KITAKAMI NEWS
【市民ライター投稿記事】専修大学北上高等学校 男子バレーボール部、高く舞い上がれ!〜情熱と絆で繋ぐ勝利への道〜

私がこの記事を執筆するきっかけは、北上市のブランドサイト「きたかみリズム」で紹介されている「それいけ!青春シリーズ」でした。私の母校でもある専修大学北上高等学校の男子バレーボール部が、今年(2025年)の県高校総体で20年ぶりに第三位という快挙を成し遂げ今、まさに躍動する彼らの成長や、バレーボールにかける熱い想いを、私自身も深く知り、その輝きを皆さんにお届けしたい。そんな思いで、取材に至りました。
専修大学北上高等学校 男子バレーボール部 輝かしい挑戦の舞台
専修大学北上高等学校 男子バレーボール部
所在地:〒024-8508 岩手県北上市新穀町2丁目 4番64号
主な大会スケジュールと目指す舞台
〇岩手県高等学校総合体育大会バレーボール競技(岩手県高校総体)
・時期:5月下旬~6月上旬
・優勝すると:全国高等学校総合体育大会バレーボール競技(インターハイ)へ(7月下旬~8月上旬開催)
・上位進出で:東北大会(北東北高等学校バレーボール選手権大会)へ(6月下旬開催)
〇岩手県私立高等学校バレーボール選手権大会
・時期:7月上旬
・勝つと:東北私立高等学校バレーボール選手権大会へ (8月末~9月上旬開催)
・上位進出で:全国私立高等学校男女バレーボール選手権大会(さくらバレー)へ(3月末開催)
〇全日本バレーボール高等学校選手権大会岩手県予選会(春の高校バレー岩手県予選予選)
・時期:10月下旬~11月上旬
・優勝すると:全日本バレーボール高等学校選手権大会(春高)へ
(1月上旬開催) – 「正月の風物詩」 として知られます。
〇岩手県高等学校新人バレーボール大会
・時期:11月下旬
・優勝すると:東北高等学校新人バレーボール大会へ (1月下旬~2月上旬開催)
専北男子バレーボール部の現在【2025年7月15日時点】
〇部員数:
・3年生:10名(現在は引退し2名が活動中)
・2年生:7名
・1年生:2名
・マネージャー(1年生):2名
・合計:13名
〇指導体制:
・顧問:1名
・監督:1名
・コーチ:1名
【練習環境】
・練習時間: 火曜日から金曜日 16:10~18:40
(電車通学の選手も多いため、強化期間以外は時間厳守の短時間集中型)
・OFF日: 月曜日(祝日の場合はその翌日になる場合あり)
・土日祝: 練習試合、県外・沿岸への遠征、合宿など
私が驚いたのは、バレーボール部における3年生の活動期間の長さです。一般的には高校総体が3年生にとって最後の公式戦となることが多い中、バレーボールは「春高」まで活動を続けることが可能です。大会が終わると燃え尽き症候群になりがちですが、好きなことを長く続けられるのは、選手にとっても保護者にとっても大きな魅力だと感じました。
「信頼・団結・闘志」:勝利へ導く心の哲学

