KITAKAMI NEWS
【20代の肖像】vol.44 地域の“お姉さん”のような アナウンサーへ。
地域の“お姉さん”のようなアナウンサーへ。
vol.44 河西 愛里(かわにし あいり) 23歳
“お姉さん”に憧れて。静岡県から北上市へ。
「小学生のときに入っていた一輪車のクラブに高校生のお姉さんがいたんですよ。そのお姉さんが、私が中学生になってテレビを見ていたら地元のテレビ局のアナウンサーとしてテレビに出ていて(笑)
身近なお姉さんがテレビに映っているうれしさと、そういうヒトが地元の人気スポットや食べ物を紹介したり、地域の方と楽しそうにおしゃべりしたりしているのを見ているうちに、私の知らない地元の魅力を知ることができたし、自分が暮らす地域をもっと好きになることができたんです。
地域の魅力を伝えるアナウンサーという仕事に興味を持ったのは、それがきっかけです」
楽しそうにそう語るのは、静岡県出身で京都の大学を卒業し、今年の4月から「北上ケーブルテレビ」でアナウンサーとして働く河西愛里(かわにし あいり)さんです。京都・静岡から東京を飛び越えて岩手県北上市へ。そのご縁は……。
「アナウンサーの仕事にずっと憧れていたので、大学の就職活動もアナウンサーを中心に記者や番組制作などテレビの総合職で探していました。ただ、人気の仕事で競争率も高くて就活は大変でした。
大学の2回生のときからアナウンサースクールにも通っていたのですが、そこの生徒でも実際にアナウンサーの仕事に就けるのは本当に少ないみたいで……。
それでもアナウンサーの仕事に就きたいと思っていたので『ご縁があるならどこへでも行こう』とエントリーシートは南は沖縄から北は北海道まで出しましたし、実際の面接も鹿児島から岩手・秋田まで行きました」
しかし、それでも就活は厳しく「1回辞めよう」と決意し、一般企業の内定も決まったそう。
「でも、やっぱり諦めきれなくて北上ケーブルテレビに応募したらご縁をいただいて、面接に来たのが今年の2月でした。北上市に来たのも、そのときがもちろん初めてで、すごく寒かったのを覚えています(笑)」
そして、いざ面接へ。しかし、愛里さんには大きな不安が……。
おもてなしの文化を実感。「んだ、んだ」に癒やされて。
「私は面接の機会をいただければ日本全国どこでもおうかがいしていたのですが、みなさんの反応が『本当にこんな地方まで来てくれるの?』『本当にこの土地を好きになってくれるの?』という感じで……。なんのゆかりもない北上市だったので、またそう言われるんじゃないかという不安がありました。
でも、北上ケーブルテレビではそういうプレッシャーもなく面接が受けられて、入社が決まって3月26日に北上市に来たんですが、そのときも『来てくれてありがとう。暮らしを楽しんでね!』という感じであたたかく迎えていただいて、それがず~っと続いている感じです(笑)
北上市で暮らすようになってからは『伊達藩と南部藩の藩境にある北上市は昔からヒトの交流が盛んで、ヒトをおもてなしする文化があるんだよ』という話をいろいろな方からうかがうのですが、『なるほど』と納得しました(笑)」
そんな愛里さんですが、静岡県から北上市にやってきて半年が過ぎ、気になるのは仕事のこと。なんのゆかりもない北上市で、憧れだったアナウンサーの仕事は……。
「私の仕事はカメラを持って取材に行って、原稿を書いて、編集して、その原稿を読んで、夕方6時30分からの『マイタウンきたかみ』という番組で流すところまでを担当しています」
憧れだった「アナウンサー」以外に「番組制作」の仕事も担当……。大変では?
「もともと『番組制作 兼 アナウンサー』という職種での採用だったので、番組制作の仕事を担当するのも覚悟のうえだったのですが、今は逆に番組制作の仕事ができて良かったと思っています。
私も今までアナウンサーは原稿を読むのが仕事だと思っていたのですが、実際に自分でカメラを持って取材をしてみると、現場に行ったからこそわかることが多くて、自分が直接取材したからこそ自信を持ってお伝えできるというのは、アナウンサーの仕事をするうえでもとてもプラスになると感じています。
それに地域の方とお話できるのは、それだけでもすごく楽しいんですよ。それぞれの地域の交流センターにもよく取材に行ってお話をうかがうのですが、みなさん優しくて、『んだ、んだ(そうだ、そうだ)』という方言にも癒やされるというか(笑) 北上の方言はかわいいですよね(笑)」
地域の声に励まされ。身近な“お姉さん”のようなアナウンサーへ。
見知らぬ北上市で迎えた社会人1年目。不安も多いかと思いきや、お話をうかがっていると仕事も順調そうですが……。
「順調じゃないですよ(笑) 失敗もたくさんしていますし、イベントなどで参加した方にインタビューさせていただいた際も、上手にお話を引き出せなかったときは『私の質問の仕方が悪かったのかな』と考えると悔しい気持ちになります。
北上・みちのく芸能まつりの中継の仕事も初めての経験で、『とにかくミスのないように準備しなきゃ』と原稿を一生懸命つくっていたのですが、先輩から『視聴者にどう届けるかということを忘れちゃいけないよね』と言われて……。
確かにそのときは『ミスなく放送を乗り切れればいい』とだけ考えていたところがあって、『自分が何を届けたいのか? どう届けるのか?』というところまできちんと考えていなかったと気づいて……。毎日が反省ですね」
そんな愛里さんを支えているのが、地域のヒトから掛けられる声です。
「取材先で『河西さんでしょ! いつも見てますよ』と声を掛けていただいたり、出会った子どもたちに『取材で来たんだよ』と言うと『マイタウンきたかみでしょ!』と言ってもらえたりすると、やっぱりうれしいですよね。
番組を見てもらえているんだと思うと、それだけでがんばろうという気持ちになります」
その声に励まされて、もっとインタビューの仕方も上手になろうと現場でも勉強中だそう。
「取材先にはよく新聞記者さんもいらっしゃるので、そういうときにはお話の聞き方なども学んで自分のインタビューにいかすようにしています。もちろん私も仕事なので学ぶだけでなく、『新聞記者さんに負けないで質問しよう!』とがんばっています(笑)」
と明るく前向きな愛里さんに今後の夢をうかがうと……。
「カメラを持って地域のヒトを尋ねて、自分で取材をして、編集して、原稿をつくって、それを読んで、自分の言葉で伝えられる今のスタイルがすごく楽しいんですよね。このスタイルでアナウンサーの仕事をずっと続けていきたいと思っています」
地元の“お姉さん”に憧れて、静岡県からなんのゆかりもない北上市に来て飛び込んだアナウンサーの世界。取材先で出会う地域のヒトの声に励まされながら、地域の魅力を届ける身近な“お姉さん”のようなアナウンサーへ。夢に向かって一歩一歩歩む愛里さんです。
河西愛里さんが働く職場:北上ケーブルテレビ株式会社
岩手県北上市本石町1-5-19
Tel/0197-64-5111