KITAKAMI NEWS
【20代の肖像】vol.56 “どん”と構えた先生へ。 地元の中学で奮闘中。
“どん”と構えた先生へ。
地元の中学で奮闘中。
vol.56 菊池 怜央(きくち れお) 24歳
憧れの仕事。その第一歩を地元から踏み出せたことに感謝。
北上市和賀町で生まれ育った菊池怜央さんにとって、憧れていた先生となって最初の勤務地が地元の和賀東中学校だったことは幸運でした。
「私が中学のときに通っていたのは隣の和賀西中学校だったんですけど、教育実習はここ(和賀東中学校)でさせていただいたんです。
そのとき指導してくださった先生方や職員のみなさんが仕事をしている様子を見て、『先生ってすごくいい職業だなあ』と改めて思えたんです。そこから『絶対、先生になりたい!』と思って一生懸命勉強して試験に合格することができました。
しかも、先生になって最初の勤務地が教育実習をした地元の学校になるというのは本当にレアなケースで、それがわかったときはすごくうれしかったです!」
笑顔でそう語ってくれた怜央先生ですが、和賀東中学校で仕事をしている先生方や職員のみなさんのどんな部分に惹かれたのでしょうか。さらに詳しく尋ねると……。
「先生の仕事ってまさにヒト対ヒトで、子どもたちひとりひとりと向き合うという部分が一番の魅力だと思うんです。
もちろん子どもたちはひとりひとり違うし、元気なときもあればそうじゃないときもあるし、天気や気温がちょっと変わるだけで子どもたちのやる気も変わってきたりします。だから昨日はうまく授業ができたからといって、昨日と同じことを今日やってもうまくいかなかったり、クラスによっても授業のやり方を変えなければいけなかったり……。
そういう子どもたちの変化に臨機応変に対応して、いかに子どもたちのやる気を引き出していくか……、そこを模索する感じが先生の仕事の魅力だと思うんです。教育実習のときには、それを和賀東中学校のどの先生方も真摯にされていたので、その姿が私にはすごく魅力的でした」
念願叶って教員試験に合格し、怜央さんが「保健体育」の先生として和賀東中学校に赴任してきたのは昨年(2023年)4月。さっそく2年生のクラス担任となり、今年2年目に突入。その日々を振り返ると……。
▲北上市の西部に位置する和賀東中学校では、およそ220人の生徒が豊かな自然のなかで学びを深めています。全国にも出場した地域の伝統芸能を受け継ぐ特設鬼剣舞部やソフトボール部など部活動も盛ん。
▲怜央さんは保健体育の先生。この日は自身が担任を務める3年生のクラスの授業でソフトボールを実施。
いろんなハプニングも「楽しむ」ことを大切に。
怜央さんは憧れだった先生になって2年目を迎えても、教育実習のときに感じた気持ちに変わりはないそう。
「教育実習のときは学生として学びに来ていて、憧れの先生の仕事を体験できてすごく楽しかったんですよ。それが今は立場も変わって『学ぶヒト』から『教えるヒト』になって、大変さや責任も増しているんですけど、でも教育実習のときに感じた『楽しいなあ』という気持ちに変わりはないです。
もちろん、まだ先生になって2年目なので失敗することもあるんですけど、そのたびにいろんな先生方が『まだ教育実習2年目だ、3年目だ』とか言ってイジりながらも丁寧に教えてくださるので、いつも前向きに先生の仕事に取り組める環境がここにはあります。ですから周りの先生方にはすごく感謝しています」
そう語ってくれた怜央さんに、先生になってうれしかったエピソードを尋ねると……。
「2年生から3年生に上がるとき、担任の先生が変わるかどうかって子どもたちは気になりますよね。和賀東中学校だと基本的には2年生で担任だった先生が3年生になってもそのクラスの担任になるんですが、子どもたちにしてみると、やっぱり担任の先生がきちんと発表されるまでは不安みたいで……。