専北男子バレーボール部のモットーは、「信頼・団結・闘志」です。このスローガンは、スポーツを通じて人間性を高め、集団として最大の力を発揮するための哲学が込められています。
技術や体力だけでなく、このような精神的な繋がりと意識の共有こそが、厳しい勝負の世界で勝ち抜くために最も重要であることを、チームは日々の活動で体現しています。
その、スポーツを通じて人間性を高め、集団として最大の力を発揮するための哲学を具体的にどのように指導しているかを質問したところ
監督の菊地亮先生は、
練習の際に「練習の意図をはっきりと認識して取組む」ことを常に意識し、特に力を入れているのは「ハードワーク」だと仰っていました。中でも、「単なる作業にさせない」「練習の意図を理解し、自分で自分を追い込む意識」ということを大切にしているそうです。
これはスポーツトレーニングにおける「量より質」という考え方を指します。ただ長時間練習するのではなく、その時間の中でいかに集中し、意図を持って取り組むか、すなわち「ハードワーク」の質こそが、パフォーマンス向上に直結すると指導しています。
選手たちには、「何のためにこの練習をしているのか」「どうすればもっと上手くなるのか」という目的意識を持って自ら考えて行動することが求められます。これは、単に与えられたメニューをこなすだけではない、「自分で考える力」を養うことにも繋がっています。
取材を通して、社会で必要とされる自ら考え行動する力や、チームワークの中で互いを思いやる心が、この部活動の環境で自然と育まれていると感じままた、監督は続けて
「常に優勝する気持ちで練習に取り組むマインドセットを心がけている」と語ります。
▼筆者調べ
「マインドセット」とは、物事の捉え方や考え方の傾向、言わば「心のメガネ」のようなもの。 もしこのメガネが「普通のレンズ」なら、「今日の練習はこれで終わり」「とりあえずこなせばいい」と感じてしまうかもしれません。または難しい練習やミスに対しても、「嫌だな」「自分は下手だ」と感じてしまうかもしれません。
しかし、監督が選手にかけてほしいと願うのは「優勝レンズ」です。この「優勝レンズ」をかけると、練習の景色は一変します。
・「この練習は、優勝するために必要なピース」
・「この一本のレシーブが、決勝点の鍵を握るかもしれない!」 というように、全てのプレーに本番と同じくらいの重みと集中力を生み出す。
・「今この難しい練習を乗り越えれば、本番でどんな状況でも対応できる強さが手に入る」
・「このミスから何を学んで、どう改善すれば優勝に近づけるか」 と、全ての困難や失敗が、自分やチームをレベルアップさせるための貴重な機会に見えてきます。
この「優勝レンズ」は、誰かに言われたから頑張るのではなく、選手自身の内側から「もっと強くなりたい」「絶対に勝ちたい」という強い意欲を引き出す、まさに「内側から湧き出る」モチベーションの源となるのではないでしょうか。
つまり、「常に優勝する気持ちで練習に取り組む」というマインドセットは、単なる願望やスローガンではなく、日々の練習の質を最大限に高め、困難を乗り越え、チームを勝利に導くための具体的な行動と意識を生み出す「心の状態」。
この「優勝レンズ」をかけることで、選手たちのバレーボールへの取り組み方が大きく進化するのでしょう。

※練習を終えてストレッチ中
チームの軌跡と成長 – 努力と挑戦の物語

練習風景
専北男子バレーボール部の練習は、単なる反復ではありません。キャプテンを中心に、その時期にどんな練習が必要かを選手たち自身がアドバイスし合い、なんと練習メニューも選手たちが決めているそうです。これは、選手たちの主体性を最大限に引き出すための工夫であり、各々が練習の意図を深く理解することに繋がっています。
練習中に特に意識し、力を入れている点は「ハードワークを作業にさせない」こと。
選手たちの集中力が途切れていると感じた時は、すぐにメニューを変えるなど、常に質の高い練習を追求しています。量だけでなく質を重視し、選手が常に高い意識と目的を持って練習に取り組むことで、真の成長と勝利を目指しています。

監督の指導の特徴の1つが、「球出し」の量です。「岩手で一番球出しをする」を意識し徹底した球出しで選手の基礎技術向上を支えていました。
バレーボールにおける球出しとは、指導者やコーチ、または練習パートナーが、選手に対して意図的にボールを供給する行為全般を指します。これは単にボールを選手に手渡すのではなく、特定の技術や戦術の練習のために、ボールの速度、コース、高さ、回転などを調整しながら正確に供給することを意味します。
体育館の隅にあるホワイトボードには、練習メニューと裏面には選手たちが考えた目標が貼られていました。

