KITAKAMI NEWS

【20代の肖像】vol.7 今までにない鉄器を。 最後の仕上げに想いを込めて。

2020年10月8日

きたかみリズム×きたかみ仕事人図鑑

 

今までにない鉄器を。
最後の仕上げに想いを込めて。

 

~森田 晃次(もりた こうじ 24歳)~

 

 

ひとつひとつに、お客さまの姿を思い浮かべて。

 

 

森田晃次さんが任されている仕事は、岩鉄鉄器の最後の仕上げ。製品の加工時に発生する不要な出っ張りなどを研磨し、なめらかにする「バリ取り」という作業です。

 

 

 

「バリ取りの作業はロボットで行うなど自動化が進んではいますが、鋳物でつくる岩鉄鉄器は製品ごとに表情が違います。

 

それにひとつひとつ微妙にカタチも違っていて、ロボットだけでは絶対に削り切れない部分がどうしても出てくるんですよ。

 

ですから、手間はかかってもやっぱり最後はヒトの手で、製品ひとつひとつの個性に合わせて仕上げていくことが大切です」

 

 

 

そう語る森田さんが作業中にいつもイメージするのが、岩鉄鉄器を使って料理をしているお客さまの姿。

 

「『ここにバリが立っていたら、ケガしちゃわないかなあ』とか、そういうことをいつも想像しながら最後の仕上げ作業を行っています。

 

私たちがつくっている岩鉄鉄器は、『今までにない新時代の鉄器をつくろう』が合い言葉。品質に迷ったときは、お客さまが使っている様子を想像しながら、『これが新時代の鉄器と呼ぶにふさわしいものなのか』といつも自分に問いかけて仕事をしています」

 

そう言って森田さんは胸を張ります。

 

 

▲森田さんが最後の仕上げを担当している岩鉄鉄器は、北上市の「ふるさと納税」でも人気。その機能性とデザイン性が高く評価され、JETRO(日本貿易振興機構)が次世代のものづくりを担う匠(たくみ)企業を選定する「TAKUMI NEXT 2020」にも選定。日本全国121社のなかに岩手県で唯一選ばれた「岩手製鉄」の岩鉄鉄器は、今後JETROの支援を受けて海外へ。

 

 

23歳で職長に。仕事への責任とものづくりの誇りを胸に。

 

 

そんな森田さんにとって「仕事のやりがいは?」と伺うと、「お客さまの声」だそう。

 

 

▲森田さんが働いている工場は、鉄とともに歩んできた長い歴史が刻まれています。

 

 

岩鉄鉄器は鉄とともに70年以上の歴史を刻む「岩手製鉄」が新時代の鉄器をつくろうと、2016(平成28)年から開発をスタート。実に3年を超える歳月と、1,000回以上のトライ&エラーを繰り返して完成させたこだわりの逸品。その鉄器は従来品に比べて約半分の「薄さ・軽さ」、さらに「錆びにくい」「焦げつきにくい」を実現しており、今までにない画期的な鉄器としてお客さまから高い評価を得ています。

 

 

 

しかも、そうした評価はSNSを通じて森田さんにも……。

 

「『褒められていたよ』と言って上司がSNSのコメントをプリントアウトして持ってきてくれるんですよ。それに、自分でもエゴサーチしますし(笑)

 

やっぱり岩鉄鉄器がお客さまから喜ばれているということがわかるとうれしいですし、何より私たちがつくっている製品の品質に間違いがないという自信にもなります」

 

そう言って笑顔を浮かべる森田さん。仕事も順調そうに見えますが……。

 

 

 

「今でこそ慣れてきましたが、最初は本当に大変でした。

 

私は1年前から岩鉄鉄器の最後の仕上げの工程の職長(現場のリーダー)を任されているんですが、現場で一緒に作業する方たちは多いときでは10人もいて、しかも私より年上の方がほとんど。

 

