KITAKAMI NEWS

【20代の肖像】vol.72 ふるさとの味をみんなに。 若きベトナム人の挑戦。

2026年3月19日

きたかみリズム×きたかみ仕事人図鑑

 

 

ふるさとの味をみんなに。

若きベトナム人の挑戦。

 

 

vol.72  ヴォン・ダック・ホイ  28歳

 

 

 

18歳でベトナムを離れ、アニメで慣れ親しんだ日本へ。

 

 

JR北上駅 西口から徒歩数分のところに、ベトナムを中心とした東南アジアの食材を販売する「ヴォン・ホイ・マート」があります。休みの日は北上市内だけでなく、近隣の奥州市や花巻市、遠くは盛岡市などからも東南アジア出身の外国人の方たちが訪れ、にぎわう同店のオーナーは来日10年目、北上市に来て5年目になるベトナム人のヴォン・ダック・ホイさんです。

 

 

▲「ヴォン・ホイ・マート」はJR北上駅西口から諏訪神社方面へ徒歩数分のところに立地。ベトナムをはじめ東南アジアの国々の国旗が目印。

 

 

幼い頃から日本のアニメ「ドラえもん」や「ドラゴンボール」が好きだったホイさんは、アニメで慣れ親しんだ日本で自動車整備のことを学びたいと、高校卒業後の2016年に来日しました。

 

 

「最初に大阪にある日本語学校で日本語を学んでから、京都にある自動車整備士の専門学校に入って資格を取りました」

 

 

 

 

その資格を活かし、滋賀の工場に入社が決まるなど日本生活は順調だったそうですが、実際に働きだすと職場の人間関係で苦労し退職することに……。

 

 

「大阪で1年、京都で3年くらい暮らしました。いろいろな観光地にも行くなどして都会の暮らしも楽しかったのですが、緑がいっぱいあるところで暮らしてみたいと思うようになって……」

 

 

退職を機に、まだ訪れたことのない東北方面で仕事を探していたところ、ホイさんが希望する条件とマッチしたのが北上市の自動車関連の工場だったそう。そんなホイさんが北上市に引っ越してきたのが2021年のこと。心配だった職場での人間関係は……。

 

 

「みなさん親切で、ベトナム人の仲間もたくさんいたので、楽しく働くことができました」

 

 

しかし、ベトナム人の仲間たちと話していると、みんなが共通の悩みを抱えていると知り……。

 

 

▲店内にはベトナムを中心に、およそ1,600種類の東南アジアの食材がズラリ!

 

 

▲ヤギやカエルなど珍しい肉をはじめ、冷凍食品も豊富。

 

 

駅の近くで。ふるさとの味に出会える場所へ。

 

 

「ベトナム人の仲間と話していると、買い物で困っているという話題がよく出ました。スーパーは近くにあるのですが、ベトナムの食品がなくて……。ふるさとの味、お母さんの味が懐かしいという話をよくしていました」

 

 

そこでホイさんが「だったら自分がベトナムの食品を扱うお店を出そう」と立ち上がります。お店をオープンするためには約800万円の資金が必要でしたが、自分の貯金では全く足りず、ホイさんを応援してくれる仲間たちからお金を借りて開店資金を確保。さらに外国人労働者の方たちはクルマを持っておらず、移動は自転車や電車が中心になるため、駅に近い場所で店舗を探し……。

 

 

仕事も人間関係も順調だったそうですが、開店に向けて1年半勤めていた工場を退職し、およそ半年の準備期間を経て現在のJR北上駅に近い場所にお店をオープンできたのが2023年10月のこと。

 

 

 

 

「準備は大変でしたが、オープンの日にはベトナムの人たちがたくさん来てくれてうれしかったです」

 

 

そう語ってくれたホイさんですが、お店オープンの準備と合わせて、SNSや口コミでのPRも積極的に行っていたそう。

 

 

「SNSではベトナム人同士でつながっていますし、SNS以外でもベトナム人だと同じ工場で働いている人も多いので、そういうところでの会話でもひろがっていきます。ベトナムの食品が買えないという悩みはみんなが持っているものだったので、ひろがりやすかったというのもあると思います」

