KITAKAMI NEWS
【20代の肖像】vol.75 鬼剣舞ってかっこいい! 4歳から変わらぬ想い。

鬼剣舞ってかっこいい!
4歳から変わらぬ想い。
vol.75 佐藤 優樹(さとう ゆうき) 26歳
4歳で隣りの街から練習に通う日々。
花巻市で生まれ育った佐藤優樹さんが「鬼剣舞」と出会ったのは、4歳の頃。
「何の公演を見たのかは覚えていないのですが、鬼剣舞を見て『かっこいいな』と思って、親に『鬼剣舞をやりたい!』と言ったことは覚えています(笑)」
しかし、住んでいるのは北上市ではなく花巻市で、鬼剣舞を踊る団体が近くにあるわけでもなく……。そこで奮闘したのが、優樹さんのお父さんです。
「その頃、父は北上市にある会社で働いていたので、そのつながりをたどっていろいろ探してくれたみたいで……。ただ、私もまだ4歳と小さかったので、『もう少し大きくなってからやった方がいいよ』とアドバイスされることが多かったみたいです。そうしたなかで『いいよ』と言ってくれたのが谷地鬼剣舞でした」

谷地鬼剣舞は大正元年(1912年)に滑田鬼剣舞から相伝され、以来100年以上の歴史をつむいでいます。そんな由緒ある団体に、念願叶って入会できた優樹さんは、毎週水曜日の夜に行われる鬼剣舞の練習に参加するため、花巻市から親御さんが運転する車で送り迎えしてもらう日々がスタート。
「4歳の頃は自分と同年代の子どもは誰もいませんでした。でも、寂しいとかつまらないと思ったことはなかったです。同年代はいないですけど、鬼剣舞を踊っている大人の背中を見て『かっこいいな』と思いながら練習していました。私の場合は特に当時の白面に憧れていて……、その方が私の師匠なのですが、今もずっと私の目標です(笑)」

▲公演にて。中央の白面が優樹さん。
そんな優樹さんに、鬼剣舞を続けるにあたって苦労したことを尋ねると……。
「小学生の頃は地元のサッカー少年団にも入っていたのですが、練習日が毎週水曜日だったんですよ。ですから水曜日は地元の小学校でサッカーの練習をしてから、親の車に乗って着替えて、母がつくってくれた弁当を食べて谷地鬼剣舞の練習に参加していました。
そのときはさすがに疲れて『鬼剣舞の練習に行きたくないなあ』と思ったこともありました(笑) でも、水曜日の夜は鬼剣舞の練習をすることが日常になっていたので、結局それが理由で練習を休んだことはなかったです。今思うと、花巻から毎週車で送り迎えしてくれた親には本当に感謝ですね」
笑顔でそう語ってくれた優樹さん。かっこいい大人の背中を間近に見ながら練習した小さい頃の思い出は、優樹さんの宝物になっています。

▲上段:3歳の頃から民俗芸能が大好きだった優樹さん。下段:4歳で初めて「北上・みちのく芸能まつり」に参加したときの様子。

▲小学生の優樹さん。家族に支えられ、鬼剣舞に夢中に。

▲10歳の優樹さん(写真中央)。憧れの師匠(写真左)と踊ったときの様子。師匠が使用していた毛ザイ(頭に付ける装束)は現在、白面を託されている優樹さんが使用。

▲公演の様子。師匠から受け継ぐ毛ザイも躍動する白面・優樹さんの華麗な舞。
子どもも大人と一緒に切磋琢磨しながら成長へ。
4月のとある水曜日の夜、江釣子地区にある谷地公民館を訪れると、3~4歳の子どもから大人までおよそ30人の男女が一緒になって鬼剣舞の練習に汗を流していました。

▲毎週水曜日19:30から行われる谷地鬼剣舞の練習。
「他の鬼剣舞の団体さんは少年団というものがあるんですけど、谷地鬼剣舞には少年団がないんですよ。ですから、毎週水曜日は子どもも大人もみんなで公民館に集まって一緒に練習をするんです。
私も大人のかっこいい踊りに憧れて、早く自分もそうなりたいと思って小さい頃から大人の背中を見ながら練習してきました。やっぱり憧れの踊りを練習のときからいつも間近で見てこられたからこそ私も成長できたと思っているので、少年団はありませんが、子どもと大人が一緒に切磋琢磨しながら練習できる環境が谷地鬼剣舞の魅力だと思っています」

