KITAKAMI NEWS

【20代の肖像】vol.59 赤ちゃんが持つ 「生まれる力」に導かれて。

2025年1月30日

きたかみリズム×きたかみ仕事人図鑑

 

赤ちゃんが持つ

「生まれる力」に導かれて。

 

vol.59 小野寺 若菜(おのでら わかな) 25歳

 

 

 

大学で運命の出会い。看護師から助産師へ。

 

「出産って、お母さんだけががんばって赤ちゃんを“産む”のだと思っていたんです。でも、赤ちゃんも“生まれる力”を持っていて、お母さんと一緒にがんばって生まれてくるという話を大学の先生から聞いて、すごく感動したんです」

 

 

 

 

そう語るのは、北上済生会病院で助産師として働く小野寺若菜さんです。若菜さんは大学の先生のその講義がきっかけで、看護師から助産師になろうと決意したそう。

 

ちなみに助産師になるには、「看護師」と「助産師」のダブルライセンスを取得する必要がありますが、若菜さんはその講義がきっかけで大学時代に看護師と助産師の資格を取得し、大学卒業と同時に助産師として北上済生会病院に入職したのが3年前。

 

 

▲北上地域の中核病院として地域医療を支える北上済生会病院。

 

 

「助産師の国家資格を取得するためには、10例の分娩介助実習が必要になるのですが、その実習をさせていただいたのが北上済生会病院でした。そのとき実習に参加した学生は私ひとりだけで心細かったのと、私としては実習がすごく大変で……。

 

自分が考えている分娩介助が思うようにできなかったり、先輩たちのように上手に分娩介助ができなかったりして、それが自分のなかですごく大きな壁でした。でも、周りの先輩たちがすごくやさしくて、それに支えられて8週間の実習も乗り切ることができました」

 

そのなかで若菜さんが印象的だったのが、分娩介助実習のあとの振り返りの時間。

 

「分娩介助の実習のあとに、私といっしょに分娩介助に入ってくださった先輩と今回の反省点や次回に向けての改善点などを話し合うんです。そのときに分娩介助で私ができなかったことを頭ごなしに叱るのではなく、私の話を聞いたうえで次にどうすればいいか、私の目線でいっしょに考えてくださったり、次に活かせるアドバイスをしてくださったり……。そのお陰ですごく前向きに実習に取り組むことができました」

 

 

▲妊婦さんとパートナーさんに病院内の施設を案内する若菜さん。

 

 

そうした経験から、就職先選びにも迷いはなかったそう。

 

「就職活動はこの病院一択でした(笑) やっぱり実習で自分が成長できたと感じていましたし、大きな病院で経験を積みたいという想いもありました。

 

北上済生会病院は周産期センター(地域周産期母子医療センター)としてリスクの高い妊婦さんの受け入れや帝王切開もできますし、早く生まれたり小さく生まれたりした赤ちゃんのためのお部屋(NICU:新生児集中治療室)もあります。

 

リスクの高い妊婦さんは地域では産めないので、そうした方たちも受け入れる病院で妊婦さんたちが安心して出産できるようにお手伝いすることで幅広く地域に貢献したいと思って北上済生会病院で働きたいと思ったんです」

 

そう語ってくれた若菜さんですが、憧れの助産師として働いてもうすぐ3年。その日々を振り返ると……。

 

※地域周産期母子医療センター: 産科・小児科(新生児)を備え、24時間体制で周産期(妊娠22週から出生後7日未満まで)における高度な医療行為を担う、周辺地域の中核となる医療機関。

 

日々、成長を実感。先輩と同期に感謝。

 

「切迫早産」「出血が多い」「赤ちゃんが大きすぎて出てこない」「胎盤がはがれてこない」などなど、リスクの高いお産にも多く携わってきた若菜さん。

 

そこで感じているのは、「慣れてはいけない」ということだそう。

 

