KITAKAMI NEWS

【20代の肖像】vol.39 笑顔と元気を届ける にっかくらぁ~めん。

2023年6月5日

きたかみリズム×きたかみ仕事人図鑑

 

 

笑顔と元気を届ける
にっかくらぁ~めん。

 

 

vol.39  日角 心音(ひすみ ここね) 20歳

 

 

キャンプと遊びに夢中。補聴器があれば問題なし。

 

 

日角 心音(ひすみ ここね)さんは生まれたときから聴覚に障がいがありました。しかし、補聴器があれば日常生活もほとんど支障なく過ごせるため、学校も周りの友達と同じように普通学校に通いました。

 

 

そんな心音さんに子どもの頃の思い出を尋ねると……。」

 

 

「小さい頃はキャンプばかりしていました。それ以外でも野球をしたり、サッカーをしたり……。ほとんど男子と遊んでいて、とにかく体を動かすのが好きでした。鬼剣舞も子どものときからやっていて、一生懸命に踊っているとストレス発散になって楽しいんですよ」

 

 

そう言って笑顔を浮かべる心音さんに将来の夢をうかがうと……。

 

 

「お父さんがベアーベルにペンションを建てると言っているので、いつかそこでベッドメイキングをしたり、ご飯をつくってお客さまをもてなしたり、そういうことをやりたいんですよね」

 

 

 

ベアーベルとは心音さんのお父さんが手掛けるキャンプ場で、北上市の西部に位置する夏油高原にあります。心音さんのお父さんもキャンプが大好きで自分のキャンプ場を持ちたいという夢を持ち、理想の場所を探し求めてアチコチをめぐり、奥様の実家がある北上市を訪れたとき、ようやく出会えたのが現在の場所でした。

 

 

それから一人で山を切り拓き、コツコツとキャンプ場を手づくりし、2011年8月に「キャンプグランド ベアーベル」をオープンさせます。

 

 

以来、四季折々表情を変える夏油高原の美しい自然と、水回りに温泉を活用して冬でもキャンプが楽しめる快適な環境、さらにテレビ東京が手掛けるテレビ番組「TVチャンピオン極(きわみ)」でテントを張る技術・センス・キャンプ飯のおいしさなどが評価され初代キャンプ王に輝くオーナーのオープンマインドな性格も相まって、ベアーベルは北は北海道から南は関西までさまざまな地域から一年を通じて多くのキャンパーが訪れる人気のキャンプ場となっています。

 

 

自分のチカラでコツコツと夢を叶えていくお父さんの様子を間近で見て育った心音さんももちろんキャンプが大好きで、気づけばベアーベルに建つ予定のペンションでお客さまをもてなしたいと思うようになったそう。

 

 

だからこそ、高校卒業後はそうした経験が積めるホテルや旅館などで働きたいと思っていました。しかし……。

 

 

▲真ん中でピースしているのが心音さん。2人のお兄ちゃんと弟と

 

 

▲写真左:子ども時代、車の前で手を振る心音さん。写真右上:理想のキャンプ場を探し求めてたどり着いた夏油高原。この後、心音さんのお父さんが手づくりでキャンプ場に。写真右下:現在のベアーベルは多くの雑誌で取り上げられる人気のキャンプ場に。

 

 

▲夏油高原の美しい自然のなかで一年を通じてキャンプが楽しめるベアーベル。いずれはここにペンションを……。

 

 

耳のこと……。就職活動でよぎる不安。

 

 

「高校時代は瀬美温泉(ベアーベルのご近所にある温泉宿)でアルバイトもしていたんですよ。布団を敷いたり片付けたり、旅館の裏方の仕事をいろいろ経験させてもらえて楽しかったです」

 

 

そう語る心音さんは、その他にも高校時代に食物調理に関する基礎知識と技術を磨く「全国高等学校家庭科食物調理技術検定 1級」も取得。ベアーベルのペンションで働く夢に向かって準備を重ね、高校卒業後はさらにホテルや旅館などに就職して経験を積もうと思っていたそう。

 

 

 

 

しかし、高校3年になっていざ就職活動になると……。

 

 

「補聴器を付けていれば、ほとんど支障なく日常生活を送れるので問題ないと自分では思っているんですが、サービス業になるとお客さまとも接する仕事になるので、職場で他のスタッフの方とかお客さまが私の耳のことを気にされるんじゃないかと思っちゃって……」

 

 

