KITAKAMI NEWS

【20代の肖像】vol.37自分らしく。 スポーツの魅力を伝えたい。

2023年3月23日

きたかみリズム×きたかみ仕事人図鑑

 

自分らしく。
スポーツの魅力を伝えたい。

 

 

vol.37  堀川 航貴 27歳

 

 

 

走ることが好き。大きな挫折を乗り越えて。

 

 

 

堀川航貴(かずき)さんが「陸上競技」と出会ったのは中学のとき。

 

 

「今、実業団駅伝などでも活躍している照井明人さんが1つ上の先輩なんですが、小さい頃から一緒に遊んだりして仲が良くて、その照井さんに誘われたのがきっかけで陸上の大会にも参加するようになりました」

 

 

中学では野球部だった堀川さんですが、もともと走ることも大好きで、参加したロードレース大会では入賞するなど結果を残し、気づけば地元の専修大学北上高校 陸上部で活躍する照井さんの背中を追いかけて同じ高校の陸上部へ。

 

 

 

 

「最初は全然だめでしたが、2年生の新人大会でようやく3位に入って東北大会にも行くことができました。本当に陸上漬けの毎日だったので、人生でも初めて表彰台にのぼれたときはうれしかったです」

 

 

その後も練習を重ねタイムも少しずつ伸びていきますが、東北大会の壁は超えられず、冬の全国高校駅伝への出場も叶わず「陸上は高校で辞めよう」と思っていたそう。しかし……。

 

 

「3年の東北大会のときに専修大学の監督さんが自分の走りを見て声をかけてくれたんです」

 

 

専修大学 陸上競技部は大正13(1924)年に創部。箱根駅伝は優勝1回、現在まで71回の出場を誇る歴史と伝統があります。そんな駅伝部の監督に誘われて「箱根駅伝出場」という大きな目標が堀川さんにできました。

 

 

しかし、新たな試練が。

 

 

「大学時代はケガが多くて思うように走れなかったですね。特に大学2年のときはレースにも出られない状態が続いて、いろんなところで治療したんですが、どこに行っても原因不明で治せないと言われて……」

 

 

その影響で大学2年の秋からはレースに出ることを断念し、チームのサポートに。選手として「箱根駅伝出場」という夢も諦める大きな挫折となりましたが……。

 

 

「陸上競技部は4年間寮で生活するんですが、みんなすごく仲が良かったんですよ。ですからレースに出られないのはすごく悔しかったですが、その分チームをサポートしてみんなを支えたいと思うことができて腐らずに部の活動を続けることができました。その経験は自分の財産ですね」

 

 

堀川さんは笑顔でそう語ってくれました。

 

 

▲東北大会の5000mに出場し、先頭を走る高校時代の堀川さん。

 

 

▲大学時代、「世田谷246ハーフマラソン」にて。

 

 

▲専修大学の卒業式にて、決めのポーズで駅伝部の仲間と。

 

 

支えられる人から、支える人に。

 

 

大学卒業後、堀川さんはスポーツ関係の営業の仕事を1年ほど経験し、2019年から地元・北上市に戻り「北上市スポーツ協会」へ。同協会は北上市の体育施設の管理運営を行いながら、市民の健康増進と体力の向上を図るスポーツ振興事業を幅広く展開しています。

 

 

堀川さんは年間を通して多種多様なスポーツ教室やロードレース大会などの各種スポーツイベント、有名アスリートの講演会などを企画・運営。子どもからお年寄りまで誰もが気軽に身体を動かして心地よい汗を流したり、スポーツの楽しさに触れたりする機会を提供しています。

 

 

「この仕事を担当してもうすぐ5年になりますが、毎日がすごく楽しいです。自分たちで企画を考えて、準備をして、それがカタチになって、みなさんに喜んでいただけたときはすごく達成感があります。

 

 

ロードレース大会も企画・運営していますが、それは自分が小・中学校のときに選手として出場していた大会でもあるんですよ。その大会を今度は支える側で携われるというのは感慨深いというか、幸せなことですよね」

 

 

走ることが好きで中学で陸上競技と出会い、高校、大学と陸上を通じてさまざまな経験を積み、夢を追いかけてきた堀川さんにとって、それを支える側に回った今の仕事は大きなやりがいとなっていました。

 

 

 

 

しかし、今でこそ楽しいと思える協会の仕事ですが、最初はとまどい悩むことも多かったそう。

 