過去の課題と乗り越えた経験
監督の菊地亮先生がチームを指導する中で、特に記憶に残っている課題は、「実力がありながらも、本番でその力を発揮しきれない」という壁があったそうです。
監督就任から7年目になるそうですが、指導を始めて3年目の頃チームは着実に力をつけ、練習では素晴らしいパフォーマンスを見せるようになっていました。しかし、いざ大会のベスト8の壁を越え、ベスト4を目指す段階になると、どうしても勝ちきれない苦しい時期が続いたそうです。
これは、単に技術や体力だけの問題ではなく、ベスト8からベスト4への壁は、選手たちの実力は十分にあるはずなのに、と監督自身も深く考えた時期があったそうです。
選手たちがプレッシャーの中でも自分たちの力を信じ、勝利への「マインドセット」の結果、地区一回戦負けの頃から少しずつ本番での「勝ち方」を学び始め、粘り強く戦い抜きベスト4へ勝ち進むことができるようになりました。
最近の成果と変化を聞く
チームは年々、その個性を色濃く反映させながら変化と成長を遂げており、特に最近強く感じているのは、選手たちが練習の意図を深く理解し、主体的に取り組もうとする姿勢が見られる点だそうです。
現在のチームには新1年生が2名加わり、非常に高いポテンシャルを秘めており、選手たちは、まさに「伸びしろたっぷり」で、日々の成長が目覚ましいと語っていました。
目標は、このチームで春高の県予選を優勝することです。選手たちが持つ無限の可能性を信じ、彼らが最高の舞台で輝けるよう、これからも全力でサポートしていきます。
チームの変化から進化に迫り、監督の深い想いも伺うことができました。
部員とチームの魅力 – 個性と絆が光る
ここでは、チームを支える若き力、高校1年生の選手からインタビューを行いました。
1年生部員の声(メカニックエンジニアリング科-北上市立北上中学校出身)

入部のきっかけは?:学びと好きが結びついたバレーボールへの道
「専北バレーボール部を選んだ一番の理由は、バレーボールが大好きだから! 小学3年生の時からバレーボールを始めて、とにかくボールがあればバレーをしてしまうくらい好き。」
高校を選ぶ際、将来のために専門的な学びを得たいと考えてメカニックエンジニアリング科がある専北を選んだそうです。大好きなバレーボールと、将来役立つ自動車整備の知識、『学び』と『好きなこと』が両方一緒にできるので、決めたそうです!
チームの雰囲気はどうですか?:優しさと楽しさの中で高めあえる場所
「チームの雰囲気は、一言で言うと『すごく楽しくて、面白い!』です。練習中は真剣に、でもいつも笑顔が溢れていて、とても良い雰囲気だと感じています。先輩たちはみんな優しくて、どんな時も丁寧に教えてくれるので、僕たち1年生も、毎日バレーボールを楽しめています。」

2年生部員の声(普通科-奥州市立水沢南中学校出身)

印象に残っているエピソードを教えてください:悔しさと喜び、そして初めての合宿
「バレーボール部での活動の中で、特に印象に残っているエピソードはいくつかあります。
一番悔しかったのは、盛岡クラブとの試合です。24対24のデュースで、自分のサーブでした。そこでアウトになってしまい、その1点でゲームが決まってしまったんです。あの時の悔しさは、今でも忘れられません。
一方で、とても嬉しかったのは、東北大会(東北高等学校バレーボール選手権大会兼NHK杯大会)でのことです。東北高校との試合中に、途中交代でワンポイントブロッカーとしてコートに入りました。そこで、相手のスパイクをワンタッチで止めることができて、それが得点に繋がり、チームに貢献できた瞬間は本当に嬉しかったです。自分のプレーがチームの勝利に繋がったという実感が、大きな喜びになりました。
また、高校に入学して初めての合宿で4月に陸前高田市で行われた歓迎合宿は、初めての高校での合宿だったのですが意外にもきつく感じることはなく、とても楽しかったです。練習試合をずっとやっていて、チームメイトとの絆を深める良い機会になりました。」
部活動を通して学んだことは何ですか?:絆、深まる集団行動。
「部活動を通して学んだ最も大切なことは、集団行動の重要性です。一人ひとりがどれだけ優れた技術を持っていても、バラバラに動いていては決してチームとしてまとまることはできないからです。」

