
KITAKAMI NEWS
【20代の肖像】vol.60 運転がもっと好きに。 運転をもっと上手に。
運転がもっと好きに。
運転をもっと上手に。
vol.60 阿部 豪(あべ ごう) 27歳
体調を崩して退職。「運転が好き」に背中を押されて。
「学生時代に設計の勉強をしていたので、工場で事務と設計の仕事をしていたのですが、仕事がハードで体調を崩してしまったんです。それで退職したのですが、次の職場でもなかなか体調が戻らなくて……。
結局その会社も退職してしばらく休むことにしたのですが、家にいてもなんか落ち着かなくて……。それでクルマに乗って出かけてみたら、なんか落ち着くんですよ。どこかを観光するとか、おいしいものを食べに行くとか、そういうことはどうでもよくて……。もちろん、行った先で興味がわけば観光してみたり、お腹が空いたら『おいしいものを食べよう』とは思うんですけど(笑) 目的はそれじゃないんですよね」
当時を振り返って「働くことに自信をなくしていた」と語ってくれた阿部 豪さんは、しかしクルマでアチコチとドライブしているうちに「自分はクルマの運転が好きなんだ」と気づき、いつしか「タクシー会社で働いてみたい」と思うようになったそう。
とはいえ、「どのタクシー会社がいいか」なんて検討もつかない豪さんは、ハローワークで“たまたま”目にした会社の面接を受け、とんとん拍子で入社が決定。「平和タクシー・安全タクシー」という会社でタクシードライバーとして働くことになったのが昨年(2024年)10月のことでした。
豪さんが働く同社は1953年に「平和タクシー」として創業。その後、1979年にグループ会社として「安全タクシー」を設立し、県内で最初に「介護タクシー」に取り組むなど地域とお客さまに寄り添うサービスを大切に発展してきました。現在は創業者の孫となる若い姉妹が2人で協力し合いながら会社を運営。自社提供では県内初として、2024年春からスマートフォンを使ったアプリ配車サービスの運用も開始するなど、新しい取り組みにも積極的にチャレンジしています。
この若い会社の雰囲気が、豪さんにはピッタリだったそう。
「選んだのは“たまたま”だったんですけど(笑)、この会社で働けて自分は本当にラッキーだと思いました。みなさんすごく明るくて親切ですし、自分のことも何かと気にかけてもらえるので楽しく仕事ができています」
と笑顔で語る豪さんは男3人兄弟の末っ子。兄や姉のような30代の先輩も多く、その関係性にも恵まれ、働きやすいそう。とはいえ、タクシードライバーの仕事は未経験。慣れないことが多く、最初の頃は……。
▲出発前の点検。いつも安全第一でお客さまを目的地へ。
「接客」の経験を糧にお客さまに寄り添う。
学生時代はジーンズをメインにしたカジュアルウェアを販売するお店で3年ほど「接客」の仕事をしていた豪さんだけに、接客の仕事は「好き」だそう。しかし、タクシードライバーとしての「接客」は初めての経験でした。
「タクシードライバーは基本的に車内にいますよね。でも、お客さまは乗車される前は外にいらっしゃるので、声を張らないとお客さまに僕の声が聞こえないんじゃないかと思ったんです。ですから、『平和タクシーです!』と声を張って元気に挨拶したら、『声大きいね』とお客さまにビックリされて(笑)
お客さまを驚かせてしまったのは申し訳ないと思ったんですけど、でもそういう反応をしていただいて、そこから会話も生まれて僕としてはうれしかったです(笑)」
と笑顔で語る豪さん。このときはお客さまに寄り添う気持ちが空回りして驚かせてしまいましたが、カジュアルウェアのお店で働いていた当時は、お客さまとコミュニケーションを取りながら相手の好みを理解し、「きっとこういう服が好きなんだろうな」と思って提案したものがお客さまの好みに合って喜んでもらえると「うれしかった」そう。そのエピソードからは、お客さまに寄り添って接客していた経験を活かし、タクシードライバーの仕事を楽しみながら一生懸命に取り組んでいる様子が伝わってきます。
さて、「クルマの運転が好き」という気持ちに背中を押されてタクシードライバーとなった豪さんですが、お客さまを乗せて安全に目的地までお連れする「運転」については、どう感じているのでしょう?
「雨の日や雪の日は路面反射で目が疲れますし、ブレーキを何度も踏むので足も疲れますし……、実際に運転してみてわかったのですが、本当にいろいろな疲れがあってビックリしました(笑)
でも、お客さまを乗せて運転していると、段差があるところでは速度を落としたりして、お客さまに快適に乗ってもらえるように工夫して運転するのが楽しいんですよ(笑) 今では運転することがもっと好きになりましたし、お客さまに快適に乗っていただくために、いろいろな運転の仕方や技術を学んで、もっと上手くなりたいと思っています」
と元気に答えてくれました。とはいえ、体調を崩して休んでいたこともあり、現在は朝8時から午後1時までで週4日の勤務にしてもらっているそう。
「まずは短い時間から経験を積んで、様子を見ながら働く時間を延ばしていこうということで、会社の理解も得られています。そういう働き方にも柔軟に対応してらえるので、体調面でも安心して働けています」
笑顔で語る豪さんでした。
▲体調に不安のあった豪さんですが、世間話のついでに気軽に相談もできる環境があるため、無理のない働き方ができているそう。
「発見」が「運転」の楽しさをひろげる。
「タクシードライバーの魅力は、自分が知らなかった道を走れたり、プライベートでは行かないような場所に行けたりすることです。行先はお客さま次第なので、『こんなところがあったんだ!』という発見があって面白いです」
そう語ってくれた豪さんは花巻市出身だけに、余計に北上市を走っていると「発見」も多く、タクシードライバーの仕事がさらに好きになったそう。
そんな豪さんに、タクシードライバーになって「発見」したおすすめのお店を尋ねると……。
「夏油高原の入り口にある『神楽屋(かぐらや)』さんです。打ちたての蕎麦が本当においしくて、おすすめのお店です」
同店は、夏油高原近辺で栽培される北上産の玄そばを使用。自家製粉・石臼挽きのこだわりの手打ち蕎麦が人気のお店で、いつも混んでいるため、豪さんは開店間際の早めの時間を狙って食べに行っているそう。
「クルマの運転が好き」という気持ちに背中を押されて、タクシードライバーの世界に飛び込んだ豪さんですが、さまざまな経験を積み重ねながら「運転が好き」の気持ちをさらにひろげています。お客さまを目的地まで快適に運ぶタクシードライバーとして、運転をもっと上手に……。新たな目標に向かって、一歩ずつ歩む豪さんです。
▲豪さんおすすめの蕎麦屋「神楽屋」は、夏油高原の入り口にあり、鬼をテーマにした博物館「北上市立鬼の館」の目の前に
阿部 豪さんが勤務するタクシー会社:
平和タクシー・安全タクシーのホームページはこちら
岩手県北上市本通り2-3-30
Tel/0197-64-1234(平和タクシー)
Tel/0197-65-4321(安全タクシー)