KITAKAMI NEWS

【20代の肖像】vol.41 お客さんの近くで。 深まる料理の楽しさ。

2023年8月7日

きたかみリズム×きたかみ仕事人図鑑

 

 

お客さんの近くで。
深まる料理の楽しさ。

 

 

vol.41 谷 絵梨香(たに えりか) 23歳

 

 

居酒屋で働く両親の背中を見て、気づけば……。

 

 

「お店には小さい頃からよく行っていました。両親が働いていたので、父が魚をさばいているところを見たり、仕入れにもよく連れて行ってもらったりしていました」

 

 

そう語るのは、北上市青柳町にある居酒屋「ダイニングキッチン 侍(さむらい)」で調理を担当する谷 絵梨香さんです。

 

 

 

 

絵梨香さんのお父さんは、三陸・青森・北海道などの港に直接出向き、独自ルートで仕入れる鮮度抜群な海鮮と、地場の旬の食材で彩る料理が自慢の居酒屋を北上市内で2店舗手掛けており、「ダイニングキッチン 侍」もそのひとつ。同店は、港から仕入れる新鮮な海の幸と地場の季節の料理をカジュアルに楽しめるお店として幅広い世代に人気です。

 

 

▲絵梨香さんが働く「ダイニングキッチン 侍」は、北上市の歓楽街・青柳町の一角に。「侍」の看板と兜が目印。

 

 

そんなお店で働くご両親を間近に見て育った絵梨香さんは、地元の専修大学北上高等学校を卒業すると……。

 

 

「親には『好きなことをしろ』と言われていて、『調理師になれ』とは一度も言われたことがなかったのですが、気づけば調理師の専門学校に進んでいました(笑)」

 

 

「特にやりたいこともなかった」と語る絵梨香さんですが……。

 

 

「専門学校では実習を通して和・洋・中の料理を幅広く学べるので、調理が未経験だった私は毎日が新鮮でした。実習もグループに分かれて行うので楽しかったし、つくった料理はみんなで食べるんですが、その料理がおいしくできるとすごくうれしいんですよね。それにスッポンをさばいたり、ホテルのパーティの演出に使われる氷彫刻の体験をしたり、他ではできないこともたくさん経験できてとても刺激を受けました」

 

 

専門学校で調理の楽しさを実感した絵梨香さんですが、卒業後は……。

 

 

▲仕入れ先の気仙沼港にて。絵梨香さんも小さい頃はお父さんに連れられて、アチコチの港に行ったそう。

 

 

▲「ダイニングキッチン 侍」には水槽が眺められる個室も。さらに姉妹店の「巓升郭(てんしょうかく)」には2トンの水槽があるなど、2店とも活きのいい新鮮な魚介を使用した料理を味わえるのが魅力です。

 

 

▲専門学校で体験した、ホテルのパーティ演出に使用される氷彫刻。「間近で見ると、さらにキレイですごく印象に残っています」とのこと。目で楽しませる演出も大事だと実感したそう。

 

 

子どもの出産を経て、「侍」に。

 

 

専門学校を卒業した絵梨香さんが調理師として就職したのは、岩手県内の観光地にあるホテルです。

 

 

「まだコロナ前で外国人の方も多くいらっしゃるホテルだったので、すごく忙しかったですね。私は主にお膳の調理を担当していたのですが、バイキングも人気だったので、お寿司の握り方を学んでバイキングで提供したりして、新しいこともいろいろ勉強させていただきました。

 

 

一番印象に残っているのはたくさんのお客さまと接する経験ができたこと。特に中国から来られるお客さまが多かったのですが、中国語ができないなかでもいかにコミュニケーションを取って、お客さんに満足してもらえるか、自分なりに工夫してがんばった毎日は良い経験だったと思います。

 

 

私は人見知りな性格で接客も最初は得意ではなかったのですが、そこで鍛えられた気がします(笑)」

 

 

そんな絵梨香さんですが、「侍」で働くことになったのは……。

 

 

▲お店では主に仕込み・揚げ物・焼き物などを担当。料理の奥深さを実感する日々だそう。

 

 

「ホテルは出産を機に退職しました。それから1年くらい育児休暇を取ってから『侍』で働くことになったんです。ホテルの仕事は忙しいときは朝7時から夜9時まで働いていて、子育てしながらだと難しいと思ったのと、コロナの影響もあって……。

 

 

その点、『侍』では会社としても育児中のスタッフに配慮してもらえるので働きやすいと思ったんです」

 

