KITAKAMI NEWS

【20代の肖像】vol.42 その子の個性と笑顔をのばす 児童発達支援を。

2023年9月7日

きたかみリズム×きたかみ仕事人図鑑

 

その子の個性と笑顔をのばす
児童発達支援を。

 

 

vol.42  大和田 愛莉(おおわだ あいり) 25歳   

 

 

幼稚園や保育園の先生とは別のカタチで支えたい。

 

 

小さい頃から子どもが大好きだった大和田愛莉さんは、高校生になると子どもと関わる仕事がしたいという気持ちが強くなりました。しかし、その仕事は幼稚園や保育園の先生ではありません。

 

 

 

 

「高校生の頃、いじめや虐待で亡くなる子どもたちのニュースが多かったんですよ。そういう子どもたちのために何かできないかと考えるようになったんです」

 

 

そうして選んだのが、子どもを中心に福祉全般のことを学べる専門学校の社会福祉学科です。

 

 

「3年間の学生生活では子どものことはもちろん、高齢者、障がい者、地域支援など福祉のことを幅広く学びました。

 

 

ボランティア活動もたくさんやらせてもらって、老人ホームや児童養護施設のお手伝いもしましたし、地域課題の取り組みとして西和賀町の雪かきボランティアや、東北絆まつり、盛岡で開催されるマラソンなど地域を盛りあげるイベントのお手伝いもしました。

 

 

その3年間で一番印象に残っているのは、私たちの周りには私たちが気づかないだけで、実は困っている方がたくさんいて、そういう方たちを支援するヒトや職業もたくさんあるということです」

 

 

そこで改めて「子どもと関わる仕事がしたい」という想いが強くなった愛莉さんが選んだ仕事が……。

 

 

▲おやつの時間。子どもたちのお世話をする愛莉さん。

 

 

▲上段:専門学校時代のボランティア活動にて仲間と。 下段:休日は趣味のライブで東へ西へ。ギターピックは思い出の一品。

 

 

3歳から高校生まで。一人ひとりの個性や障がいの特性と向き合って。

 

 

「児童発達支援」「放課後等デイサービス」という通所型の福祉サービスをご存じでしょうか。

 

 

どちらも、障がいや発達に特性のある子どもを対象に、一人ひとりの個性や特性に合わせ、日常生活や集団生活に必要な能力の向上と表現の仕方などを身につけながら社会性を育む福祉サービスですが、利用できる年齢に違いがあります。

 

 

「児童発達支援」は小学校に通う前の未就学児が対象で、「放課後等デイサービス」は小学生から高校生までの子どもが対象となり、放課後や休日、夏休みなどの長期休暇に利用できます。

 

 

専門学校を卒業した愛莉さんが、最初に就職したのが盛岡にある「放課後等デイサービス」で、子どもたちのお世話をする児童指導員の仕事でした。

 

 

 

 

「そこは小学1年生から高校3年生まで通っていて、障がいの特性も一般の学校に通っている子どもから重度の障がいがある子どもまで幅広かったですね。子どもが大好きなので仕事は楽しかったですが、しゃべれない子どもや自分の想いを言葉にできない子どももいて、そういう子たちの気持ちをどう汲み取るかという部分が一番大変でした。

 

 

ずっと接していると、子どもたちも表情や身振り手振りで一生懸命自分の気持ちを伝えてくれるので、そうやって少しずつコミュニケーションができてくると、この仕事をやっていてよかったと思いますし、改めて信頼関係を築くことが大切だと思いました」

 

 

▲2022年4月に北上市にオープンした「ぴーか・ぶー・パレット」。名前の「ぴーか・ぶー」は、英語(Peek-a-boo)で「いないいないばあ」に当たる言葉。子どもたちの好きなワクワクとドキドキがカラフルに並ぶパレットのような空間をめざして命名。

 

 

そんな愛莉さんが、北上市にある児童発達支援・放課後等デイサービス「ぴーか・ぶー・パレット」に興味を持ったのは昨年(2022年)の春。

 

 

「私は幼稚園や保育園に通うような小さい子どものお世話もしたいとずっと思っていたんです。

 

 

盛岡の仕事も楽しかったのですが、昨年の4月に北上市に児童発達支援と放課後等デイサービスを行う福祉サービス施設(ぴーか・ぶー・パレット)ができると知って興味がわいたんです。

 

 

児童発達支援では小学校に入学する前の未就学児が対象になるので、そういう子どもたちも含めて幅広い世代の子どもたちと関わっていきたいと思っていたのですが、そういう福祉サービス施設はあまり多くないので……」

