KITAKAMI NEWS

【20代の肖像】vol.31 父の背中を追いかけて 電気工事士へ。

2022年10月4日

きたかみリズム×きたかみ仕事人図鑑

 

 

 

 

父の背中を追いかけて
電気工事士へ。

 

 

vol.31  伊藤光星(いとう こうせい) 21歳

 

 

その言葉に背中を押されて。

 

 

電気工事士のお父さんが独立し、もう一人の仲間とともに秋田県大館市で「タクミ電機」という会社を立ち上げたのは、伊藤光星さんが5歳の頃。それから忙しく働くお父さんの背中といっしょに、少しずつ会社が大きくなっていく様子を、光星さんは誇らしく眺めていました。

 

 

そんな光星さんがお父さんの会社で、同じ電気工事士として働こうと思ったのは、高校2年生のとき。

 

 

「高校は普通科でしたし、僕自身は大学に進学して留学したいと考えていたので、電気工事士になろうとは思ってもいませんでした。でも、いろいろあって大学進学をあきらめなければならなくなったとき、父が『一緒にやらないか』と声をかけてくれたんです。

 

 

当時は普通科の僕にはできない仕事だと思っていたので、父をはじめ従業員のみなさんにも相談してみたら、新入社員の3割は普通科出身だとわかったんです。しかも、みなさん入社後にOJT(On the Job Trainingの略=実務を体験しながら仕事を学ぶこと)や資格取得支援を受けてさまざまな資格を取得して活躍しているんですよ。

 

 

それがわかって、『よし、僕もやってやろう!』と思ったんです」

 

 

 

 

光星さんのお父さんは、2人からスタートした会社を社員90人にまで拡大させた経営者としてだけでなく、電気工事技能競技の全国大会に秋田県代表として出場するなど電気工事士としても第一線で活躍しています。

 

 

そのヒトの言葉に背中を押されて、電気工事士の世界に飛び込んだ光星さんですが、入社後まもなく地元・大館市を離れて……。

 

 

「株式会社 タクミ電機工業」の 北上営業所は、2020年6月に誕生しました。それに合わせて光星さんも入社3ヵ月目で地元・秋田県大館市を離れ、北上市へやってきたのでした。初めての仕事、しかも知らない土地……。そこに不安はなかったのでしょうか。

 

 

▲小学生からはじめた野球は「強肩」のキャッチャーとして恐れられ、高3のときには逆転満塁ホームランを放ち、ヒーローに。野球で学んだチームワークが今の仕事にも生きているそう。

 

 

▲秋田県大館市にある「タクミ電機工業」の本社屋根には太陽光パネルを設置。再生可能エネルギー事業にもチカラを入れる同社は日本SDGs協会の認証を受け、さらに「再エネ100宣言RE Action(アールイーアクション)」にも参加し、使用する電力を100%再生可能エネルギーで賄う取り組みを実践。

 

 

▲光星さんが働く北上営業所

 

 

 

たくさんの現場を体験。毎日が学びの場。

 

 

 

「北上営業所は開設されたばかりで従業員が少ない分、自分に任せられる仕事も多くて、たくさんの経験を積むことができています。それに電気工事士は資格もたくさんあって、資格を取得するほど仕事の幅もひろがっていくので、それもやりがいになっています」

 

 

▲作業をする光星さん

 

 

▲この日は北上市内の建築現場で、発電機の設置作業を担当。

 

 

 

新しい土地で不安はなかったかと尋ねると、元気にそう語ってくれた光星さん。「タクミ電機工業」では一般住宅はもちろん商業・工業・医療・公共などの施設の電気設備工事に加え、住宅用太陽光発電システムや日本初となる超小型木質バイオマス発電システムなども手掛けています。しかも、住宅用太陽光発電システムの施工実績は北東北でNo.1に輝くなど、施工現場も全国にひろがっています。

 

 

また、光星さん自身、資格も第二種電気工事士を皮切りに、高所作業車、酸素欠乏危険作業、低圧電気取扱者特別教育、車両系建設機械基礎工事などの資格を取得し、この秋には第一種電気工事士の資格試験も受験するそう。

 

 

「北上営業所の現場は、北上市内はもちろん県内各地にあって、再生可能エネルギーの仕事では群馬県や、遠くは島根県まで行きました。

 

 

電気工事といっても、現場が違えば施工方法も違っていて毎日が勉強です。例えば、ハロウインターナショナルスクール(この夏に八幡平市に開校した日本初の英国式全寮制インターナショナルスクール)の音楽棟なども担当させていただきましたが、その現場ではコンセントのボックスを壁の中に仕込む作業があって、ボックス1個1個に防音シートを貼るんですよ。そういう施工方法も僕には初めての経験で、現場ごとにたくさんの学びがあって毎日が楽しいです」

 

 

そんな光星さんにとって、一番うれしい瞬間は?

