奥深さと、男子女子に関係なく評価してもらえる職場の環境が、世菜さんのやりがいにつながっていました。

 

 

早く就職したくて、とりあえず選んだ職場のはずが、気がつけば「溶接」のトリコに。それどころか、『女子だから、ここまででいいよ』というような扱いは好きじゃない」と語るほど、プライドを持って仕事に励んでいる世菜さんは今、ものづくりの楽しさと出会い、充実した日々を過ごしています。

 

 

 

▲撮影時、世菜さんが行っていた作業は、除雪機のチェーンベルトのカバー部分の溶接。上段右がその部品で、図面通りに「曲げる」「折る」「穴をあける」という作業を経た各部品を溶接して(下段左→右)カバーに仕上げます。こうした作業を繰り返して、1台の「除雪機」が完成。それを世菜さんは、すべて一人でこなしています。

 

 

 

何でもできる先輩たちがお手本。いつか私も……。

 

 

世菜さんが働く「富士善工業」の従業員は、およそ90名。職場は本社工場と南工場の2カ所あり、世菜さんが勤務する南工場の現場には現在27名が在籍。そのほとんどが経験豊富な職人たちで、そのうち女性は3名のみ。となると、24歳の世菜さんはかなり若く、周囲からも浮いてしまいそうですが……。

 

 

しかし、そうした環境も全然苦にならないと世菜さん。誰とでも気軽に話せる明るいご本人の性格と、「女子だから」という余計な気遣いもなく一人の職人として接してくれる社風のお陰で、世菜さんも楽しく仕事に打ち込めているとのこと。

 

 

そんな世菜さんに「富士善工業」の強みを伺うと、「自分たちで何でもできること」だと即答。同社では現在、工場のレイアウト変更を行っていますが、専門の業者に頼ることもなく、設備の解体はもちろん必要な設備も自分たちでつくり、設置もお手の物。そうやって「自分たちで何でもできる」先輩たちの頼もしい背中をお手本に、世菜さんは今日もものづくりに励んでいます。

 

 

そんな世菜さんの現在の目標は、図面も書ける溶接工。現在はお客さまから「これをつくってほしい」と渡された図面をもとに製品をつくっていますが、いずれは図面を書くところから、ものづくりに関わっていきたいそう。

 

 

2年前までものづくりには興味もなかった世菜さんですが、「溶接」の仕事と出会い、「何でもできる」先輩たちの背中を見て、今はその可能性に誰よりもワクワクしています。

 

▲世菜さんが働く職場の先輩たちと。ちなみに、向かって写真右が世菜さんのおじさん。仕事の相談も気軽にできる頼もしい存在です。

 

 

▲世菜さんの趣味は「ネイル」。以前はネイルサロンに通っていたそうですが、ある日、毎月それにかける金額を計算してみたらビックリ! 「自分でやった方が経済的」と考えたしっかり者の世菜さん。現在ではお母さんやお姉さんにもしてあげるほどの腕前に。

 

 

▲世菜さんのワークスタイル。華奢に見えますが、24歳の現在も身長が伸びているのが自慢。2年前の入社時156cmだった身長はもうすぐ157cmを突破。夢も身長もスクスク成長中です!

 

 

 

 

 

 

 

 

木村 世菜さんが働く職場:富士善工業株式会社 南工場

 

岩手県北上市相去町大松沢1-87(北上南部工業団地内)
Tel/0197-62-3090

本社:岩手県北上市鬼柳町下川原145
Tel/0197-67-2311