KITAKAMI NEWS

【市民ライター投稿記事】未来の農業をめざす ~「コメプロ」がめざすもの~

2024年9月17日

市民ライター 若山 利夫

 

はじめに

 

いやあ!美味かった!みなさんがほとんど毎日食べているご飯。私が二十数年前江刺に住んで初めて炊いて食べたときの感動は今でも覚えています。
コメを作っている農家さん!本当にご苦労さまです。そのご苦労を称えながらこの稿を書かせていただきます。

 

というのも今回は、7月17日に取材した、専修大学北上高等学校(以下「専北」)で行われている「稲瀬地区の持続可能な米作りプロジェクト」(以下「コメプロ」)についての記事だからです。

 

 

 

 

今や米づくりに関して、多くの課題と向き合わなければならない時代になってきました。
例えば、少子化や核家族化そして高齢化による担い手不足。地球温暖化による作柄の変化などがあります。

 

一方、農作物の収量の減少は、人間の生活そのものの存続にも大きな影響があります。
以上のような観点から持続可能な農業のあり方を多方面で模索していることも事実でしょう。なかんずく、北上盆地で多く栽培されている米は、日本の食文化の中心的な作物と言ってよいでしょう。

 

現地に取材に行きました!

 

当日は、教科担当の田口裕道先生(以下「田口先生」)と普通科3年DE組 アクティブラーニングコース 情報ビジネス専攻の生徒さんが参加しました。

 

当日は当初曇りの天気予報でしたが、晴れ間が見え太陽の光が当たるとジリジリと焼けるような日でした。

 

北上市役所も「コメプロ」に関わっていて、市職員の方もお手伝いに・・・
北上市まちづくり部地域づくり課地域協働係 のお二人です。
髙橋 直子さん 小田島 駿雄さん です。

 

 

 

 

さらに、稲瀬地区交流センター長兼事務長の高橋辰一さん(写真中の白いシャツの方)よりドローンの実技に携わっていただいた方々のことを以下の通り教えていただきました。

 

1 ドローンクラブの名称と代表者

  •  ・名称:SNKドローンクラブ
  •  ・代表者:熊谷孝史(くまがいたかふみ)

 

2 担当したクラブ員の氏名及びドローン操縦歴

  •  ・熊谷孝史           3年
  •  ・菊池宏幸(きくちひろゆき) 3年
  •  ・田口勇気(たぐちゆうき)  1年

 

 

左から熊谷さん、菊池さん、田口さん。右端は、北上市職員の小田島さん。

 

 

 

 

 

今回、農業、とくに米作りにドローンがどのように活用されているのか?実際に見学させていただき、操縦スキルと合わせてドローンパイロットの皆さんから活用方法を学ぶ授業に参加しました。

 

青々と続く田んぼまでは稲瀬地区交流センター(以下「センター」)から徒歩で向かいました。

 

 

 

 

どこの田んぼかな~?すぐそこだと案内の熊谷さんは言っていたけど・・・

 

実際に歩いてみると畦に囲まれている田んぼ一区画は結構広い!一区画を一枚ということもあるそうです。三枚目で止まりました。ホッとする私(以後「わかさま」とします)!

 

田んぼの中の道路にドローンが置いてあります。センターの軽トラの荷台に載せてあったドローンと同じものでした。結構大きい!

 

 

 

 

田んぼや畑の面積に疎い「わかさま」は、一枚という田んぼの広さがわからない・・・。Google博士に何度も聞きながらやっと眼の前の田んぼが1町のようだと理解した。もう殆どの方は100m✕100m≒3,000坪と理解できたと思いますが、あえて記載させていただきます。「わかさま」の大脳の記憶を確かにするために・・・!

 

長い横道からもとへ戻って、専北の高校3年生を前に熊谷さんからドローンに付いて説明が始まりました。

 

 

 

 

その話は次のようでした。
農業用には薬剤散布、肥料散布が主で直播きに利用しているところもある。

 

*「わかさま」が直播きに利用しているところはありますか?と聞いたことについて、次のように説明していただきました。

 

この方法は、田んぼに直接種もみをまく方法で、コーティングした種もみをドローンなどからまくそうです。一部の地域で行われているそうです。大きな利点は、苗代を作って田植えをするという行程が不要になるので、もしかしたら今後期待できる米作りになるかもしれないですね。

 

 

 

 

ドローンの話に戻りますが、現在はドローンを飛ばすための規制が以前より厳しく、パイロットは資格を取る必要があるそうで、100g以上の機体は国家資格が必要されているそうです。さらに実際に飛ばす時は、機体No.など所定の内容を管轄の機関に届ける必要があります。

 

また、ドローンによってどれくらいの農作業が省力化されるかというと、例えば従来のように農薬等の入ったタンクを背負って、噴霧器で10アール散布するとおよそ1時間10分ほどかかりますが、これを約10分で終わらせることができるそうです。さらに、これまで散布が十分行き届かなかった事もあった田んぼの中心部にも均一に散布する事ができるようになったそうです。実際に1ヘクタール(=100アール)を散布するのにかかる時間は90分程度とのことでした。

 

この実機を用意するための費用は、機体が200万円、バッテリーが10万円ほどで、クラブでは8個所有しているそうです。現在クラブでは、1シーズン80haほどの散布作業を請け負っているそうですが、満充電しながら使うので、農家さんの電源をお借りして充電させていただき飛ばすこともあるとのこと。

 

このあと実技を披露していただきました。熊谷さんがコントローラーを持ち、菊池さんは田んぼの端の方まで畦道を走る!100m走さながらに・・・?