 

 

こうして盛岡の放課後等デイサービスで3年半の経験を積み、昨年9月から「ぴーか・ぶー・パレット」で働くことになった愛莉さんですが……。

 

 

▲「ぴーか・ぶー・パレット」では大画面のタッチパネルを活用。全身を使って仲間と一緒に楽しみながらゲーム形式で学べる「CoCoRoMap」は子どもたちに好評。

 

 

▲こちらも多彩なゲームで楽しみながら認知テストが行える「脳バランサーキッズ」。ゲームの結果はもちろん、決められた時間きちんと座ってゲームができない、タイマーが気になってゲームに集中できないなど、ゲームとの向き合い方も参考に一人ひとりの特性を把握し、個別支援に役立てているそう。

 

 

▲館内の様子。絵本やおもちゃはもちろん、スタッフ手づくりのキャラクターやイラストたちが子どもたちを見守っています。

 

 

社会のなかで、一人ひとりが輝くために。

 

 

児童発達支援・放課後等デイサービス「ぴーか・ぶー・パレット」は1日の定員が10名。現在は3歳から12歳までの子どもが通っており、障がいの特性もASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)など発達障がいの診断を受けている子どもや、診断は受けていないけれどその傾向が認められる子どもなど、その特性もさまざまです。

 

 

▲身体を動かす運動プログラムもスタッフが考案。この日は「タオル綱引き」で大盛り上がり。バレー部で鍛えた瞬発力を武器に愛莉さんも大活躍。この他にも空手やキッズヨガ、おやつづくり体験、時には外へ飛び出し「マックでお買い物体験」「消防署見学」など、楽しみながら社会性を育む多彩なプログラムを実施しています。

 

 

「以前の職場は小学生から高校生までで障がいの重い子どものお世話もしてきました。でも、ここは3歳からなので、そういう小さい子のお世話をするのは私も初めてで、最初は全部自分が面倒みてあげないといけないのかなと思っていました。

 

 

でも実際はそんなことはなくて、3~4歳の子でもきちんと“自分”を持っていて、自分のことは自分でできて、困ったときは『手伝ってください』ときちんと言えるんですよ。それに『一緒に遊ぼう』と誘ってくれたり、『大好きだよ』と言ってくれたり……。そういう言葉ひとつひとつがうれしくて、本当に子どもはかわいいなと思います」

 

 

そう言って笑顔を浮かべる愛莉さんですが、辛いことも……。

 

 

「子どもたちの気持ちが不安定になったときのコミュニケーションが難しくて、その子の気持ちを汲み取れなくなったときは辛いですね。一人ひとり障がいの特性も個性も違うので、ひとりで本を読んでいたい子もいれば、一緒に過ごしてほしいという子もいて……。一人ひとりに合わせた支援が必要で、毎日が勉強です。」

 

 

でも、その辛さを喜びに変えてくれるのも、子どもたちの笑顔や何気ない日々の言葉なのだそう。そんな愛莉さんも児童支援員になって5年目。今、次の目標に向かって歩みはじめています。

 

 

「『児童発達支援管理責任者』という資格を取りたいと思って……」

 

 

児童発達支援管理責任者とは、障がいを持つ子どもが「児童発達支援」や「放課後等デイサービス」といった福祉サービスを利用する際に、一人ひとりの個性や障がいの特性に合わせて必要な個別支援計画(短期・長期)を作成。さらに、その内容を保護者の方にも了承していただき、それに基づいて提供する日々の福祉サービスを管理する専門職で、障がい児支援施設に1名以上配置することが義務づけられています。

 

愛莉さんは、この資格取得に向けて今がんばっているそう。

 

 

「3年かけて取る資格なんですが、今は子どもたち一人ひとりに合わせて短期目標と長期目標を私なりにつくって、それを先輩に添削してもらいながら資格取得に向けた勉強をしています」

 

 

個性も障がいの特性も一人ひとり違います。だからこそ、その子の個性と笑顔をのばす支援を……。子どもたちの笑顔や言葉に支えられながら、愛莉さんの挑戦は続きます。

 

 

▲困ったり悩んだときは「すぐ先輩や仲間に相談する」そう。

 

 

 

 

大和田愛莉さんが働く職場:

児童発達支援・放課後等デイサービス 「ぴーか・ぶー・パレット」

 

岩手県北上市柳原町4-15-26

Tel/0197-62-4041