2年生新キャプテン(グローカルビジネス科-北上市立和賀東中学校出身)

目標へかける熱い想い:目指すは「県大会優勝」と「県No.1セッター」
―今年のチームの目標は?
チームの目標は、県大会で優勝することです。その目標達成に向けて選手一人ひとりが日々の練習や練習試合を通じて、真剣に取り組み、それぞれの課題や強みを見つけ、チーム一丸となって高みを目指しているところです。
個人の目標は、県No.1セッターになること。
そのために日々のウエイトトレーニングやトス練習を欠かしません。しかしまだメンタル面や体力面で不足している部分があるので、バレーボール選手として一流を目指していきたいと思います。
と語るキャプテンの言葉からは、自らの成長に対する弛まぬ努力と強い意志が感じられました。最後に、応援してくれる人たちへの感謝の気持ちを語ってくれました。
応援してくれる皆さん、いつもありがとうございます!僕たちの挑戦は、すでに始まっています。これからも応援をよろしくお願いします。
最後に監督・コーチから選手たちへメッセージを伺いました。
指導において最も重視しているのは、選手たちが目標に向かって「自分たちならできる、勝てる」という強い気持ちを持って日々の練習に取り組むことです。
特に、「春高に出ろ!」という言葉をよく選手たちに伝えていますが、私たちにとって大きな目標です。そのために、練習中は常に選手たちに「お前たちならできる」「必ず勝てる」と、繰り返し伝え続けています。これは単なる励ましではなく、選手たちの潜在能力を信じ、それを引き出すための揺るぎないメッセージです。
しかし、私たちの指導は勝利だけを追求するものではありません。バレーボールというスポーツを通じて、選手たちには人間的な成長を遂げてほしいと強く願っています。
また、「コートを離れても輝ける人になってほしい」これが私の教育理念の根幹です。具体的には、以下のような「スポーツマンシップ」を日々の生活の中で身につけてほしいと考え指導しています。例えば、
- ・爽やかな挨拶: 誰に対しても、はっきりと気持ちの良い挨拶ができること。
- ・困っている人を助ける: 仲間が苦しんでいる時や、日常生活の中で困っている人が
いる時に、自ら手を差し伸べられる優しさを持つこと。 - ・気が利く: 周囲の状況をよく見て、次に何をすべきかを自分で考え、行動できるこ
と。
私たちは、バレーボールが全てではありません。競技を終えた時に何も残らない人にはなってほしくありません。バレーボールを通じて培った「人の気持ちを理解する力」「思いやり」「自立心」こそが、彼らが社会で生きていく上での真の財産となると信じています。
そして何よりも、私自身がバレーボールに魅了され、指導者となったように、選手たちにもバレーボールというスポーツを、これからもずっと好きで、楽しみ続けてほしい。これが、教育者としての私の心からの願いです。
取材を終えて
あとがき
今回、専修大学北上高等学校男子バレーボール部への取材を通して、監督、選手をはじめ、学校関係者、そして保護者の皆様に多大なご協力をいただきました。本当にありがとうございました。体育館での練習風景は、外からではなかなか知ることができません。バレーボールに対しては無知な私でしたが、勝利の裏側にはたくさんの挫折や失敗・努力があってなのだと改めて実感いたしました。
大好きなバレーボールを、かけがえのない仲間と共に高みを目指し、日々成長していく青春の一部を取材できたことは、私にとって光栄な経験です。北上市にこんなにも「大好き」を輝かせている場所があるという、まさに新しい発見でした!
地域としても、今後の活躍を応援していきたいですね!
