KITAKAMI NEWS
【20代の肖像】vol.78 大名行列と一緒に成長。 口内の豊かさを未来へ。

大名行列と一緒に成長。
口内の豊かさを未来へ。
vol. 78
菅野 拓真(かんの たくま) 22歳
菅野 那由太(かんの なゆた)21歳
記念すべき20回目。積み重ねてきた想い。
8月11日、緑豊かな山々に囲まれ、のどかな田園風景がひろがる住宅地を、華やかな大名行列が練り歩きました。ここは、北上市の東部に位置する口内地区。江戸時代には仙台藩と盛岡藩の藩境にあり、両藩を結ぶ脇街道が通っていたことから、仙台藩最北部の重要拠点として発展。当時は町を見下ろす小高い丘に「浮牛(ふぎゅう)城」と呼ばれるお館を構え、およそ100人の武士団が常駐しており、この「浮牛城」を中心に小城下町が形成されていたという歴史ある地域です。

▲「浮牛城まつり」の大名行列の様子。
この口内地区の夏を彩る「浮牛城まつり」のメインイベントとして毎年行われている大名行列は、1886(慶応2)年に領主が仙台から戻ったときの様子を再現したもので、「町を代表するイベントがほしい」という地域住民の声が契機となり、2007年に初開催。以来、地域の歴史と文化を後世に伝えることを目的に、地域住民が主体となって運営してきた大名行列は、新型コロナウイルスの影響で休止となった2年を除いて毎年開催されており、回を重ねて今回が記念すべき20回目となりました。

▲写真左)江戸時代、およそ100人の武士が常駐していた浮牛城は、地域を見守る浮牛城址公園に。 右上)公園から見た口内地区。 右下)「北上展勝地さくらまつり」を彩る口内傘は、天明の大凶作後、武士の内職としてはじまったものが今に受け継がれているそう。
この大名行列で、お殿様が乗る駕籠を担いだのが菅野拓真さんと菅野那由太さんです。口内地区で生まれ育った2人にとって「浮牛城まつり」の大名行列は、子どもの頃の楽しい思い出とリンクします。

▲大名行列の本番に向けて、7月26日に行われた全体練習の様子。

▲全体練習の前に、担当者の説明を聞く拓真さん(左)と那由太さん(右)。
「今は旧口内小学校が大名行列のゴールですが、僕たちが子どもの頃は浮牛城址公園がゴールでした。そこにはステージがあって、たくさんのテントも立って、『口内にもこんなに人がいたのか』と思うくらい人が集まってくるんです(笑) 子どもたちもたくさんいて、その光景にワクワクしていました」(拓真さん)
「僕もワクワクしていました。地域の人がたくさん集まってまつりを楽しむという、あのわちゃわちゃした感じが好きで、子どもの頃の夏の楽しい思い出です。僕にとって大名行列は小さい頃から当たり前に見てきたものなので、昔からあった行事だと思っていたら、今年で20回目だと知ってびっくりしました。僕たちとそんなに変わらないんだなと思って(笑)」(那由太さん)
地域の人たちが支える大名行列と一緒に成長してきた2人。その時間が育んできたものとは……。

▲8月11日の大名行列本番の様子。
離れて実感。口内の魅力と守るべきもの。
那由太さんは小学生の頃から大名行列に参加しています。
「両親が地域のイベントに積極的だったので、大名行列に参加したのもその影響です。僕が最初に担当したのは『草履取り』という役でした。わざわざ大名行列の足を止めて、たくさんの人が見つめるなかで、草履を高く投げてキャッチするという大名行列の目玉のひとつです。草履には鈴がついていて音がかわいいし見栄えもいいのでやっていて楽しいのですが、投げた草履を落としてしまうと一気に恥ずかしくなるんですよね(笑) 『草履取り』は4~5回やりました」(那由太さん)

▲過去の「浮牛城まつり」の大名行列の様子。左の写真が草履を投げてキャッチする様子。

▲那由太さん(写真左)が中学校3年生のときに大名行列に参加したときの様子。

▲那由太さん(写真左の青い帯の子)は4歳から地元に伝わる「八谷崎太神楽」(はちやざきだいかぐら)にも取り組んでおり、その頃から浮牛城まつりに参加しているそう。
その様子を拓真さんも誇らしく見ていたそう。
「『こんなに高くあげるんだ』と驚くくらい高くあげるので、『かっこいいなあ』と思って見ていました(笑) 僕は昔から地域のイベントが大好きだったのですが、部活が忙しくてなかなか参加できずにいたんです。でも大学生になって、ようやく時間も取れるようになって、那由太くんに誘ってもらって昨年初めて参加することができました。昨年も駕籠の担当だったのですが、実際にやってみると歩くだけでも大変で、見るとやるでは大違いでした(笑) でも、大名行列に参加できてうれしかったので、今年も参加したんです」(拓真さん)