現場全体を把握しながら、そういう方たちにどのように指示を出したら作業が円滑に回るのか……。学生時代もヒトに指示を出すという経験がなかったので、コミュニケーションの取り方や気の配り方など、とまどうことばかりでした」

 

そんな森田さんを支えてくれたのは……。

 

 

▲「仕上げのやり方も決まっているのではなく、完成品だけ渡されて、あとは任せてもらえるので、上司と相談しながら自分なりに工夫して仕上げ作業ができるところがこの仕事の面白さ」という森田さん。それだけに、「自分の思い通りに製品を仕上げられたときはすごくうれしい」そう。

 

 

若手が活躍できる環境がやりがいに。疲れを癒すパートナーも。

 

 

「私が岩手製鉄に入社しようと思ったのは、若いヒトが活躍している会社だという印象が強かったからなんですが、実際に入ってみると本当にそうなんですよ。

 

私のような若手の意見もどんどん受け入れてくれますし、重要な仕事もどんどん任せてもらえます。ですから、私が職長になって指示の出し方とか周りへの気の配り方で悩んだときも、やっぱり私の周りには私と同じような経験をした若い先輩たちがいて、そういう方たちのアドバイスには本当に助けられました」

 

 

 

そんな森田さんの相談によく乗っていたのが、上司でもある西塚徹さん。西塚さんは「岩手製鉄」に入社して7年目ですが、岩鉄鉄器を手掛ける鉄器事業グループのリーダーでもあります。

 

さて、西塚さんから見て森田さんは……。

 

「森田の現場には60歳を超えた方もいて、いろんな世代のヒトと仕事をすること自体も初めてだったでしょうし、最初は苦労していましたね。

 

でも、最近はそういう部分にも慣れて、ヒトとの接し方も含めて『何をどう伝えるか』という部分の大切なポイントもわかってきたみたいで、私も安心して現場を任せています」(西塚さん)

 

入社3年目、24歳という若さで岩鉄鉄器の最後の仕上げを任せられている森田さんですが、その後ろには頼もしい先輩たちのあたたかな眼差しがありました。

 

 

 

さて、バリバリ仕事をこなし、充実した日々を過ごしている森田さんをあたたかく見守ってくれているパートナーが自宅にも……。

 

「インドネシアのヘビなんですが、キレイでしょ! 見ているだけで癒されるんですよね」と森田さん。ブラッドパイソンという種類のそのヘビは体長1.5m、太さはなんと10cm。最大2mまで成長するため、休みの日にはさらに大きなゲージを手づくりしようと、自ら図面を引いてアレコレ試案して楽しんでいるそう。

 

仕事もプライベートも、好きなものづくりに夢中な森田さん。これからは海外展開も視野に入れている「岩手製鉄」で、森田さんのような若い感性がさらに躍動してくれることでしょう。今後の活躍が楽しみです。

 

 

▲子どもの頃は恐竜博士になるのが夢だったという森田さんは動物好き。なかでも爬虫類が大好きで、こちらのヘビは専門学生の頃に飼いはじめ、毎日眺めては癒されているそう。

 

▲最後に見せてもらったのが森田さんの仕事道具と、その手。ですが、なんと森田さんの手のひらには、力強く横断する運命腺が……。織田信長、豊臣秀吉、徳川家康にもあったとされる「天下取りの手相」で、100万人に1人とも言われる「ますかけ腺」が。将来が楽しみです!

 

 

●岩鉄鉄器「ダクタイルパン」が「2020年度グッドデザイン賞」受賞!
「錆びにくく、手入れが簡単で、薄くて軽い、扱いやすいを実現」したデザインが評価されての栄誉です。詳細は、こちら!

 

 

 

森田 晃次さんが働く職場:岩手製鉄株式会社

岩手県北上市和賀町藤根18-14
Tel/0197-73-5121

◇「岩手製鉄株式会社」については、「きたかみ仕事人図鑑」でもご紹介しています。詳細は、こちら!