KITAKAMI NEWS
【市民ライター投稿記事】「こども計画」って知っていますか? ~子どもの、子どもによる、子どものための計画~
皆さん、「こども計画」って知っていますか?
・・・と聞くと、「?」となる方も多いのでは。あるいは、少子化の世の中、誤解される可能性もあるかもしれません。
そんな私も恥ずかしながら、どんな計画か説明できず・・・。
たまたま、9月24日に北上市で勉強会が開催されました。生涯学習センターには社会福祉協議会の方、NPOの方、中学校職員の方、教育事務所の方に加え、私と私の勤務先で募集し参加した高校生3名など、約20人が集まりました。
まずオリエンテーションで、主催のいわてNPO-NETサポートの菊池さんから、「こども計画」についての簡単な説明がありました。すごく簡単に言うと、「こども計画」とは、市全体で子どもの計画を一括で考えていきましょうという計画です。これは国のこども基本法第10条に定められたもので、北上市もこれから策定に入るため、ワークショップを開催する予定だそうです。菊池さんからは他県の事例も紹介され、北上市にふさわしい計画を策定するためには「こども計画」と策定へ向けた取組をできる限り多くの人に広めて欲しいという話があり、その時私の頭に「これは市民ライターの出番では?」という「天の声」が降りてきたわけです・・・。
この勉強会ですが、講師には大阪公立大学大学院准教授の菅野拓先生が招かれました。菅野先生は「災害ケースマネジメント」の専門家として岩手県に関わっている方なのですが、今回はご自身の体験も踏まえ「こども計画」についてお話しいただきました。
はじめに「こども計画の成り立ちを眺める」と題し、なぜ「こども計画」が登場したのかをお話いただきました。ここで、菅野先生は子どもに関わる主だった法律をスクリーンに投影しました。
古くは1940年代の教育基本法、学校教育法、児童福祉法、少年法。1989年には子どもの権利条約が国連総会で採択され、1994年には日本がこの条約を批准(ひじゅん:条約に対する国家の確認・同意を示す文書でこの文書の交換または寄託によって条約の効力が生じる)。2006年には認定こども園法によって、文部科学省管轄の幼稚園と厚生労働省管轄の保育所が「こども園」という形である意味「一元化」され・・・という、私も政治・経済の授業でやったような教科書的な内容が・・・。
そして、2019年に国連・子どもの権利委員会から日本への勧告が行われます。一言にまとめると、子どもの権利条約を批准したにも関わらず、体制が整備されていないので、至急整えて!という内容でした。
これに対応する形で、2022年にはこども基本法(施行は2023年)と、こども家庭庁設置法(こども家庭庁発足は2023年)により子ども政策を一元化する省庁が整備されるわけです。そういう意味では、子どもに対する取組の遅れを国際社会から指摘されてしまったわけです。
その指摘を解消するべく、2023年にはこども大綱にて「こどもまんなか社会」の実現をめざすことが記され、そのために策定されるのが「こども計画」なのです。
こども計画については、こども基本法 第10条に「都道府県は国のこども大綱を勘案し、また、市町村は国のこども大綱と都道府県こども計画を勘案し、それぞれ、こども計画を定めるよう努めるものとする(こども計画の策定・変更時は遅滞なく公表すること)。」と記されています。そこで、全国各地で「こども計画」が策定されていたり、これから策定されたりするのですが、正直私もあまり話題になった記憶を持たないなか、この勉強会に参加しました。
そこで菅野先生が次にお話ししたのは、こども計画の実際は?ということでした。実例としてまず取り上げたのは、不登校の小学生兄弟の話でした。担任の対応が原因で不登校になった子どもとその親が、学校の管理職を振り出しに教育委員会、児童相談所、法務局と次々に対応窓口を案内され、その過程でその弟も不登校に・・・。子どもの対応が「大人の事情」で右往左往・・・。
もう一つの例が、2枚の避難所の写真でした。1930年と2016年の避難所の写真ですが、いずれも学校の体育館が使用されている写真でした。災害のために避難所の開設は必要なことですが、それが学校に当然のように設置されることに私たちは何の違和感を持たないことが100年近く続いているというのが現実なのです。
先ほど登場した「子どもの権利条約」には、子どもの意見表明権というものがあります。
「締約国は、自己の意見を形成する能力のある児童がその児童に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利を確保する。この場合において、児童の意見は、その児童の年齢及び成熟度に従って相応に考慮されるものとする。」(第12条 政府訳)
そう、「こども計画」にもっとも必要なのは他ならぬ子どもの意見なのです。
「こども計画」は子どもの、子どもによる、子どものための計画なのですから・・・。
北上市は11月から3回にわたり、「きたかみこども未来ミーティング」を開催することになりました。小学生以上なら誰でも参加出来る、画期的なワークショップです。皆さん、開催されるの知っていますか?ホームページにも、広報きたかみにも掲載されていますが・・・。
今回開催された勉強会には、高校生が3名参加していました。いずれも、将来は保育士や教員など、子どもと関わる職業を目指しています。これに対して、菅野先生は「実際の当事者がいるというのが素敵なことです」と話していました。「大人が良かれと思って子どものことを決めるのではなく、どのように自分たちのことを自分たちで決められるのか」が大事だともお話ししていました。
講演の最後には、グループで話を聞いた上での意見交換が行われ、その発表があったのですが、最後に高校生の一人がこんな感想を話しました。
「私自身、先生から聞いて、こども計画という言葉を初めて知ったんですけど、そういう私たちが中心で考えていかなきゃいけないものが、高校生とか中学生に知られることが大事だと思うので、そういうことを私たちも含め発信していくためにどのようにしていけばいいのかというのを考えていきたいなと思います。」
これに対して菅野さんは、次のようにコメントされました。
「それがまず大事なことじゃないですか。皆さんが知らなかったっていうことが、粛々と大人の手で進められたわけですよね。こども計画作る? 私の住んでいる市もそうですけどね。本当は皆さんに聞いとかなきゃいけない。これがスタートですよね。」
この記事がどの程度貢献できるのかはわかりませんが・・・でも、知って欲しいんです、「こども計画」。
もちろん、子どもが自分自身で情報を獲得していくことが重要なのですが、そこに大人の私たちがどう手を差し伸べるか。ちょっと試されている気がしている今日この頃です。
・・・と書いてからしばらく後、第1回目のワークショップが開催されました。参加者には、小学生も中学生もいましたが・・・高校生はテスト間近のせいか参加者はゼロ・・・。ワークショップでは、「北上市はこどもファースト?」「北上市はこどもの意見尊重?」をテーマに各グループで意見交換が行われました。
その中で、あったらいいと思う政策などで、私の目を引いた(私は思いつかなかった~)ものが2つ。
一つは、「こども予算」。「こども計画」が策定されるなら、そしてそれが子ども主体になるものならばお金だって使えてもいいと思います。
もう一つは「こども広報」。広報の1ページでも、子どもの、子どもによる、子どものためのページがあってもいいかも・・・。そしていつか、私の代わりとなる「こども市民ライター」が、こども計画のその後を書いてくれることを期待しているのです。
ワークショップは次回からの参加でもウェルカムです!子どもはもちろん、大人の参加もお待ちしています!