KITAKAMI NEWS
【市民ライター投稿記事】地域に根ざした安心! ふれあいデイサービスの魅力とは
きたかみリズムをご覧のみなさま、こんにちは。
前回からあっという間に時間が経過してしまい、かなり久々の投稿になってしまいましたが、みなさんいかがお過ごしでしょうか?
やっと気温が下がり、秋の到来。過ごしやすい気候になってきましたね。収穫の秋、読書の秋、スポーツの秋、様々ありますがみなさんにとっての「秋といえば」は何ですか?
プロフィールにもありますが、食いしん坊なわたしにとって「秋」といえばもちろん「食欲の秋」。
先日、自宅の家庭菜園で育てたサツマイモを収穫しました。今年もおいしい焼き芋食べられるかな〜?と楽しみにしております。

▲スイートポテト、コロッケ、大学芋、きんぴら等、レシピを考えるのも楽しいです!

▲里芋も順調!
さて、今回の記事の本題に入ります。
近年、全国的に高齢化が進んでいると言われていますよね。一般的に「高齢化社会」とは、65歳以上の割合が人口の7%を超えた状態を指します。この数値が14%を超えると「高齢社会」、更に21%を超えると「超高齢社会」と呼ばれます。
北上市はどうなのでしょう?
総人口90,740人に対し、65歳以上の人口は25,911人。高齢化率(※総人口のうち65歳以上が占める割合)は28.56%。(※2025年7月末時点・岩手日日調べ)
北上市も超高齢社会であるといえますね。
では、周りの自治体はどうでしょう。
例えば、お隣の花巻市は、総人口89,185人に対し65歳以上の人口は31,712人。高齢化率35.56%(※2025年3月末時点・岩手日日社調べ) また、奥州市は、総人口106,556人に対し65歳以上の人口は40,276人。高齢化率は37.80%(※2025年8月末時点・岩手日日調べ)
これらの数値を比較してみると、周辺自治体の高齢化率が30%を超えているのに対し、北上市の高齢化率は20%台と、若干ですが低いように感じます。北上市は工業都市であり、雇用の状況などを鑑みても、比較的若い世代の方が市内に定着していることや、他の市町村からの転入なども影響し、こういった値になっていると推測できます。
では、このような「超高齢社会」の中で、誰もが自分らしく生活していくためにはどんなことを意識していけばよいのでしょうか?一緒に考えてみましょう!
まず、高齢者の方が集う事業として一般的によく知られているのは「ふれあいデイサービス事業」通称「ふれデイ」。ふれデイは在宅高齢者等に対して、自治公民館等を活用し各種介護予防等のサービスを提供することで、社会参加を促し、孤独感の解消や自立生活と介護予防の促進を図ることを目的として、北上市が社会福祉協議会に事業を委託し実施しています。
今回ご縁があり、「黒北2区 萩の会」さんのふれあいデイサービス事業にお邪魔させていただきました。

▲開始時間前の様子。参加者の方3人(写真下)とお話ししているのは、地区の民生児童委員(写真上)。

▲来たらまず血圧測定が毎月のルーティン。測定をしているのは保健推進員の方々。
この日(令和7年9月17日)の参加者はおおよそ20名。内容は、特別養護老人ホームさくら爽の作業療法士の新沼健太氏による健康講座「転倒予防と食生活について」でした。

▲講話の様子。
新沼氏によれば、高齢者が転倒する頻度は非常に高く、なんと65歳以上の5人に1人が転倒したことがあるのだそうです。年齢階級別にみると、「85歳以上」では25.3%と4人に1人の割合となり、年齢が高いほど転倒事故の割合が高くなっています。※内閣府HPより(外部リンク)
具体的にどういった場面、どんな場所が多いのでしょうか? ランキング形式で見てみましょう!
第一位 自宅の「庭」
地面に凹凸があったり、植木に足を取られて…など、足元が不安定なことが原因となり、不慮の事故、転倒、怪我などが発生していると推測できます。
第二位 「居間・リビング」
これにはわたしもびっくり!屋内は安全かとおもいきや案外危険なんだそう。例えば朝読んだ新聞をカーペットの上に広げたままにしていて、それを踏んでツルっと…、こたつの掛布団に躓いて…これらも転倒あるあるなんだとか…。
「そう言えば、昔うちの子もそんな事があったぁ…」と思いながらお話をお聞きしました。この危険は幼い子にも共通することかもしれませんね。
第三位「玄関・階段・寝室」
玄関は上り框(かまち)がありますし、段差でバランスを崩しやすいので要注意。階段は、上りよりも下りのほうが転倒する確率が高いそうです。更に、夜間や早朝の動作が多いベッド周りや寝室は、高齢者が転倒しやすい場所の代表格。起床時や就寝時は特に体が不安定になりやすく、足元がしっかりしていないと突然の転倒につながる場合もあるそうです。
転倒による骨折やケガが原因で介護状態になった方も少なくないため、こういったトラブルを回避し、健康寿命を伸ばすことが、この超高齢社会で幸せに生きていくコツ!。そのためには毎日少しずつでいいから意識的に筋力を鍛え、転倒しにくい身体を目指しましょう!
ということで、まずは今の自分の健康状態を知ることからのスタートです。