 

 

「やっぱり自分で作業して、分電盤もキレイに結線して、いざ電気を流して問題なくすべてが点灯したときは達成感があります。

 

 

それに最近でいえば、『車両系建設機械基礎工事』の資格も取得したんですよ。それがあると建柱車を使って電柱を建てる工事もできるんですけど、この間は現場の敷地の隣がクルマ屋さんで、前が道路で……。そこに電柱を建てるときは『倒したらやばい!』という緊張感があって、でもそれがうまくできたときはすごく感動しました(笑)」

 

 

普通科から電気工事士の世界に飛び込み、しかも新しい土地で奮闘する光星さんですが、言葉のひとつひとつから仕事と楽しく向き合えている様子がよく伝わってきます。きっと、お父さんからもたくさんのことを学んでいるのかと思いきや……。

 

 

 

▲穴掘建柱車を操作し、電柱を建てる光星さん。右の写真は光星さんが手掛けた分電盤。「キレイでしょ! 師匠(柿澤支社長)ゆずりの技です」と光星さん。

 

 

▲「タクミ電機工業」では太陽光発電や超小型木質バイオマス発電システム(写真右下)なども手掛けており、光星さんもその工事のため、県内はもちろん県外に行くことも。

 

 

 

 

改めて気づく父のすごさ。いつか自分も……。

 

 

「実は父と同じ現場になることは、ほとんどなかったんですよ」

 

 

そう語る光星さんに、仕事を教えてくれるのは現場の先輩たち。

 

 

「北上営業所は平均年齢が33歳と若いですし、みんな仲がいいんですよ。先輩たちも面白いお兄ちゃんという感じで、仕事には厳しいですが教えるときはやさしく丁寧です。うちの会社は自分も含めて若い未経験のヒトも多いですが、若くても未経験でもがんばれば活躍できるのは、そういう先輩たちがいるお陰だと思います」

 

 

 

 

 

さて、電気工事士となって3年目。お父さんと同じ仕事に携わって、改めて憧れだった「父」の姿はどのように見えているのでしょう。

 

 

「今まで同じ現場になることはほとんどなかったんですけど、最近になってバイオマス発電の現場に行かせてもらえるようになって、その現場は父が担当しているんですよ。その現場で状況に合わせて施工方法も瞬時に思いついて的確に現場を仕切っているのを間近で見ると、やっぱり場数を踏んでいるヒトはすごいなあと思いました」

 

 

照れ臭そうにそう語ってくれた光星さんの直近の目標は、第一種電気工事士の資格を取ること。

 

 

「この秋に試験があるんですよ。第一種を取ったら次は施工管理の資格もあるし……。まだまだ資格もいっぱいあるので、いろいろ挑戦していきたいですね」

 

 

父の背中を追いかけて……。笑顔でそう語る光星さんの眼差しはキラキラと輝いていました。

 

 

 

▲北上市のコミュニティFM「きたかみE&Beエフエム」の番組「北上地区で働くということ」に出演したときの様子。写真左が光星さんの師匠であり、岩手エリアを統括する柿澤支社長。

 

 

▲社内研修の様子。3年目の光星さんは教える立場に。教えるときは他の先輩同様、面白いお兄ちゃんとして「やさしく・わかりやすく・仕事には厳しく」がモットー。

 

 

 

▲光星さんの腰道具と愛用のニッパー。この日はお父さんの作業着を着用。父の背中に追いつく日は……

 

 

 

伊藤光星さんが働く職場:株式会社 タクミ電機工業 北上営業所(外部サイトへリンク)

 

 

岩手県北上市和賀町長沼5-391
Tel/0197-72-8535