KITAKAMI NEWS
【20代の肖像】vol.79 インドネシア人と日本人。 地域にひろがる友情のリズム。

インドネシア人と日本人。
地域にひろがる友情のリズム。
vol. 79
フサイン・アルカエダ |
24歳 |
ティノ・ハルティント |
24歳 |
菊池 竜馬(きくち たつま) |
29歳 |
|---|
ティノの声が出ない! ピンチを救ったのは?
8月22日、日中の暑さもやわらぎ、涼やかな風が吹き抜ける土曜の夜、北上市内にあるシーフードレストラン「バハマ」の店内はあたたかな拍手で包まれていました。

▲北上市内にある食と遊びのエンターテインメント複合施設「アメリカンワールド」にあるシーフードレストラン「バハマ」。
この日行われたのは、お食事をしながら生演奏も楽しめる同レストランの人気企画で、ステージに立つのは北上市を拠点に活動する3ピースバンド「FUTITA」(フティタ)です。メンバーは、技能実習生としてインドネシアから北上市にやってきたフサイン・アルカエダさんとティノ・ハルティントさん、そして北上市出身で現在は紫波町で暮らしている菊池竜馬さんです。

▲J-POPを中心に、童謡、演歌、オリジナル曲などメロウな楽曲で観客を魅了する「FUTITA」。ティノさんのやさしく繊細な歌声と竜馬さんの力強いボーカルが好評!
3人の出会いは……。
「フサインが通っているピアノ教室の発表会です。その頃はフサインがピアノを弾いてティノが歌を歌っていたのですが、発表会の前にティノが体調を崩して『声が出ない!』となって……。ピアノ教室の先生が僕の中学・高校の同級生のお母さんで、もともと顔馴染みだったんですよ。それで僕がギターを弾いたり歌を歌ったりするのが好きなことも知っていたので、『ちょっと助けて』と声をかけられたんです」(竜馬さん)

▲写真左上)ピアノを担当するフサインさん。 右上)ボーカルのティノさん。 右下)ボーカルとギター担当の竜馬さん。「FUTITA」は3人の名前の頭文字をとって命名。
ティノさんの声が出なくなり、大事な発表会を前に不安を抱えていた2人ですが……。迎えた当日、そのピンチを救おうとギターを片手に爽やかな笑顔で現れた竜馬さんを見て、2人は「かっこいい!」と思いながら一緒に演奏したそう。一方、竜馬さんも外国人が日本に来て、日本のピアノ教室に通い、日本語の歌まで歌ってみんなの前で披露するなんて「自分だったらできない。すごいな」と2人を尊敬しながら演奏したそう。こうした事情もあり、3人が一緒に練習する時間もなく、当日はぶっつけ本番だったそうですが……。
「その割にはスムーズにできて、なんかしっくりくるなあと思いながらギターを弾いていました(笑)」
と竜馬さんが語る通り、発表会も3人で楽しく乗り越えることができ、加えてその数ヵ月前にNHK「のど自慢」の予選会に3人とも参加していたことが判明。すっかり意気投合した3人は「FUTITA」を結成し、一緒に活動することに。
しかし、ここで気になるのが、日本のピアノ教室に通っているフサインさん。技能実習生として働きながら、異国の地で地元のピアノ教室に通うことに不安はなかったのでしょうか?

▲ライブではお客さんから「3人の雰囲気が楽しそうでいいね」とよく言われるほど、普段から仲が良い3人。
「なまり」に苦労。出会いに支えられて。
そもそもフサインさんがピアノ教室に通おうと思った理由は……。
「インドネシアにいたときからピアノを弾きたいとずっと思っていました。でも、向こうではピアノも買えなくて……。それから日本に来たのですが、ピアノを弾きたいという気持ちはずっと変わらなかったので、北上市で働きながら電子ピアノを買って独学で練習していました。でも、なかなか上手にできなくて、会社の人に相談したらピアノ教室を紹介してくれたんです」(フサインさん)

▲写真左)ピアノ教室でピアノの練習をするフサインさん。 右上)NHK「のど自慢」の予選会場でティノさんをパチリ! 右下)ピアノ教室の発表会で意気投合し、「FUTITA」として音楽活動をスタートした3人。
異国の地でピアノ教室に通うことに、フサインさんは……。
「もともと日本に来たのも技術を学びながら働くことが目的で、ピアノ教室に通うことになるとは思ってもいませんでした。それに会社の人以外の日本人と話したこともほとんどなかったので、地域の人とうまくコミュニケーションできるか不安でした。でも、ピアノ教室の先生もやさしくて、少しずつ慣れていくことができました」(フサインさん)
その様子を間近で見ていたティノさんは……。
「1人で練習しているときは全然弾けなかったんですよ。でもピアノ教室に通うようになって、少しずつうまくなって、いろんな曲が弾けるようになったので、すごいなと思って見ていました」(ティノさん)
不安を抱えながらも地域に飛び込んでいくフサインさんやティノさんを陰で支えていたのが、外国人向けの日本語教室や外国人も日本人も楽しめるイベントの企画を行っている「北上市国際交流協会」です。