▲健康面で気になっていることなどを講師に質問。

▲握力測定中。平均値と比較してどうなのか?今の自分の状態を知ることはとても大事です。
みなさんも、小中学校時代に「体力測定」の経験がありますよね? 成人するとその機会はなかなかなく…。わたしも自分の体力が今どの程度なのか全く把握できていませんでした。今回測定してみたところ、その頃より更に握力が低下していました。握力が低いほど、身体機能低下や日常生活動作障害の発生率が高いことが報告されているそうで、わたしも他人事とは思えません。
少しずつでも改善していければ…ということでいざ実践編へ。
自宅でも簡単にできる筋トレを紹介していただきました。
トレーニングで鍛えることができる筋肉は主に4つ。大腿四頭筋(太もも)、下腿三頭筋(ふくらはぎ)、大殿筋(お尻)、中殿筋(お尻の横)。どれも簡単にできるものばかりでした。但し、立った状態で行うトレーニングは、必ず安定感のある物につかまって行ってくださいとのこと。
転倒予防のためのトレーニングで転倒してしまったら、これがホントの「本末転倒」。あくまでも無理はせず、できるだけ毎日続けることがポイントです。
※紹介していただいたトレーニングの一部を、YouTubeの北上市公式チャンネルで公開しました。是非ご覧ください。(外部リンク)

▲体のバランスをとるトレーニング
その他にも、踵上げ、つま先上げ、骨盤回し、足指グーパー、片足立ちなども実践。
筋肉を鍛えたから転ばないかというと、決してそうではありません。体幹を鍛え、身体の重心を保つことも大事です。
講師より「人間は二足歩行の生き物ですし、足2本で全身を支えるわけですから、バランスが保たれなければ物理的に不安定になるのは当たり前。それに比べたら、他の動物は大抵4足歩行なので、そりゃ安定感があるわけです。犬や猫が転んでいるところは、あまり見たことないですよね?でも、いくら安定感あるとはいっても普段の買い物やお散歩、畑や農作業を彼らのように四つん這いで…ってわけにはいきませんよね?(笑)」
という話があり、会場は笑いに包まれました。
そして最後に栄養面のお話。高齢者に限らず、どんな世代の方にも共通することですが、健康を考えるうえで食事は非常に重要度が高いものです。
ではみなさん、「さあ にぎやか (に) いただく 北上市」 この合言葉、ご存知でしょうか?

これは、東京都健康長寿医療センター研究所が開発した「食品摂取多様性スコア」を構成する10の食品群の頭文字をとったもので、北上市も健康増進の一環として推進している食生活に関する合言葉。
これらの食品群から毎日7品目以上を食べることが望ましいとされています。

▲どの食品をどれくらい食べるのが良いか、具体的に詳しく教えていただきました。
みなさんは、1日を通して何品目の食材を食べたか、考えたことはありますか?
バランスの良い食事が大事とはわかっていても、毎日のこととなるとなかなか難しく、どうしても栄養が偏りがちになってしまうのですが…。
理想的な食事の目安として、覚えておきたい合言葉ですね。
※YouTubeの北上市公式チャンネルでも紹介されています。是非ご覧ください。(外部リンク)

▲熱心にメモを取る参加者の方々。みなさん、とても興味深そうに頷かれていました。

▲『何か聞きたいことがあれば、いつでも訪ねてきてくださいね〜』と新沼氏。貴重なお話をありがとうございました。
終始、和やかな雰囲気でとても充実した時間となりました。参加者のみなさんはどんな感想を持たれたのでしょう?
いつも参加しているという、90代女性に伺ってみました。
Q1:(ふれデイでは)どんなことが楽しみですか?
「みなさんと話ができることが一番。お話を聞くのも好きだし、踊りっこ(舞踏鑑賞)、お湯っこ(温泉)、全部とても楽しみ。ここ(ふれデイ)は温泉行くにもバスに乗せてもらえるし。」
Q2:普段は何をして過ごしていますか?
「家の周りを散歩したり、花壇の手入れをしたり。ここまでくるのも健康のために歩いてきてるのよ〜。」
Q3:今日は転倒予防のお話でしたが、どうでしたか?
「杖っこ(歩行補助具)使うようになってからは転んでないけど、前に、畑仕事をしていて歩道に出ようとした時、置き石に躓いて派手に転んで…。その時ちょうど自転車で学生が通りかかって、「どうしたんですか?」って聞かれて…。「歯が折れだ~!!」って大騒ぎしたの。でもわたしは怪我もなく無事だったの〜入れ歯は欠けてしまったけど……」
お話をお聞きし、一瞬ヒヤッとしてしまうような内容でしたが、お怪我がなくて何よりでしたね〜。今回のお話を参考に、是非これからもお元気で手仕事も続けてくださいね☆
また、他の参加者さんからは、「ふれデイ=安否確認懇談会(笑)。独り暮らしだし、月1回でも集まってくるみんなの顔が見れる、話ができるのは大変幸せなこと。毎回、このように楽しめる場を提供してくれるスタッフの方々に大変感謝している」という声も聞かれました。