 

 

▲日本のスーパーには置いてない調味料や食材がバラエティ豊か。

 

 

▲フルーツやドリンクなども充実。ふるさとの味に出会える場所に。

 

 

ベトナム人の仲間の応援に支えられ、オープン3年目を迎える同店は、いつしか岩手に暮らすベトナム人同士のつながりの場にもなっているそう。

 

 

「年に1~2回ですが、お店で出会ったみんなで集まって楽しんでいます。展勝地のさくらまつりのときには花見を楽しみました(笑)

 

 

それに、毎年9月2日はベトナムの独立記念日で、ベトナムではみんなでお祝いをするのですが、その日になるとみんながお店に集まってくれて写真を撮って楽しみながら一緒にお祝いをします。私のお店がそういう場所になっているのもうれしいです」

 

 

ホイさんは笑顔でそう語ってくれました。

 

 

▲店内にはベトナムのノンラー(麦わら帽子)や米絵(ライスピクチャー)など伝統工芸品が飾られている他、ベトナムのお店によくある神棚も入り口でお客さまをお出迎え。

 

 

▲お店のお客さんたちが集まって、交流している様子。

 

 

▲9月2日(ベトナムの独立記念日)はお店に集まって記念撮影をしながらお客さんと一緒にお祝いをするそう。

 

 

お店を地域コミュニティに。
日本人向けの料理教室も。ひろがる夢。

 

 

▲奥様と一緒に。2人はベトナムで出会って、昨年結婚をされたそう。

 

 

「ヴォン・ホイ・マート」を利用するのは、最初はベトナム人だけでしたが、工場で一緒に働く東南アジアの方たちにもいつしか口コミでお店の魅力が伝わり、買い物に訪れるように。

 

 

「ベトナム人以外だと、インドネシア人やミャンマー人、タイ人、ネパール人、中国人、最近では日本人の方も利用されています。そういう方たちにも喜んでもらえるように、ベトナムの食材だけでなくインドネシアやミャンマーなど東南アジアの食材も少しずつ増やしていっています」

 

 

お客さまは北上市内だけでなく、近隣の奥州市や花巻市、遠くは盛岡市などからも訪れているという話は先に触れましたが、ヴォン・ホイ・マートのようにふるさとの食材を気軽に買える場所が地域に必要だと実感したホイさん。昨年(2025年)9月には仙台店をオープンさせ、現在は盛岡市でも駅前で店舗を探しており、3月には千葉店、年内には来日して最初に暮らし、留学生時代の友達も多い大阪にも店舗を出す予定だそう。

 

 

▲仙台店のオープンに駆けつけたミャンマー人の方たち。

 

 

そんなホイさんに今後の目標を尋ねると……。

 

 

「お店をオープンして、改めて日本で暮らす外国人の方たちに支えられていると感じています。ですから、このお店が地域コミュニティとして外国人のつながりの場になって、ひとりひとりが尊重されて、安心して長く生活できるようお手伝いをしていきたいです。

 

 

それに最近は日本のお客さまも少しずつ増えているので、日本人の方も参加できる料理教室をひらいて交流しながらベトナムのことを知ってもらう機会もつくっていきたいです」

 

 

食材の仕入れや、新しいお店の準備、雪の日にはクルマがないため移動が難しい外国人の方に希望の食材を自分のクルマで届けるなど、すべて1人でこなしているホイさん。そのため、店頭でお客さまに接するのは若いベトナム人スタッフに任せており、現在はお店に立つことは少ないそう。「ヴォン・ホイ・マート」を訪れた際は、たくさん並ぶ東南アジアの食材の影に、夢に向かって奮闘するホイさんのやさしい笑顔が隠れていることを、ぜひ思い出してください。

 

 

▲雪の日は移動が難しい外国人の方に食材を届けるサービスもホイさんが担当。

 

 

▲ベトナム人の若いスタッフと。

 

 

ヴォン・ダック・ホイさんのお店:

東南アジア食材店「ヴォン・ホイ・マート」 

 

 

 

 

岩手県北上市青柳町1-6-28 高草ビル 1B号

平日 10:00~19:00

土日  9:00~20:00