そう考えてしまうと、なかなか就職先を決められず、次の一歩が踏み出せなかったそう。そんなとき先生が紹介してくれたのが、心音さんが現在通っている「岩手県立盛岡聴覚支援学校 専攻科」です。

 

 

「見学に行ったら街の中にある学校とは違って周りに自然が多いところも良かったし、手話が学べるところもいいなと思って進学を決めました」

 

 

「盛岡聴覚支援学校 専攻科」は、聴覚に障がいを抱える高校生が高校卒業後もさらに学びを深めながら、将来の就職に向けてさまざまな経験を積み、職業能力のさらなる向上を図れる2年制の学校です。

 

 

心音さんは現在、同科の2年生。

 

 

「今は手話なども学びながら、機械講習にも取り組んでいます。基本的に何かを手づくりするのが好きで、高校時代は機織りの勉強もしていました。機械講習では何でもつくっていいことになっているので、キャンプ道具のペグをつくったり、焚き火台をつくったりしています。その中でもペグはベアーベルの常連さんに見せたら『欲しい』と言われて、うれしかったです(笑)」

 

 

その言葉からも充実した学校生活を送っている様子が伝わってきます。そんな心音さんですが、もうひとつ昨年からチャレンジしていることが……。

 

 

▲週末はベアーベルの仕事を手伝っている心音さん。ベアーベルを訪れるキャンパーは常連さんが多く、心音さんとも顔なじみ。会話も弾みます。

 

 

▲機械講習で心音さんがつくったペグ。上部に動物をあしらったかわいいペグは、ベアーベルの常連さんにも好評。

 

 

▲心音さんは週末になるとベアーベルの一角で……。

 

 

笑顔と元気でおもてなし。やっぱり接客は楽しい。

 

 

心音さんは昨年から学校が休みの週末になるとベアーベルの一角で「にっかくらぁーめん」というラーメンをつくり、提供しています。

 

 

心音さんのお父さんは、キャンプ飯のおいしさも評価されてテレビ番組「TVチャンピオン極(きわみ)」で初代キャンプ王に輝いたほど料理の腕も抜群。この「にっかくらぁーめん」も心音さんのお父さんが考案し、さまざまなキャンプ場で開催されるイベントなどで提供したところ、スープを前日から仕込むなどこだわりが詰まった一杯が「キャンプ場で食べるラーメンのレベルじゃない」と大評判に。

 

 

その秘伝のレシピとラーメンのつくり方を師匠(お父さん)直伝で学び、現在ではスープの仕込みからお客さまにラーメンを提供するまでを心音さんが一人で全部こなしています。

 

 

▲この日は師匠(お父さん)とつけ麺用のスープの味をチェック。

 

 

しかも、そのおいしさが評判を呼び、現在ではベアーベルを訪れるキャンパーだけでなく、このラーメンを食べるためだけに訪れるファンもいるほど、心音さんがつくる「にっかくらぁ~めん」は人気を集めています。

 

 

その日々を心音さんはどう感じているのでしょうか。

 

 

 

 

「お客さまからは『とんこつスープがおいしい』とよく言われます。お父さんからも『完璧じゃん』と言われます。でも、自分的にはまだまだ。もっとがんばらなきゃと思っています。

 

 

ただ、いろんなヒトとコミュニケーションを取るのが好きなので、やっぱり接客の仕事は楽しいなあと改めて思いました」

 

 

“耳”のことでホテルや旅館への就職に不安を感じていた心音さんですが、「にっかくらぁ~めん」でお客さまをもてなす日々が少しずつ自信につながっているよう。今年の就職活動はきっと……。

 

 

そんな心音さんに、お客さまと接するうえで大切にしていることをうかがうと……。

 

 

「やっぱり笑顔は大事ですよね。それに元気さも忘れないこと、ですね」

 

 

心音さんの笑顔と元気が加わって、さらにおいしくなっている「にっかくらぁ~めん」。ぜひ、ご賞味ください。

 

 

▲メニューはラーメン(上段)とつけ麺(下段)の2種類。スープはもちろん肉厚チャーシューは単品で食べてもおいしいと評判。

 

 

▲テントでも食べられるように出前にも対応。ちなみに「にっかくらぁ~めん」とは「日角(ひすみ)」という苗字を「にっかく」と読むヒトが多いことから。

 

 

▲「にっかくらぁ~めん」は心音さんの学校がお休みの週末にオープン。

 

 

日角心音さんがお手伝いしているキャンプ場:

キャンプグランド ベアーベル

岩手県北上市和賀町岩崎新田1-149-3
Tel/090-3698-5616