KITAKAMI NEWS

【20代の肖像】vol.52 「やりたいこと」をカタチに。 「芸術」をすべてのヒトに。

2024年7月16日

きたかみリズム×きたかみ仕事人図鑑

 

 

「やりたいこと」をカタチに。

「芸術」をすべてのヒトに。

 

vol.52

小原 真朱(おばら まそほ)  27歳

福井 蘭(ふくい らん)        25歳

八重樫 真由(やえがし まゆ) 21歳

 

 

年間20万人以上の「やりたいこと」を叶えるために。

 

「『昔やっていた編み物をはじめたいんだけど、もうやり方も覚えていなくて……。どこかいいところないですか?』という相談を受けたんですよ。さくらホールの利用者には手芸サークルがいくつかあるので、そちらに電話で当たってみたんです。

 

結果としては相談いただいた方の希望に添える手芸サークルはなかったのですが、『別の方なら紹介できますよ』という方と出会えて、相談いただいた方におつなぎすることができました。

 

結局さくらホールの利用にはつながらなかったかもしれないんですが、でもそういう相談があるということは、『さくらホールでそういうことが行われている』と知られているからだと思うんです。だからこそ何とかしてあげたいと思ったし、利用にはつながらなくても何かを“やりたい”という気持ちを次につなぐことはできたのかなと思います」

 

 

 

 

そう語るのは、オープンから21年目を迎えた北上市文化交流センター「さくらホール feat. ツガワ」(以下「さくらホールという。)の利用サービス課で4年目になる小原真朱(まそほ)さんです。真朱さんの仕事は、年間20万人以上が施設を利用するさくらホールで、施設予約の対応はもちろん、施設利用時の受付・部屋の施錠・現場の乱れや備品のチェック、(基本的には利用者が準備をするという決まりになっており、それを踏まえて)初心者の方にはマイクの設置やプロジェクターのセッティングなどもお手伝いするなど幅広い業務を担っています。

 

 

▲さくらホールが手掛ける子どもの舞台芸術体験事業「キッザート」にも参加していた真朱さん。その頃からさくらホールで働くのが夢だったそう。

 

「イベントのときだけヒトが集まる場ではなく、いつでもヒトでにぎわう“まちの文化広場”」をめざして2003年に誕生した「さくらホール」は公共ホールでは珍しい休館日のない365日オープンに加え、1,300人以上を収容する大ホールを筆頭に中・小のホールと、舞台稽古・音楽・ダンス・美術などさまざまな文化芸術活動に利用できる多目的ルーム・和室など21の部屋があり、それらの年間稼働率は9割を超えるそう。

 

 

 

 

さらに近年はフリースペースでもイベントができるように解放するなど、「すべてのヒトに芸術を身近に感じてもらうこと」を目標に、さまざまなヒトの「やりたいこと」を叶える空間として進化を遂げ、多くのヒトに愛される公共ホールとなっています。

 

 

 

 

「結局さくらホールの利用にはつながらなかった」という真朱さんの気遣いも、「もう一度、編み物をやってみたい」という想いに寄り添ったもので、そうした地道な取り組みが「さくらホールのヒトを集めるチカラにつながっている」と語るのは、同じく利用サービス課で3年目になる福井 蘭さんです。蘭さんが特にそれを強く感じるのが、施設予約の対応についてだそう……。

 

 

▲3人が働くサービスセンター。施設を利用する方や公演・イベントなどのチケットを買いに毎日多くの方が訪れます。

 

 

「がんばればできるかも!」の精神で「やりたいこと」を応援!

 

「さくらホール」ではホール以外にも利用できる部屋が21あって、さまざまな用途に合わせて利用できるようにそれぞれ特性も違っています。そのため、部屋によっては「できること・できないこと」があるそうですが、「でも、がんばればできるかも!」ということが多いそう。

 

 

▲蘭さんはさくらホールのデザインと空間に魅かれ働くことに。「ガラスとコンクリートがかっこよすぎる!」とのこと。

 

 

「そもそも部屋自体が“こういう用途に向いている”というだけで、“それ以外で使ってはいけません”というルールはないんです。ですから施設利用の予約を取る時点で、いつやりたいのか・参加者は何名か・規模はどれくらいか・どの部屋でどんなことをやりたいのか・スケジュールなど細かく聞き取ります。

 

そのうえで希望の部屋で“できること・できないこと”をお伝えして、人数が合わなければ大きな部屋を提案したり、“できない”ことでも“これはがんばればできるかもしれませんが一度検討させてください”という風にして細かく調整して進めていくんです。