 

現在、絵梨香さんは「侍」で働いて3年目。調理師として仕込みや揚げ物・焼き物などを担当しながら、ときにはホールを手伝うことも。そこでは、専門学校やホテルで学んだことが大いに生かされていそうですが……。

 

 

▲同店で人気の「お刺身の盛り合わせ」。独自ルートで各地の港から仕入れた新鮮な海の幸を堪能できます。

 

 

「専門学校やホテルの仕事でいろいろ経験してきましたが、『侍』で働いてみるとさらに新しい学びが毎日あって……。店長はじめ、先輩の仕事を見ていると、鮮度が命なのでスピードはもちろん大切なんですが、野菜の切り方とか串の刺し方とか、そういう基本的なところから細部にまで気を遣って仕事をしていることがわかって本当に毎日が勉強です。

 

 

『侍』はメニューも豊富で私が担当する料理はひと通りつくることはできますが、仕込みから盛り付けまで細部にこだわって手間をかけていくと、まだまだ覚えないといけないことがいっぱいあります。それに、料理するヒトのアイデアや工夫次第で料理がさらにおいしくなったりするのも面白いですし、この店で働くようになって本当に料理は奥が深いと思うようになりました」

 

 

「なんとなく」料理人の世界に飛び込んだ絵梨香さんですが、「こんなに続くとは思はなかった」と語るほど、今ではその「面白さ」にすっかり魅かれているそう。

 

 

そして、絵梨香さんのやりがいになっていることがもうひとつ……。

 

 

▲こちらも人気の一品「焼き鳥の盛り合わせ」。

 

 

▲この日のおすすめ「カツオ刺」は、赤身の色も鮮やか。

 

 

▲忙しいときはホールの仕事も。

 

 

▲たくさんのメニューがあるなかで、絵梨香さんのイチ押しは「納豆オムレツ」。「ふっくらしていておいしいし、お客さんの評判もいいんですよ!」とのこと。

 

 

お客さんの近くで。その“声”を励みに。

 

 

「『侍』はオープンキッチンでカウンターもあるので、お客さんと近い距離感で料理をつくって提供できますし、その声を直接聞けるのは料理をつくっていても楽しいです。それに私自身北上が地元なので、同級生や知っている地域の方もたくさん来てくれて、『おいしい』と言ってもらえるとうれしくなります」

 

 

そう言って笑顔を浮かべる絵梨香さんですが、同店では全室テレビ付きのため、おいしい料理とお酒を楽しみながらスポーツ観戦できるのも魅力だそう。店内にはサッカーや野球、ラグビーなどの代表ユニフォームもたくさん飾られており……。

 

 

▲店内の様子。1Fはオープンキッチンとなっており、生きた魚を目の前でさばく様子を堪能(上段左)。2Fは語らいを大切にした空間ですが、スポーツ中継がある日はみんなでテレビ観戦も(上段右・下段)。

 

 

▲2022年のサッカーW杯のときの店内の様子。

 

 

▲お客さんと一緒に応援しているうちに、絵梨香さんも日本代表のファンに。

 

 

「スポーツの中継があると、お酒を飲みながらテレビ観戦ができるので、たくさんのお客さんが楽しそうに応援している様子を見ると私も楽しくなります。去年はサッカーのワールドカップがあって日本代表も出場しましたが、そのときもすごく盛り上がったんですよ」

 

 

絵梨香さん自身も中学・高校とバレー部で活躍しており、お客さんとスポーツを通じて盛り上がれる時間が楽しみなのだそう。

 

 

さて、そんな絵梨香さんに仕事をするうえで大切にしていることをうかがうと……。

 

 

「どんなに忙しいときでも、“丁寧さ”を忘れないことです」とのこと。

 

 

「なんとなく」からスタートした料理人の道。お客さんの近くで、その声に励まされ、先輩の仕事に料理の奥深さと楽しさを感じながら、一歩一歩を丁寧に歩む絵梨香さんです。

 

 

▲専門学校時代から愛用している絵梨香さんの包丁。お店が休みの日も自宅に持ち帰って手入れをしたり、お子さんに料理をつくったりしているそう。

 

 

▲尊敬する先輩たちと。「みなさんやさしくて、わからないことも丁寧に教えてくれます。私もそういうヒトに……」

 

 

谷 絵梨香さんが働く職場:ダイニングキッチン 侍(さむらい)

 

岩手県北上市青柳町2-3-9

Tel/0197-64-7260