「もちろん、対応の順番ややり方などは慣れていかなければいけないんですけど、気持ちの部分で慣れてしまっては小さな所見を見逃してしまいそうで……。

 

それに今でもお産の技術のことで悩むことがよくあるのですが、そんなときは先輩に相談して、自分のやり方について確認したり、いろいろとアドバイスをもらったり……。なんか学生のときと一緒なんですけど(笑)

 

 

 

 

そうやって先輩から学んだり、先輩の分娩介助の技術を見て自分に取り入れたりしながら技術を磨いて次につながるように取り組んでいるので、助産師として日々成長している実感があります」

 

そんな若菜さんを支えているのは先輩の他にも……。

 

「実習のときは私ひとりだったんですけど、今は同期が私の他に3人(助産師2人と看護師1人)いるので、その存在にも助けられています。やっぱり助産師も看護師も傾聴力が高いので、大変なことがあってもすごく傾聴してくれるんですよ(笑) それで『一緒に乗り越えよう!』 みたいな感じにいつもなります」

 

 

▲月2回開催される「プレパパ・ママ教室」の様子。この日は分娩室と陣痛室を見学。

 

 

▲陣痛室と分娩室の見学の様子。

 

 

▲分娩室ですやすや眠る赤ちゃんの人形。

 

 

若手助産師が運営「プレパパ・ママ教室」で不安解消。

 

若菜さんは現在、北上済生会病院で妊婦検診を受けた妊婦さんとそのパートナーさんを対象に、妊娠中の生活や病院での出産・育児について学べる「プレパパ・ママ教室」も担当しています。

 

 

▲「プレパパ・ママ教室」で講師を務める若菜さん。講師は若菜さん含め4人の若手助産師が順番に担当しているそう。

 

 

同教室はコロナ禍により4年間中断していましたが、2024年7月から復活。毎月2回開催しており、第2月曜日は「Let’sお産」、第4月曜日は「母乳と赤ちゃん」がテーマ。参加料は無料で、毎回20~25組ほどの妊婦さんとパートナーさんが参加されているそう。

 

 

▲この日のテーマは「Let’sお産」。こちらに参加すると「立ち合い分娩」ができるそうで、この日は25組の妊婦さんとパートナーさんが参加。

 

 

他の若手助産師3人と一緒にその教室を運営している若菜さんに、日頃から大切にしているポイントを尋ねると……。

 

「みなさんお忙しいなか時間をつくってこの教室に参加されているので、限られた時間のなかでわかりやすく伝えられるようにみんなで工夫しています。そのためにスライドも自分たちでイチから考えてつくっていますし、差し込む動画もわかりやすさを大切にしてみんなで案を出し合って選びました。

 

それに陣痛室や分娩室など院内の施設も見学できるので、いざというときも安心して病院に来て出産を迎えられるように、見学を通して参加されたみなさんの疑問や不安を解消しながら、私たちも笑顔で親しみやすい雰囲気づくりを心掛けています」

 

 

▲若菜さんの説明に耳を傾ける妊婦さんとパートナーさん。

 

 

そんな若菜さんに、最後にどんな助産師さんになりたいかと尋ねると……。

 

「ちょっとした不安や些細なことでも『若菜さんになら話せる、話したい』と思ってもらえるような安心感のある助産師になりたいです。

 

やっぱり赤ちゃんを産むって大変なことで、帝王切開の妊婦さんはより不安が強かったり、入院が長くて寂しい思いをされていたり……、さまざまな患者さんがいらっしゃるので、そういう方々ひとりひとりに寄り添って、『若菜さんになら』と信頼される助産師になることが夢です」

 

とのこと。赤ちゃんが持つ「生まれる力」とお母さんの「産む力」に寄り添って、助産師として奮闘する若菜さんです。

 

 

 

 

小野寺若菜さんが助産師として勤務する病院:

北上済生会病院のホームページはこちら

 

 

 

 

岩手県北上市九年橋3-15-33

Tel/0197-64-7722