
KITAKAMI NEWS
【20代の肖像】vol.61 北上での「学び」を いつかミャンマーへ。
北上での「学び」を
いつかミャンマーへ。
vol.61 ミン・ソ・ピエ・ウー 21歳
「海賊王」に憧れて、日本へ。
「子どものときから日本のアニメを見ていたので、いつか日本に行って日本人といっしょに働きたいと思っていました」
そう語るのは、北上市を拠点に設備工事業を展開する「内田工事株式会社」で働きながら、配管と溶接の技術を学んでいるミン・ソ・ピエ・ウーさんです。
ミンさんは外国人技能実習生として2023年8月に北上市にやってきました。最初は不安だったそうですが……。
「みなさん、やさしく迎えてくれたので、うれしかったです」
笑顔でそう語るミンさんですが、内田工事の佐藤代表は当時を振り返って……。
「歓迎会でカラオケもやったんですが、ミン君が『ドラゴンボール』や『ONE PIECE』のアニメの主題歌をいきなり日本語で歌ったんですよ。いやあ、盛り上がりました(笑)」
▲ミンさんが働く内田工事の佐藤代表と。
子どもの頃から日本のアニメが大好きだったミンさんは、日本のアニメの主題歌を聞きながら日本語にも馴染んだそう。来日するにあたってはミャンマーで5ヵ月間日本語の話し方や書き方も学んでいたため、日本に来たときも片言ながらカンタンな日常会話はできました。
しかし、ミンさんが働く内田工事は高度な専門知識と施工技術をバックボーンにした設備工事業で信頼と実績を積み重ね、お客さまは岩手県内はもちろん東北エリアへとひろがっている会社です。そんな同社でミンさんは配管や溶接の技術を学んでいますが、自分で選んだ職業とはいえミャンマーでの経験もなく、難しい専門用語もあり、慣れるまでは苦労したそう。
「事務員さんたちも、いっしょに仕事をしている現場の人たちもやさしく教えてくれるので、自分もみなさんのチカラになりたいと思ってがんばってきました」
そう語るミンさんは昨年(2024年)4月から、働きながら北上高等職業訓練校にも週一(2年制)で通い、配管の専門技術を身につけるべく勉強に励んでいます。海外出身の入校生は同校初とのことですが、ミャンマーから日本に来て働きながら職業訓練校にも通う日々をミンさんはどう感じているのでしょうか。
▲北上高等職業訓練校の様子。ミャンマーからいっしょに内田工事にやってきたアウンさんと2人で2年間学ぶ。
▲ミンさんが週一で通う北上高等職業訓練校。
「技術」はもちろん「安全」もミャンマーへ。
「手動ねじ切りとか、ミャンマーでは全然見たこともないような道具も使えるので、とても勉強になります。今は技能検定2級の合格をめざして、給水配管をつくる課題に取り組んでいます。最初はすごく難しい技術もあったのですが、先生のお陰でできるようになりました」
新しい道具や機械の使い方はもちろん、難しい技術についても経験豊富な先生が丁寧に教えてくれるとあって、北上高等職業訓練校での学びの時間がミンさんも「楽しい」そう。海外の方が見ることを想定していないため、図面には難しい漢字もあり、ミンさんには読めないこともあるそうですが、「わからない漢字は調べたり、先生に聞いたりすればわかるので大丈夫です」と笑顔を浮かべます。
▲配管の「技能検定2級」の合格をめざして勉強中のミンさん。
▲ミンさんが使用している図面は、日本人と同じ。
また、溶接の仕事も間近で見て「面白い」と思ったそう。
「溶接はいつかミャンマーに帰ったときにも役立つ技術だと思いました。会社では仕事以外の空いた時間に溶接の練習も自由にさせてもらえるので、練習もがんばってもっとうまくできるようになりたいです」と前向きな言葉が続きます。しかし内田工事で働きながら学びも深めるなかで、一番印象的だったのは……。
「みんなが安全に働けるように、朝の朝礼からきちんと声を掛け合って取り組んでいるところです。