私は去年2年生のクラス担任だったんですが、3月になると子どもたちも不安になったみたいで『来年も怜央先生がいい』とか言ってもらったときはすごくうれしかったです。私なりに1年間担任としてやってきたことに間違いはなかったのかなと思えて……。
でも、そう言っていた子どもたちが、4月になって授業がはじまると『また怜央先生かよ』とかつまらなそうに言うんですよ。そういうかわいいやりとりができるのも先生だからこそというか、楽しいんですよね(笑)」
怜央さんが昨年から担任を務めるクラスは全部で24人。そのひとりひとりに合わせた関係づくりを日頃から大切にしているそうですが、個性豊かな24人の生徒が集まれば、さまざまなハプニングも……。
「私の場合、いろんなハプニングやうまくいかないことが起きても『楽しいなあ』って思えるというか(笑) 『そういうときもあるよね』と割り切って、でもそのなかで自分に何ができるかを考えて、『楽しむ』ことを大切にしながら取り組んでいます」
いつも明るく前向きな怜央先生ですが、それを支えているのは……。
▲お兄さんの影響で小学1年からサッカーに夢中に。高校は宮城県の強豪・常盤木学園、大学は教職課程のある上武大学(群馬県)でサッカー部に所属しており、そこから保健体育の先生へ。写真は大学時代。
子どもたちがいつでも相談できるよう、“どん”と構えた先生に。
「今年の修学旅行で初めて子どもたちのスマホ使用をOKにしたんですよ。それが実現できたのも、昨年度の職場体験や宿泊研修で子どもたちが私たちの想像の上をいく行動を自分たちでできたからなんです。
例えば職場体験では、子どもたちが自分たちだけで実習先に行って職場体験をさせていただいて戻ってくることができたんです。それがきちんとできる子どもたちなら修学旅行でも自主研修を自分たちだけでさせようとなって、スマホ使用もOKになりました。
今は情報にあふれているので、スマホ1つで電車の乗り換えも調べられます。そもそも今の子どもたちは私たちよりもそういった情報をキャッチする能力は高いので、もちろんSNSのトラブルなどリスクもありますが、そういった指導もきちんと行ったうえで、今年の修学旅行ではスマホも活用して無事に自主研修も達成できたのは子どもたちにも自信になったと思います」
と誇らしく語る怜央先生。子どもたちのこうした日々の成長を間近で見られるのも、先生のやりがいだそう。一方で、修学旅行での自分を振り返ると……。
「修学旅行のときは、子どもたちは私たちが投げかけたことを一生懸命やってくれるんですけど、それでもなかなか計画通りに進まないことも多くて私があたふたしちゃって……。でも、他の先生方は“どん”と構えていて、何かトラブルが起きても対応に余裕があって、『トラブルが起きても大丈夫だよ』と見えるんですよ。それがすごいなと思って……。だからそれ以来、私も“どん”と構えようと思って、どんなに忙しくても子どもたちに忙しく見えないように、気持ちにゆとりを持つように心がけています(笑)
結局、そういうのって子どもたちも察知するというか……。先生が忙しそうだからと気を遣って相談ができなくて、話を聞いたときには深刻化していたということも起こりえるので、忙しそうに見えないというのは大事だと思います」
そう語ってくれた先生2年目の怜央さんに、将来どんな先生になりたいかと尋ねると……。
「いつでも“どん”と構えた先生です」
と笑顔で即答。お手本とする先生たちに見守られながら、地元の中学で憧れの先生という仕事に奮闘する怜央先生でした。
▲休みの日はフットサルや昨年から始めたゴルフで気分転換。地元に帰ってこられたため、家族でゴルフを楽しめるのがうれしいそう。
▲体育を終えて、怜央先生を待つ子どもたち。
菊池怜央先生が教鞭を執る学校:
北上市立和賀東中学校のホームページはこちら
岩手県北上市和賀町長沼6-1