▲全体練習の後に衣装合わせをする2人。
大名行列は「草履取り」や「駕籠持ち」の他、お殿様、お姫様、腰元、出迎える家臣団、御鉄砲、御建弓、御徒などさまざまな役割があります。「浮牛城まつり」の大名行列では、お殿様は主に芸能人やスポーツ選手など著名人が担いますが、それ以外はほとんど地域住民が担当しており、今年は71名が参加する華やかな大名行列となりました。
しかし、少子化や人口減少の影響は口内地区でも大きく、大名行列に参加できる地域住民の数も年々減ってきています。地元の高校を卒業後、拓真さんは盛岡市にある岩手大学、那由太さんは滝沢市にある岩手県立大学に進学し、大学の近くで一人暮らしをしているため、地元を離れて改めてその影響を客観的に感じるようになったそう。
「まつりや大名行列に対する情熱はみなさん変わらず熱いものを感じます。でも、まつりに参加してみると、改めて子どもの数の少なさにびっくりしますね」(拓真さん)
その言葉に那由太さんもうなずきます。そんな2人は大学4年生。来年は就職となりますが……。

▲今年のお殿様役は俳優の村上弘明さん。お姫様役の具志歩実さんは北上市と友好都市提携を結ぶ沖縄県石垣市の職員。昨年度、人事交流で北上市に来た際に口内のみなさんと交流したのが縁だそう。

▲今年の「草履取り」を担当した子どもたちの練習風景。

▲本番の様子。きっと忘れられない思い出に。
「いってらっしゃい」「お帰り」。次は僕たちが……。
拓真さんは岩手県の教員採用試験の2次試験に向けて勉強中。来年の春から高校の生物の先生になることを目指しています。
「母校の黒北(岩手県立黒沢尻北高等学校)で教育実習をやってみて、人を育てる先生という仕事は改めてやりがいのある仕事だと思いました。それに僕は野菜を育てるのが好きで、おじいちゃんが口内で農業をやっていて、自分もいつかおじいちゃんのように口内で農業をやりたいという夢があります。ですから先生になると県内の高校に配属されますが、北上市は交通の便がいいので、よほど遠くでない限りは口内から県内の高校に通うようにして、これからは地域にも貢献していきたいです」(拓真さん)

▲部活が忙しくて地域のイベントに参加できなったと語る拓真さんですが、小学生の頃は地域の神社に伝わる「下口内神楽」(しもくちないしんがく)の舞手だったそう。写真左から4人目が拓真さん。
「大学ではソフトウェア情報学部に入ってAIを学びました。その関係で関東で働いてみたいと思った時期もありましたが、口内を離れると地域のイベントに参加できなくなるので、北上市の企業に就職することにしました。 仕事は僕が大学で学んだ情報系のことを活かせる分野なので、好きなことを仕事にしながら、口内を盛り上げる取り組みにも参加して、これからも口内で暮らしていきたいです」(那由太さん)
口内が好きだと語る2人に、その魅力を尋ねると……。
「人があたたかいところです。小さい頃から登下校の通学路で、すれ違うおじいちゃん、おばあちゃん、地域の人たちみなさんが『いってらっしゃい』『お帰り』と声をかけてくれるんです。そのひと言がうれしかったですし、いつも元気をもらっていました」(那由太さん)
「僕も小さい頃からの夢が『いってらっしゃい』『お帰り』と地域の子どもたちに言ってあげられるおじいちゃんになることでした(笑) やっぱり人のあたたかさというのが口内の魅力だと思いますし、そういう口内を守っていきたいです」(拓真さん)
今年で記念すべき20回目の開催となった「浮牛城まつり」の大名行列。地域の歴史と文化を未来に伝えていこうと取り組む地域の人たちの想いは、楽しい思い出とともに若い世代の想いも育んでいます。

▲多くの観衆が67名の大名行列を見守り、ともにゴールとなる旧口内小学校へ。

▲「駕籠持ち」を一緒に担当する1つ上の先輩と3人で。
2人が参加したまつり:
口内地区「浮牛城まつり」

岩手県北上市口内地区
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