▲自分の出番を待ちつつ、練習を見守る優樹さん。
その日々の練習をリードするのは、谷地鬼剣舞の白面を任されている優樹さんです。鬼剣舞には白・緑(青)・赤・黒の4色を基本とした面がありますが、白面を付けられるのはリーダー格の者1人だけで「一剣舞」とも呼ばれています。優樹さんは谷地鬼剣舞の白面として、公演の演目やメンバー構成、誰がどのポジションを担当するかも考えているそう。26歳という若さで、100年を超える歴史ある団体を引っ張っていくのは大変そうですが……。
「昔は誰よりも目立ちたいとか、お客さんに『一番かっこよかったよ』と言われたいとか、自分のことばかり考えて踊っていました(笑)
でも今は常に全体のことを意識して、チームとしてどう見せるべきか、お客さんにはどう見えているか、お客さんに喜んでもらうためにはどうすればいいか、その上で踊るみんなも楽しめるにはどうしたらいいかを考えるようになりました。
100年以上の歴史ある団体の白面としての責任は重いですし、公演の演目やメンバー構成を考えるのも大変ではありますが、その時間は鬼剣舞が好きな私にとって楽しくもあります」
そんな優樹さんは谷地鬼剣舞の白面として、鬼剣舞の魅力を未来に受け継いでいくために……。

▲練習前に白面の手入れをする優樹さん。

▲練習を終えて。谷地鬼剣舞のメンバーと。
鬼剣舞を踊る喜びを子どもたちへ。 未来へ。
GWのとある日、花巻市内のショッピングモールのエントランスホールが、たくさんの人で埋め尽くされていました。その視線をくぎ付けにしているのが谷地鬼剣舞です。2回にわたって行われたこの日の公演は、大人たちが披露する勇壮な舞とともに、次代を担う子どもと大人が一緒に踊る演目も。

▲花巻市内のショッピングモールでの公演の様子。
「子どもたちには、楽しいなと思ってもらえる環境づくりが大事だと思っています。練習を続けていくことはやっぱり大変ですけど、でもがんばって本番を見に来てくださったお客さんに喜んでもらえたときはすごくうれしいですし、楽しいんですよ。そういう場を子どもたちにも常に用意してあげたいと思っています。
ですから演目選びはもちろん配列も大事で、誰と誰を組み合わせるのか……。例えば、経験が少ない子と多い子が並んで踊るのではなく、できる子がサポートしてあげられるような位置関係を考えたり、練習を見ていて『この子は上手になってきたから今度はこの場所を任せてみよう』とか『この子とこの子を組み合わせると切磋琢磨していい踊りができるんじゃないか』と配置を変えてみたり……。そうやって配列も工夫しながら、たくさんのお客さんの前で練習の成果を披露することで、『自分でもできるんだ、できたんだ』という喜びを実感してもらいたいと思っています」

▲優樹さんも白面として力強くダイナミックな踊りを披露。
人前で踊ることの喜びは、優樹さんも強く実感しています。
「公演に行くと、いろんなお客さんと出会えるんですよ。そうするとお客さんから声をかけられることもたくさんあって、『よかったよ』『かっこよかったよ』と言ってもらえて、私もそれがうれしくて、鬼剣舞を踊るやりがいにもなっています。
お客さんとの出会いのなかですごく印象に残っているのが、展勝地のさくらまつりの公演に四国から見に来た方がいて……。その方は病気だったそうなんですが『鬼剣舞を見て生きる力をもらった』と言ってくださって、私自身も『鬼剣舞は見る人にパワーを与えることもできるんだ』と実感することができましたし、鬼剣舞を続けてきてよかったと改めて思いました。そういう経験を子どもたちにもたくさんしてもらいたいですね」
噛みしめるようにそう語ってくれた優樹さんに、今後の目標を尋ねると……。

▲公演を見たお客さんと触れ合う谷地鬼剣舞のメンバーたち。
「4歳の頃から鬼剣舞をやってきて、谷地鬼剣舞はもちろんそれ以外の団体にもかっこいい大人たちがいて、尊敬できる方や団体を超えて切磋琢磨しあえる同世代の仲間にもたくさん出会うことができました。そういう方たちと鬼剣舞の話をするのは楽しいですし、『大好きな鬼剣舞を未来につないでいこう』という熱い気持ちはみんな同じで、私も『がんばろう』といつも刺激をもらっています。
そういう意味でも今後の目標は、やっぱり鬼剣舞をどう未来に受け継いでいくか……。私自身、かっこいい大人の背中を間近に見ながら成長してきたからこそ、今の私があります。そんな私が師匠をめざしていたように、子どもたちにも私の踊りをかっこいいと思ってめざしてもらえるような躍り手になりたいですし、そうやって100年以上も受け継がれてきた谷地鬼剣舞の踊りを子どもたちに継承していきたいです」
鬼剣舞は地面を強く踏みしめながら勇壮に舞う踊りです。優樹さんがめざすのは、そんな鬼剣舞の魅力をいかし、地に足をしっかりとつけ、どっしりと大きく構えながら力強くダイナミックに舞うことだそう。白面が力強く舞うその背中は、子どもたちにもきっと大きく見えていることでしょう。

▲花巻市のショッピングモールでの公演を終えて。
佐藤優樹さんが所属する団体:
8月7~9日に開催!「第65回 北上・みちのく芸能まつり」にも登場!
谷地鬼剣舞

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