▲参加者の方ひとりひとりに飲み物を配布する民生児童委員。
ふれあいデイサービスの運営は、地域の福祉協力員、保健推進員、民生児童委員、食生活改善推進員などが協働で行っています。活動歴についてお聞きしたところ、もう10年近くもこの事業にスタッフとして携わっている方もおり、具体的活動内容の策定や事前準備、手配など、お互いに「報・連・相」しながら進めているそうです。
良い機会なので、企画する側の考えや想いもお聞きしてみよう!と、スタッフを代表して3人の方にアンケートを実施しました。
Q1:毎月の活動内容はどのようにして決めていますか?参加者の方に特に人気があるのはどういった内容ですか?
Yさん:毎年度、2月頃に次年度のスケジュールを考えて社協(社会福祉協議会)に計画を出し、他地区との調整後に決定となります。舞踊鑑賞や温泉などは毎年人気があるので、予定に組み込むことが多いですね。工夫しているのは毎年、新しい(これまでお願いしたことのない)講師さんを探して依頼していること。鑑賞だけでなく、ちょっとした体操とか参加型の講座も入れています。参加者の反応を見ながら、有意義なふれデイを目指しています!
Cさん:まず、大前提として参加者の方が楽しめる内容になっているか?ということ。温泉は昔から人気があるので、別途の参加費負担があってもみんな来てくれる。舞踊鑑賞も参加者が多く、毎年楽しみにしているんだな〜と感じる。
Tさん : 75歳以上の後期高齢者の方もいるので、様々な配慮が必要であるとスタッフ一同共通理解を図っている。やはり民謡、踊りの時は参加者が多い。今後もパターン化しないように相談しながら内容を企画していきたい。毎回、スタッフ同士でランチやお茶をしながら話し合うのもまた一つの楽しみ♪
Q2:事業に関わって良かったと思うのはどんな時ですか?また、逆に大変だと感じていることや今後の課題など自由にお聞かせください。
Yさん:色々な方と知り合う良いきっかけになり、参加者のみなさんだけでなく、スタッフ一同も一緒に楽しめる会になっていると自画自賛(笑)。「おもせがった~!(おもしろかった)」「ありがとね〜」「温泉さもいくよ〜」などなどが嬉しい言葉です。椅子の出し入れなどを積極的に手伝ってくれる参加者さんもいます。お互い良い気分で解散!というところも良いです!
今年は夏がとても暑かったので…。高齢者は皮膚の温度センサーの感度が衰え、暑さを感じにくかったり、発汗量や血流量が思うように増やせなかったりすることがあります。また、喉の渇きを感じる機能も低下し、脱水や熱中症のリスクが高くなります。その対策として、始まる前に予め飲み物を配布し、好きなタイミングで水分補給してもらうようにしましたし、ホールの温度管理にも気を遣いました。血圧測定も毎回実施して、体調を崩す方がいないよう配慮をしながら進めました。
Cさん:地域の方とのコミュニケーションが増して、(ふれデイ以外の)民生児童委員活動もスムーズになっていった。課題は、公民館に近い方は比較的参加率が高いが、遠いと足を運ぶのが難しいという点。物理的にも距離があると出歩くのが億劫になるのかもしれない。この地区では月1回の参加にタクシーを利用している方もいる。自宅が公民館から近い、遠いに関係なく、もっとたくさんの方が参加できるよう、何か良い方法はないものかと思っている。
Tさん:集まって下さった方々が満足した笑顔で帰る時、「また来月も来てくださいね~」とお声がけすると、「はい!」と意欲的な答えが得られると嬉しくなる。ただ、以前に比べると参加者が減少しているように感じる。ふれデイの内容が毎年似通ってしまっているため、新しい内容で楽しめるものはないか模索していきたい。
あとがき
ご協力いただいたみなさま、大変貴重なお時間をありがとうございました。
今回の取材を通しての率直な感想は、「高齢者というけど、みなさん本当に元気だな〜」ということ。
エネルギーに満ち溢れ、さすが人生経験豊富なだけあって、お話も面白い(笑)。 冗談が言える=脳がしっかり機能している証拠!これって、本当に素晴らしいことです。
また、活動を支えるスタッフの方々も、参加者がどのような思いでふれあいデイサービスに通ってこられるのかを理解し、それぞれの気持ちに沿えるような関わり方をされていました。何気ない会話もできないような関係では、その方特有の問題点・解決策に気付くことはできませんし、いつでも気楽に参加できる雰囲気作りを大切にされていることに感銘を受けました。
これから世の中はきっと超高齢社会を超えて「超絶高齢社会」になっていくのかもしれません。
生きている限り誰もが通る道。その道をどんな風に歩いていくのか、みなさんのヒントになれば幸いです。
【取材協力】
◆黒北2区ふれあいデイサービス「萩の会」様
◆黒沢尻2区公民館 様
◆黒北地区民生児童委員・保健推進員・福祉協力員 様
◆食生活改善推進員 様
◆北上市社会福祉協議会 様