ミャンマーだと、例えば溶接をするときにマスクをしなかったり、グラインダー(研削を行う工具)をかけるときも保護メガネをしなかったりするのですが、内田工事に来てそれが危ないことだと初めて気づきました。
それくらいミャンマーでは安全に対する取り組みも遅れているので、いつかミャンマーに帰ったら技術のことだけでなく、内田工事で学んだ安全に対する考え方もひろげていけたらいいなと思います」
日本で働きながら多くのことを学んでいるミンさんですが、日本での暮らしはどう感じているのでしょうか。
▲溶接の練習をしているミンさん。
家族に仕送りしながら、自分の夢も。
「働きながら訓練校に通わせてもらっているのは恵まれていることだと思いますし、毎日の仕事も楽しいことが多いです。そうやって働きながらミャンマーにいる家族にも仕送りができるのは、とてもうれしいです。
それに私は子どもの頃カメラマンになりたかったのですが、自分の趣味のためにカメラを買ったり、自分で日本語を勉強するためにパソコンも買ったりできるようになりました。ミャンマーでは、建設作業をやっている人はそれだけでは生活できません。自分のためにカメラやパソコンを買うなんて、もっとできません。だからがんばって働いて家族に仕送りして、お金を貯めて自分のためのモノも買えることができるのは、うれしいですし楽しいです」
日本での暮らしについて、そう語るミンさんですが、休みの日は昨年ついに購入できた愛用のカメラで、日本で気になるモノや風景などを撮影しているそう。
「私が撮るのは、信号機とか道路標識とかバスや新幹線、雪などです。ミャンマーでは見られないモノや風景を撮ってミャンマーの家族や友達に見せると、みんな面白がってくれます。
今年、楽しみにしているのが展勝地の桜です。昨年初めて見て、ピンク色の風景がキレイでびっくりしました。昨年はまだカメラを持っていなかったので桜は撮っていないですが、今年は自分のカメラで展勝地の桜を撮って、ミャンマーのみんなに見せてあげたいです」
▲ミンさんのお気に入りの写真。今年は展勝地の桜も撮りたいそう。
内戦が続くミャンマーで暮らす家族も、ミンさんが日本で暮らしていることで安心しているそう。だからこそ、そんな家族がいる母国にいつか貢献するために、配管や溶接の技術を一生懸命に学んで「技術をしっかり身につけて、いつかミャンマーに自分の工場を持ちたい」と将来の夢を語ります。
そんなミンさんを、内田工事の佐藤代表も応援しています。
「ミン君やいっしょにミャンマーから来たアウン君もそうですが、内田工事でしっかりとした技術を身につけて、ミャンマーに帰ったら設備工事のトップランナーとして活躍してほしいと思っています」とのこと。
そんな佐藤代表のもとで働きながら学びを深めるミンさんですが、日々仕事をするうえで大切にしているのが……。
「仕事はチームでやるので、チーム内での円滑なコミュニケーションを大切にしています。『ONE PIECE』もキャプテン(船長)の下で仲間たちがチームプレーで活躍します。そういうのに憧れて、日本人といっしょに働きたいと思って日本に来たのでコミュニケーションを大切にしています(笑)」
笑顔で語るミンさん。「円滑な」という言葉も飛び出してビックリしましたが、それくらい日本語にも慣れてきた様子。佐藤代表は「ルフィーです(笑)」と言って私たちを笑わせるなど、日頃から大切にしているコミュニケーションスキルにも磨きをかけ、北上市で夢を追いかけるミンさんです。
▲内田工事で配管や溶接の技術を学ぶと同時に、安全に対する意識や取り組みも学び、いつかミャンマーへ。
ミン・ソ・ピエ・ウーさんが働く会社:
内田工事株式会社のホームページはこちら
岩手県北上市孫屋敷13-11
Tel/0197-64-7213