 

 

 

 

文化芸術って本当に幅が広いので、利用者のなかには初めて聞くような競技や活動をされている方も多くいらっしゃいます。そうしたなかでひとりひとり『やりたいこと』が違っていて、毎日予約の対応をしていますが、同じオーダーは一度もない。毎回お客さまごとに“どうすればできるか”をみんなで考えるんですよ。

 

“できない”と言ってしまえば簡単なんですが、でもがんばればできるかもしれない……。そうなると、さくらホールのみなさんは『じゃあ、できる範囲でやってみよう!』となるんです。さくらホールのみなさんは『ヒトのために何かしてあげよう』と思う気持ちが強いヒトたちが多いんですよ。そこがすごいと思っていて、そういうヒトたちといっしょに働くなかで、私も日々学ばせてもらっていますし、さくらホールのヒトを集めるチカラって、多分そういう部分じゃないかと思うんです」

 

 

 

 

そう語ってくれた蘭さん。さまざまなヒトの「やりたいこと」を受け止め、カタチにするお手伝いをする利用サービス課の仕事は、「だからすごく大変だけど、すごく面白い」と言葉を続けます。

 

 

 

 

何かを「やりたい!」というたくさんの
エネルギーが集まり、華開く場所。

 

八重樫真由さんは利用サービス課で働きはじめて3ヵ月の新人ですが、そんな真由さんの目に2人の先輩はどう映っているのでしょう。

 

 

▲真由さんも学生時代はフリースペースで勉強するなど、さくらホールは身近な存在。

 

 

「この仕事はやることがいっぱいあって今でもわからないことが多いんですが、入りたての頃は本当に何もわからなくて……。

 

予約の電話対応も1ヵ月が過ぎた頃からやりはじめたんですが、本当にいろんな利用者がいて“やりたいこと”もさまざまで、それを先輩たちはすべて完璧に聞き取って舞台さんとか専門の方につなぐんですけど、それが難しくて……。

 

私が電話を受けてわからなくなって先輩たちにつなげるときも、私のつたない説明を聞いただけで『わかった。大丈夫、私たちが話を聞いてなんとかするから』といつも言ってくださって、本当にすごいなと思っています」

 

 

▲電話対応中の真由さん。

 

そんな先輩たちの背中を追いかけて勉強の日々の真由さんですが、3ヵ月経って気づいたことが……。

 

「私が入ってからを見ても、個人で新しく登録される方がかなり多くいらっしゃるんです。最近は人口減少が話題になっていますが、本当かな?(笑) と思うくらい多くの方がいらっしゃいます。それもきっと、さくらホールのみなさんが“やりたいこと”をどうにかして実現させようという想いがチカラになっているからで、それでさくらホールにヒトが集まってきているのかなと思うんです」

 

 

 

 

その言葉に真朱さんもうなずきます。

 

「さくらホールは施設を利用されない方でも、フリースペースで勉強する学生さんがいたり、赤ちゃんを連れたお母さんが散歩していたり、おじいちゃんやおばあちゃんたちがおしゃべりしたりして自由に過ごすことができます。

 

部屋がガラス張りになっているのも魅力で、外から中でどんなことをしているかを見ることもできます。『あれ、何やっているんですか?』と聞かれることも多くて、そういう方が次から中にいたりして(笑) そういうことも頻繁に起こるのがさくらホールなんですよ」と真朱さんは誇らしそうに語ってくれました。

 

 

 

 

最後にさくらホールの受付の仕事の魅力についてたずねると……。

 

「自分のなかで『やりたいこと』があるヒトって、すごくアクティブで、能動的に行動するヒトが多いと思うんです。そういうヒトたちのエネルギーが集まってくる場所がさくらホールであり、その『やりたいこと』を理想的なカタチに限りなく近づけられる場所、その強いエネルギーが華開く場所がさくらホールだと思うんです。

 

私たちの仕事は、何かを『やりたい』という利用者たちの強いエネルギーを受け止めて、理想に近づけるお手伝いをすることだと思うし、それがこの仕事の大変だけどすごく楽しいところでもあります」と蘭さんが力強く語ってくれました。

 

ひとりひとりの「やりたいこと」をカタチに。芸術をすべてのヒトに……。その最前線で「大変」と言いながらも楽しく奮闘している3人でした。

 

 

▲取材を終えて、仕事に戻る3人。

 

3人が働く施設:

北上市文化交流センターさくらホール feat. ツガワ

岩手県北上市さくら通り2-1-1

Tel/0197-61-3300