 

田口さんがドローンのスイッチをオンにすると4つのプロペラが回りだします。ここから熊谷さんの腕の見せ所!プロペラの音が一段と大きくなる!生徒さんたちは、遠巻きにして恐る恐る見守っています。

 

 

 

 

更に大きくなるプロペラの音とともに、ドローンがふわりと浮かび前傾姿勢で進み、緑一面の田んぼを稲の葉を風圧で押し曲げながら2mくらいの高度で進む。

 

 

 

 

端まで行ってUターンかと思ったら次の列に横移動。そこからバックで元のラインまで来て止まる。ちなみに今回タンクに積んで撒いていたのは水だそうです。

 

 

 

 

行くとき気付いたLEDライトは、光って小さな目玉のようにも見える。これが向かってきたら結構恐怖だな!などと余計なことを考える「わかさま」でした。いやあ!たしかに早いし、まんべんなく散布できるな~と感心する。

 

 

 

 

元の位置にタッチダウンしたドローンを前に、思わず拍手!

 

 

 

 

遠巻きにしている生徒さんたちへひと通りの実技が終わった、熊谷さんから「なにか質問はありませんか」との問いかけが・・・

 

一瞬の間があり、「わかさま」が「はい!」と手を上げる。生徒さんを差し置いて手をあげてしまっていいの?とは思いました、手が先に?口が先に?どっちかわからないけど動いてしまいました。

 

このことで少し言い訳させていただければ・・・「わかさま」の質問を突破口に生徒さんに積極的に質問してほしいという思いからの行動でもありました。

 

ドローンが飛んでいるときに風が吹いたらどうなるのだろう・・・?と思っていたので風の影響について質問しました。

 

これに、パイロットの熊谷さんは、丁寧に次のように答えくださいました。

 

飛ばせない条件は、風速3m/sec.以上の風と雨の時ですと。風は目測で農家さんの家の周りの立木の揺れ具合で判断すること。さらに近くの電波や新幹線の近くなどで影響される事があると話してくださいました。このため、飛ばす時間は実技で見たようにさほどかからないが、と前置きして、飛ばす前の準備に多少時間がかかりますと。

 

コンパスキャリブレーションというこの作業がドローンを正確に飛ばすために、特に大事な準備とのことでした。加えて、空中散布の例としては他に無線操縦のヘリコプターを使う方法もあるようですが、下向きの風の影響はヘリコプターのほうが強いことも教えてくれました。

 

 

 

 

 

続いて、学生さんから質問が・・・その中で印象に残った3つをご紹介します。

 

Q:どうすればドローンパイロットの資格を取れますか?
機体の会社によって多少違いがある。熊谷さん達が受けたところは、3日間の講習受講(学科1日、実技2日)が必要で費用は約20万円との事。今は、資格を取るためのハードルが低い傾向だが、早晩難しくなると思うので取るなら今がチャンスかもしれないとのこと。

 

Q:ドローンパイロットの資格は、就職活動に有利になるか?
企業でのドローン活用に関して、現状ではニーズが多くないので、必ずしも有利にはならないとのこと。

 

Q:ドローンの下向きの風で稲は折れないのか?
高度の調整で防ぐことができる。機体から稲に向かっての風の影響はヘリコプターのほうが大きいようだと。

 

終わりに、熊谷さんから次のような問いかけが生徒さんに投げかけられました。

 

現在の所、ドローンは薬剤散布と肥料散布に主に使われますが、暑い時期に重たいタンクを背負ってこれらの作業をすることと、費用はかかるもののドローンで早く・楽に作業することのどちらが良いのか?

 

「わかさま」は持続可能性と世界のコメ事情を合わせ考えると、ドローン活用のほうが良いのではないだろうかと思いました。

 

その場で一人の生徒さんにお声がけいただきました。気候変動による地球温暖化で従来の米作りでは農家さんは大変になるだろう。だから直播きやその時のドローン活用は今後有効な手段になるだろうと、その生徒さんと話しました。

 

 

おわりに

 

今回取材を了承していただいた専北の先生方、そして素人の「わかさま」の見学と質問に快く応えていただいたSNKドローンクラブ、および関係者の方々に心より御礼申し上げます。

 

米作りが日本の食を支えていることは間違いないと思います。今回の授業に参加してくださった生徒さんたちの中から「未来の米作りをめざして」勉学にまた実践に加わってくださる方が出ることを期待してこの稿を閉じます。