▲2人が通う日本語教室を運営する「(一社)北上市国際交流協会」にて。
同協会のホームページはこちら
「インドネシアで4ヵ月くらい日本語を学んで、2022年7月に日本に来ました。最初の1ヵ月は千葉県にある施設で日本の文化などを学びました。そこでは簡単な日本語は理解もできたのですが、北上市に来たら全然できなくて、最初はコミュニケーションにすごく苦労しました。やっぱり『なまり』が難しくて(笑)」(ティノさん)
「それで会社の紹介で北上市国際交流協会の日本語教室に通うようになって、それから少しずつ慣れていきました」(フサインさん)
「今は『なまり』も大丈夫です。『んだ』も覚えて使っています(笑)」(ティノさん)
「FUTITA」結成から1年半。現在は地域のイベント参加や自主ライブなどで月に2~3回はライブを行っているそう。「なまり」で苦労した2人も現在は……。
「地域のイベントとか飲食店さんなどからの出演依頼が、フサインやティノに直接来ることも多いんですよ。もちろん相手は日本人なんですけど、そのやりとりやスケジュール管理も2人でできちゃうので、今では全部お任せしています(笑) 2人とも本当にすごいなと思います」(竜馬さん)
そんなフサインさんとティノさんの人柄に惹かれ、「FUTITA」の音楽からすっかり抜け出せなくなったのが……。

▲「FUTITA」の活動の様子。活躍の場は北上市だけでなく、紫波町、一関市、盛岡市などへ拡大中!

▲「(一社)北上市国際交流協会」の薄衣景子代表理事と。音楽を通して地域の人たちと積極的に関わっていく2人を、薄衣さんも応援!
仲間もワクワクもひろがる友情のリズム。
阿部紘也(ひろや)さんは紫波町出身ですが、北上市内の岩手県立黒沢尻北高等学校に入学し、竜馬さんと出会ったそう。
「FUTITAで初めて単独ライブをやるとなったとき、時間が90分あったので、楽器のバリエーションが増えるとさらに楽しくできるかなと……。『そういえばバイオリン弾ける奴いたな』と思って声を掛けました(笑)」(竜馬さん)

▲バイオリンの他、パーカッションも担当し「FUTITA」の音楽をサポートする紘也さん。
紘也さんは小学校1年生から中学校3年生までバイオリンを弾いていたそうですが……。
「僕がやっていたのはオーケストラのバイオリンだったので、いきなりポップスに合わせては弾けないだろうと思って最初は断ったんです。でも、やってみたら楽しくて抜け出せなくなりました(笑)」(紘也さん)

▲練習風景。みんなでアイディアを出し合い、「FUTITA」の音楽をつくっていくそう。
そんな紘也さんに、フサインさんとティノさんの魅力を尋ねると……。
「フサインとティノは2人で話すときも日本語なんですよ。そういう風に日本になじもうとがんばっているところがすごいと思うし、日本人としてもうれしいですよね。それにいつも明るくて一生懸命だし、とにかくかわいい弟みたいな感じで一緒にいるだけで楽しいんです(笑)」(紘也さん)

▲竜馬さんも「フサインもティノもいろんなアイディアを出してくれるので、やっていて楽しい」と語る通り、和気あいあいとした雰囲気で練習をする4人。
「一緒にいるだけで楽しい」というのは、他の3人も同じ。今年の春にはフサインさんとティノさんの帰省に合わせて、竜馬さんと紘也さんもインドネシアを訪れ、2人の家族と交流。それが、忘れられない思い出に……。
「家族の前で竜馬さんのギターに合わせて歌を歌ったら、お母さんが泣いていました。インドネシアにいるときは、恥ずかしいから家族がいないところで歌の練習をしていたので、僕が歌を歌うなんて家族は誰も知らなかったんです。だからびっくりして、でもそれがうれしかったみたいです(笑)」(ティノさん)

▲4人のインドネシアの旅の様子はFUTITA公式YouTubeチャンネルで公開中
YouTubeチャンネルはこちら
「僕もピアノを弾きたいという話を家族にしていなかったので、日本でピアノを弾いている動画を見せたらびっくりしていました(笑) 自分でも日本でピアノ教室に通って、日本人の前でライブをしているなんて、すごいなと思います(笑)」(フサインさん)
「ピアノ教室」がきっかけで地域に飛び出し、好きな音楽の可能性をひろげているフサインさんとティノさんは、竜馬さんや紘也さんとの友情を育みながら、地域との関わりを深め、そのワクワクをさらにひろげています。

北上市を拠点に活動するインドネシア人と日本人の音楽ユニット:
FUTITA

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