 

「もともと人前で話すとか、人に教えるというのは苦手だったんですよ。スポーツ関係の仕事に就きたいと思ってはいましたが、最初に経験したスポーツ関係の営業の仕事も自分には向いていないと改めて思いましたし、協会の仕事も最初は事務の仕事だと思っていたので……。

 

 

でも実際に働いてみたら、それが“人に教える”という仕事だとわかったときは戸惑いましたし、最初の頃は先輩たちのようにできなくて本当に悩みました」

 

 

そんな堀川さんの不安をときほぐしてくれたのは、先輩の前向きな言葉でした。

 

 

 

▲堀川さんが担当するスポーツ教室の様子。

 

 

▲世代に合わせて「伝え方」にも心を配る堀川さん。説明の仕方、声掛けなど、どうすれば楽しく前向きに取り組んでもらえるか、日々模索の日々だそう。

 

 

▲堀川さんの職場は北上総合運動公園の中に。

 

 

▲国際的な大会にも使用できる第1種公認の北上陸上競技場の内部。たくさんの思い出の中には堀川さんを陸上の世界に導いた照井明人さんのサインも(右下)。

 

 

自分らしく。スポーツの楽しさを多くの人に。

 

 

「自分を指導してくれたのが係長の前川さんなんですが、自分の中でスポーツのインストラクターと言えばハツラツとした体操のお兄さんのようなイメージがあって、それがまさに前川さんなんですよ。

 

 

ですから自分もそうならなければと思い込んでいたのですが、性格的にも自分は前に出るタイプではなくて、なかなか前川さんのようにできなくて悩んでいました。

 

 

そのことを前川さんに相談したら『キャラクターというのは人それぞれだから、別に俺をめざす必要はない。逆にみんなが同じタイプだったら面白くない。自分らしいインストラクターをめざせばいいんだよ』と言われてすごく安心しました。

 

 

無理にキャラクターを変えずに、自分らしく、自然体でやろうと思えるようになってからですね、今の仕事が楽しくなったのは」

 

 

 

 

そう言って笑顔を浮かべる堀川さんですが、ひとつ悩みを克服してもまた新しい悩みが……。

 

 

「単純に運動してもらうだけではなくて、楽しく、前向きに取り組んでもらうためにはどうすればいいか、日々工夫しながらやっているのですが、伝え方が難しいんですよね。

 

 

小さいお子さんからご高齢の方まで、いろんな世代の方がいらっしゃいますが、やっぱり子どもと大人では伝え方は全然違いますし、同じ子どもでも一人ひとり全然違います。どこまで噛み砕いて説明したらいいのか、あまり噛み砕きすぎても楽しくないだろうなとか、声掛けひとつとってもどのように声を掛けたら楽しく前向きに取り組んでもらえるだろうかとか、伝え方が本当に難しくて未だに悪戦苦闘しながらやっています」

 

 

そう言って照れ笑いを浮かべる堀川さんからは、その苦労も楽しんでいる前向きさが伝わってきました。そんな堀川さんに今後の目標を尋ねると……。

 

 

「自分は高齢者の方と話すのが好きなんですよ。ですから今後は高齢者の方の運動指導のために介護予防運動指導士の資格を取りたいですね。

 

 

今は実家で90歳のじいちゃんと85歳のばあちゃんと暮らしているんですが、2人にはまだまだ元気でいてもらいたいので、自分が学んだことが地域の高齢者の方はもちろん、じいちゃんばあちゃんのためにも役立てられたらいいなと思っています」

 

 

自分を育んでくれた街で。自分らしく、自然体で、大好きなスポーツの魅力を伝えようと奮闘している堀川さんです。

 

 

▲高齢の方を対象にしたスポーツ教室の様子。

 

 

▲堀川さんの趣味は「温泉めぐり」。写真はばあちゃんとよく行く地元の「瀬美温泉」にて。

 

 

▲原因不明の足の痛みもなくなり、昨年はフルマラソンにチャレンジ。しかし、「サブ3」(3時間を切ること)は達成できず、次は「サブ3」が目標に!

 

 

▲職場のみなさんと。

 

 

堀川航貴さんが働く職場:公益財団法人 北上市スポーツ協会

 

 

岩手県北上市相去町高前檀27-36 北上総合体育館(北上総合運動公園内)
Tel/0197-67-6720